表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/303

羅北の闘諍8

 紫白の光が瞬く間に辺りに走り、直線上に大地が稲妻のような音を立て砕ける。

 虚を突いた攻撃に、ミーニャと光の勇者は言葉を失う。

 鉤爪(かぎづめ)で硬い黒土を削った巨大な跡が見えてくると、セアは、ほくそ笑んだ。

 "死の光"と呼ばれる、強力な邪神の呪いで成された魔法の光線だ。当たればおろか、掠れば、その体から魂はすぐに朽ち果てるだろう。

 しかし、ぼんやりとした光景の中から黒い影がゆらゆらと浮かんでくると、その笑みはすぐに消え、不快そうに舌を打つ。

 アルスとソロの眼前には、一人の幼女が立塞がっていた。

 防御結界を咄嗟に張ったのだろう。

 決壊したものの、ソロとアルスは傷一つ負うことなく、幼女も頬や手にかすり傷を残す程度であった。

 ギロリと幼女はセアを睨んだ。

 その(ひとみ)はギラギラと強い光を帯び、それはまるで、この子らには手出しはさせぬぞ、と言っているようだった。

 呆れたような顔で、セアは息をつくと、


「呆れたものね。分かったわよ。取り敢えず、今度ばかりは本当に退かせてもらうわ。けど、さっき言った通り、1カ月後には、私達は必ずこの世界を闇に墜としてみせる。史上最悪の大災厄の時代(インフェルヌス)が訪れるその日を、せいぜい楽しみにすることね」


 セアは、その言葉を残すと、開かれたゲートの中へ、オルゴンゾラと共に消えて行った。

 セアの姿が完全に消えると、ソロとアルスはすぐに幼女の身を案じた。


「先生!」


 心配して駆け寄ったソロに、幼女は、


「案ずるな。わしはこの通り無事じゃ。それより、お主らに怪我はなかったか?」


 アルスとソロは互いに頷くと、幼女は「良かった」と微笑んだ。


「シャンジャーニ!」


 ミーニャと光の勇者の少女が急いで足を駆けて来る。

 

「無事じゃ、心配する事はない」


 その言葉を聞いて、ミーニャは安堵したように微笑んだ。

 敵対していたとはいえ、心から身を案じていたのだろう。

 その目にはうるうると涙が浮かんでいた。

 

「シャンジャーニさん、御免なさい。セアの狡猾さを知っていたはずの(わたくし)が、油断をしてしまったばかりに」


 光の勇者の少女が言うと、とんでもない、と言うように幼女は苦笑を浮かべる。


「なぁに、お主に現状を知らせることができただけでも儲けもんじゃよ。その様子じゃ、お人好しの生真面目な性格は変わっていないらしいのぉ、シエル」


 幼女がそう言うと、シエルと呼ばれた少女は同じように苦笑を返す。


「お前が、光の勇者なのか……?」


 アルスが訊ねると、シエルは立ち上がり、強く頷いた。


「挨拶が遅れました。私は、光導(こうどう)の勇者、シエル・ラピュセルという者です」


 シエルは胸に手を当て名乗ると、


「皆さん、冥闇(めいあん)の勇者セアが宣戦布告をした今、一刻の猶予もありません。一先ずはこの地を離れ、来たるべき大災厄の時代(インフェルヌス)に向け、対策を」


 シエルが言うと、アルス達は力強く頷き、返事をした。


「リダイア」


 アルスが、この場を去ろうとする緋色髪の少女を呼ぶと、リダイアは横目で振り返り、


「貴様らと共闘するのは、この場限りだ。これ以上は手を組むつもりはない」


「あなたも闇の勇者の恐ろしさは目の当たりにしたはず。なのに、なぜ――!」


 ミーニャが最後まで言い切る前に、リダイアは静かな声で返す。


「魔界の脅威が迫っているとあらば、尚更だ。私は魔界から飛来する魔の手から、祖国を護らなければならない。これは私が決めたことだ。貴様らの手を借りずとも、私は私のやり方で魔界の脅威を退け、私の理想とする世界へ導いてみせる」


 リダイアはそれ以上は言わず口を噤むと、静かにその場を去って行った。



「行きましょう、アルスさん。フォレシアさんやウィルさん達も心配です」


 ミーニャが声をかけると、アルスは皆の顔を見て、互いに頷くと、立ち上がった。

 

「行きましょう、先生」


 ソロが幼女に手を差し伸べると、幼女は「そうじゃな」とその小さな手を掴む。

 そして、腰を上げた瞬間。



 幼女はクラリと揺れると、眠りに落ちつように、その場に音もなく静かに倒れた。


読んで下さりありがとうございます!

今話で【光陰交差篇】完結になります! ここまで執筆が続けられたのは、読んで下さった皆さんの他なりません>< 本当に何と感謝申し上げれば良いのか(涙)

次章【大災厄編】は4/18より更新になります。

物語もいよいよ後半に入りますが、これからも本編を宜しくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ