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五章「ひみつの約束とひみつの特訓」

基本、このあずきみたいなキャラは書いてて楽しいです。

 ……やっべぇ。あいつらになんて言おう?

 抽選会からの帰り道、富士川あずきは色々と言い訳を考えていた。

 

 案1。「いやぁ、昔痛めた肩の調子が悪くってさぁ……・」

 案2。「あれは絶対に、例の組織の陰謀だ!」

 案3。「あずちゃん、子供だからわかんなーい(きらりんっ)☆」


「あずちゃんじゃなくて、あずにゃんにすれば何とか……ダメか。しょーがない。正直に言おう」

 腹をくくり、選手たちに告げた。野球部の部室である。

「ふーん、開明か」

「強いところと一回戦からあたるのね」

「どこでも構いませんわ! お姉様について行くだけですわ」

「……かいめい、ってやっぱり強いんですか?」

 意外にも、選手たちは普通に受け止めた。拍子抜けしたあずきは、次に立腹した。

「勝つ気がないのかお前ら! 今回こそは一回戦突破の悲願を達成したいとは思わんのか?」

「……あ? もちろん、思ってますよ。センセー」

 キャプテンの山田が言う。

「でもさ、弱いトコとやって勝ったからって、大した価値ないじゃないすか。もう7年くらい、勝ってないんでしょ? 公式戦で」

 正確には6年と2ヶ月だ。あずきも最近知った。

「久しぶりの勝利は、それなりのチームが相手でなきゃ。奇跡の勝利的な」

 お、お前ら……。

「そのポジティブシンキングには、先生も思わずシャッポを脱ぐぜ。 ……そうだ、その意気だぞ。まずは気持ちで相手に勝たないとな!」

 あずきは、アツイ涙を流していた。いつの間にか、大人になりやがって……。

 去年からしか知らないくせに、自分が育てた的な感慨にふける。

「……ああ、そう言えば。今度の大会で一回も勝てなかったら廃部だってさ」

 思い出したように、あずきは言った。

 コイツらなら大丈夫。ちゃんと前向きに受け止めてくれるさ!

 そう思ったので、あえて軽い口調で言ってみたのだ。

 しん、と部室内が無音になった。

「え?」

 研二が、世界で一番短い疑問文を口にした。

「コーチョーからこないだ言われちゃってさあ。だから絶対に勝ちたいと思ってたんだけどぉ。

……ま、大丈夫だよな? お前らなら奇跡を」

 ちびっ子先生の言葉は他の全員の怒声で遮られた。

「何言ってんだこのガキャー!!」


 数日前の放課後、校長室に数学教師、富士川あずきは呼び出されていた。

 校長は岩倉 真実まさみという、50代後半の男性。『清廉潔白な聖職者をもって自認しております』と大書きしたタスキを肩からかけていそうな、何とも近寄りがたいオジさんである。

「富士川先生、本日御足労頂いたのは他でもない。顧問をして頂いている野球部ですが」

「はい。何でしょうか?」

「もうすぐ中体連、俗に言う夏期大会が行なわれますね。各運動部が本腰を入れる大会です。ところが野球部はずっと定員割れで他の部から応援をしてもらって出場、という状態が常態となっていますね?」

 ジョータイがジョータイって、ダジャレですかぁ? ……などと言えない雰囲気。

「はあ。マコトにイカンながら……」

 あずきは懸命に硬い言い回しで返事をしてみた。

「他の部も全力を注がなければならない中で、野球部に人員を割かれるというのは部活動として如何いかがなものかと、思われませんか?」

「はあ、と言いますと?」

 持って回った言い回しで、言わんとするところがわからない。あずきは若干、めんどくさくなってきた。

「つまりですね、他の部に迷惑をかけてまで参加している大会で……何年連続ですか? 一回戦負けは」

「え……ええと、2~3年くらい?」

「6年と二ヶ月。今年で7年目です」

 知ってんなら聞くなよジジイ、と心の中で毒づく。

「へぇ、そぉでしたか……もう、そんなになりますかねえ。月日のたつのは早いもので……」

「はっきり申しましょう。野球部は活動停止とします。聞けば、非常に身体能力に秀でた生徒が多いそうじゃないですか。これからは、その能力を他の部活に……そう、今まで応援してもらっていた分の恩返しとして他の部を助けてさしあげてはどうです? その中で良さそうなところがあれば、その部に正式に入部してもらえば八方すべて丸く収まる。良いことずくめじゃないですか」

「ちょ、ちょっと待ってください! じゃあ、夏の大会に出るなって事ですか? 生徒たちも、いっしょけんめー練習してるんですよ! それをいきなり」

「何でも」

 岩倉校長の目が鋭くなった。

「野球部は随分と個性的な練習を行なっているようですね。中には危険と思われるものもあるとの報告を受けていますが……富士川先生は勿論、把握していらっしゃいますね?」

 誰かチクりやがったな。クソが。

「これはあくまで噂ですが、生徒たちが練習している場で睡眠をとる顧問が居るとか居ないとか……。まさか本校の教師に、そんな怠慢な方はいらっしゃらないとは思いますが」

「は、はあ……ソウデスネ」

 ダラダラと冷や汗があずきのジャージの中で流れ落ちる。

「確かに仰る通り」

 口調をやわらげた校長は後ろを振り返り、窓外の校庭を見やる。

「生徒たちの努力は、尊重すべきです」

 校庭ではいくつかの運動部が練習している。吹奏楽部の練習する音が小さく聞こえてくる。

「ですので、その努力に見合った結果を出して頂ければ良いのです」

 あずきの方へ振り返った校長は言った。

「中体連……夏の大会で一勝でも良い。公式戦の勝利があれば、野球部の存続を認めましょう。そうでなければ廃部。生徒たちはそれぞれの希望と適性に沿って他へ転部してもらう。よろしいですね?」

 いつの間にか処分重くなってんじゃん……とあずきは思ったが、とてもじゃないが言い返せる雰囲気ではなかったので、

「リョーカイっす☆」

 と、せめて口調だけでも軽くしてみた。


「いや、なんで軽く了解してんだよ! じゃあ何か。開明に勝てなきゃ野球部なくなっちまうのかよ!」

 薫子が顧問に詰め寄る。

「どうした山田、お前らしくもない! 奇跡を起こしてやろうぜ。夢見ることを忘れちまった大人たちに、目にモノ見せてやろうじゃねーか!」

 片目をつむり、笑顔でサムズアップ。

「センセーよぉ……」

 ガクリと肩を落としたキャプテンに、お嬢様を絵に描いたような美少女が立ち上がり、姿勢よく言った。

「決まってしまったものは、仕方ありませんわ。どうすれば勝てるか。可能性を少しでも上げるために、作戦を練りましょう」

 早川琴音の言葉に真っ先に反応するのは後輩の金髪美少女だ。

「さすがですわ、お姉様! では早速、小鳥と二人きりで作戦会議をするのですわ!」

「小鳥さん、二人ではダメでしょう? みんなで考えなければ」

 そこへ桜井まりんが割って入るように左手をあげる。

「開明の打線は、9人全てがクリーンナップと言われてるらしいけど、ウチが相手だから多分一年生中心のオーダーで来ると思う。そこに隙がある」

 普段無口なので、こういう時の言葉には説得力がある。

「なるほど。相手の油断をつくわけだな」

 薫子がうなずく。うんうん、とあずきも無意味にうなずく。

「だから、わたしが一巡くらいなら抑えられるかも知れない。問題はそのあと。点が取れない、となれば上級生を投入するなり何なりするだろうから」

「じゃあ、その間にこっちが1点でも多く取っておいて……」

 研二の言葉は、二年生部員たちに受け入れられなかった。

「それは、少し難しいかも……」

「どうしてですの? お姉様」

 金剛丸小鳥が優雅に小首をかしげる。

「薫子にご執心の彼が、絶対に先発で出てくるはずだもの」

 琴音の言葉に、事情のわからない一年生がざわめく。簡単に去年の練習試合の事が説明される。

「……そうか。あの時の……」

 ユーカがつぶやく。彼女が野球部に入部する決断をした、あの日の試合だ。

「あんニャローは、なんかずっと根に持ってんだよなぁ……」

 薫子は鼻から盛大にため息をつく。

「そんなピッチャー相手じゃ、点を取るのは難しいか……」

 研二の弱気を小鳥は一蹴する。

「何を言っているのです、このサナダ虫! わたくしが先頭バッターで出塁して野良犬がデッドボール、お姉様は危険ですので無理はなさらずに、山田先輩が本塁打で三点は硬いですわ!」

「いや……それくらい前向きに考えるのはいい事だとは思うんだけどよ」

 薫子が口を開く。

「今年の春の大会、開明って全国優勝してんだよ。山下アイツはそこのエース」

 それは……

「廃部決定、ですかね?」

 うーん……。

 全員、本気でそう思ってしまった。

「ま、まあ。考えたって仕方ねえ! 練習しようぜ。体動かしてたら、なんかいいアイデアも浮かぶかも知れねえし!」

 薫子の脳筋発言に従って、グラウンドへ出る。

 その日の富士川あずきは、昼寝をする事も、どこかへ居なくなる事もなく練習に参加していた。単なる見学というポジションではあったが。


「お疲れしたー!」

「したー!」

 練習終了。下校路で例によって研二は途中で一人になる。そして、いつかのようにユーカが騒がしく追いかけてきた。

「古賀!」

「なんだよ。今度はどうした」

 あれから、野球部の練習がないときには二人で練習をしている。まだ基礎の段階であるが、彼女は確実に上達していた。

「どうしたじゃないわよ! 廃部よ廃部? 野球部始まって以来最大のピンチじゃないの。ここで立ち上がるのがメインヒロインってモンじゃない!」

「……ごめん、何言ってるのかまるでわからん」

 勢いで言ってみたものの、ユーカも考えがあったわけではない。基本、この娘も脳筋である。

「ま、まあ。そういう訳でさ。あたしと古賀が隠し玉、っていうか秘密兵器的な感じじゃないかと思うわけよ」

「余計わからん。具体的にどうしたいんだよ?」

「つまりね! 古賀がピッチャー、あたしがキャッチャーの秘密の特訓をしよう、って事よ」

 ……なぜ、そうなるんだ? やっぱりわからん。研二は心中でハングアップした。


そうなんです。こいつをメインヒロインとして設定してたんですけど……なんか、書いてるうちにどんどん影薄くなってきた感が……。


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