ソロと赤の大地3
早朝。ソロ達は再び玉座の間を訪れると、大臣が温顔を浮かべ、駆け寄って来た。
「お早うございます。夕べは、よくお休みになれたでしょうか?」
全てがきちんと整えられた豪奢な部屋に、ふかふかのベッド。取れたての瑞々しい砂漠の果実を扱った料理。どれを取っても文句のつけようがない、そのもてなしに、ソロ達は首を大きく縦に振った。
それを見ると大臣も「それは良かった」と安心したように微笑む。
「ところで、大臣。姫さんの方は……」
アルスが訊ねると、大臣はまた昨日のような困った表情を浮かべた。
「それが、姫様は昨夜から部屋に籠ったきりで、私がお声がけしても断られてしまいまして」
「参ったな……」とアルスは頭を掻きむしる。
「大臣、私達には一刻の猶予もありません。何とかティアラ様にお話を持ち掛けては頂けないでしょうか?」
ミーニャが迫ると大臣はより一層、眉を垂らした。
「如何いたしましたかな?」
玉座の奥から聞こえて来た声に、視線が一点に集まると、大臣は声を上げた。
「おお、カルネージ司教」
紫を基調とした司教服を身に纏い、教会の紋様のついた縦長の帽子を深々と被った男が現われると、男はニコっとアルス達に会釈をする。
その笑みは優し気なものであったが、開いたその目はギョロリとしており、黒い瞳はそれぞれ左右に開き焦点が定まっていない。肌の色も、病人のように白く、その風貌は一見すれば不気味そのものであった。
「これはこれは、アルス様に、ソロさん。お話は兼がね聞いております。私は、この国の大司教を務めるカルネージという者です。以後お見知りおきを」
不気味さからは想像もできない程紳士的な振る舞いに、アルス達は一瞬呆気を取られる。
深く腰を曲げ挨拶をするカルネージに、アルス達は挨拶を返すと、カルネージは再びその頭を上げた。
「して、どうなされましたかな」
カルネージが訊ねると、大臣は司教に事情を説明した。
すると、カルネージは大袈裟に声を上げる。
「やや! では聖霊様にお会いする為に赤の大地に入地したいと」
カルネージは、アルス達が頷くのを見ると、大臣と同じような顔を浮かべる。
「それは困りました。赤の大地に踏み入る為には、あのイニの壁を通過せねばなりません。しかし、ティアラ様があのご様子では困難極まりますねェ。例え、面会できたとしても、ティアラ様が快く諒承されるとは思えませぬ」
「それは、どういうことなのですか?」
シエナが訊ねると、カルネージは、
「確かにベラーノ王家の者であれば、あの壁を通過することは容易でしょう。しかし、あの壁を初めて通過する王家の者であれば、それは重大な別の意味を持つのです」
「というと?」
ソロの言葉に、カルネージはテンポよく応える。
「イニの壁の通過は、王位継承の意を示す重大な儀式でもあります。もし、ティアラ様があの壁を開かれる事とあれば、それはティアラ様が、自身は王位を継承する、と自ら宣誓していることと同義。よって、ティアラ様がアルス様達の願いを受け入れるとは考え難い」
「じゃあ、どうしろってんだ」
アルスがしびれを切らし始めると、カルネージは大々的に声を上げる。
「私めにお任せください! ティアラ様といえども、心はお優しいお方。世界の危機とあらば、きっと心を開いてくれるに違いありません。私が説得してみせましょお!」




