5-EXTRA「憎悪と禁呪」
本日、二話目です
今も瞼の裏に焼き付いて離れない光景がある。
今も耳の奥に響いて離れない怒声がある。
その日の朝はいつもと変わらぬ平和であった。
その日の夕方は地獄に変わった。
間もなく日が沈もうかという夕刻、何やら地響きが起こり、「なんだろう?」と思った瞬間には集落の簡素な家屋が一棟木端微塵に破壊された。
瞬く間に集落は逃げ惑う人々の悲鳴に包まれ、混乱の坩堝となる。
次々と破壊されていく住居、食事の用意をしていたのか破壊された家屋からは更に火の手も上がる。
そして、そいつは逃げ惑う住民を掴んでは味見でもするように一口齧っては投げ捨て、齧っては投げ捨てを繰り替えしながら次々と喰らっていく。その中には、仲の良かった知り合いも、含まれていた。
倒壊した我が家の残骸から何とか這い出した直後に見た、その惨状に呆然となる。
「なんで、魔物が、こんなところに……」
絶望した。突然の、理不尽を嘆いた。
そして、すぐさま周囲を見渡す。家族が居ない。家族とどこに!? 妻は!? 息子は!?
そんな時だった。
「やべぇぞ! 追いつかれる!」
声がした。聞き覚えがない声だった。しかし、それでも構わない。
「助けて下さい! 妻が、息子が……」
「うるっせッ!! 今、それどろじゃねぇんだよ!!!」
しかし、相手は無情だった。必至の想いで縋りついたこの身を乱暴に突き飛ばすと、そう怒鳴り付け、さらに蹴りを一発加えてその場を走り去る。
腹部に蹴りを受けて蹲る。
そして、そんな自分の目の前で、泣きながら自分達を探す幼い息子は魔物に捕まれ……。
そして翌日、妻は家屋の下敷きになった挙句、火災に巻き込まれ半分近くが炭化した状態で発見された……。
数日後、生き残った数人の住民達と一緒に避難先としてモスティスに案内され、遂にあの日の事実を知る。
無謀な冒険者によるナシワーツ樹海探索によって《はぐれ》が発生した事。
そして、状況から見て、あの日、自分を突き飛ばした者こそ、その「無謀な冒険者」その人である可能性が高い事。
あの日以来、私の胸の内に憎悪の火が灯った。
絶対に許さない。私は、あの事件を引き起こした「無謀な冒険者」を――――いや冒険者そのものを決して許さない。
「憎いのか。憎いんだろ。憎いはずだ。恨みを晴らす、絶好の、機会をあげようか!?」
そして、悪魔と契約した私のその火は今日に至るまで消える事なく、遂にこの日がやってきた。
私は今日、禁呪を発動させる。




