2-EXTRA「ナシワーツ樹海定期調査①」
EXTRAでは、主人公以外の視点となります
今回は、主人公を助けに入った彼女の視点です
それは定期的に受注する、いつも通りの調査依頼のはずだった。
世界中に点在する魔物発生地区の中でも屈指の凶悪さで知られる魔の大森林地帯“ナシワーツ樹海”。
他に類を見ない天然の魔石が大量に埋蔵されている事が分かっているこの地は、その影響が地表にも強い影響を与えている秘境として王国は勿論の事、周辺国にすら災厄の地としてその名を轟かせる程である。
そこに棲む魔物達は、高純度の魔石が眠る地下から湧き上がる大量の魔力を常に浴びて育つ。
更に悪いのが、そんな魔物達が喰って喰われるを日々繰り返している事で、そこに棲息する魔物のレベルが、ほかのダンジョンと比べて絶望的に高いという事である。
ただし、その弱肉強食のレベルが遥かに高い事が逆に幸いし、モンスターハザードとでも呼ぶべき《大氾濫》が滅多に発生しない点だけは幸いと言えた。
大量発生した魔物が数千、時に数万の群れとなってダンジョンから外部へと溢れ出す現象《大氾濫》。
このナシワーツ樹海では、弱い魔物はより強い魔物によってすぐさま討滅されてしまう。そんな環境故に、少なくともこの地において魔物の数が数千数万に達成する事が無い(と言われている)。
だが、確かに《大氾濫》の危険性はかなり低いのだが、その代わり度々《はぐれ》と呼ばれる魔物が出没するという別のリスクは存在する。
この《はぐれ》というのは、簡単に言うとダンジョンから外へ迷い出てしまった魔物の事だ。
詳しい理由は分かっていないのだが、通常、ダンジョンに棲息する魔物はそのダンジョンから外へ出る事は滅多にない。仮に出ても一日二日もすれば、やはりダンジョンへと戻っていくのが常である。
だが、時にその習性から外れて、ダンジョン外に拠点を移すイレギュラーも時偶出てくる。それが《はぐれ》だ。
ナシワーツ樹海の場合、その《はぐれ》の発生件数が他のダンジョンに比べて多く、しかもその《はぐれ》の大半は強力な高レベルモンスターである。それこそ、AランクやBランクの認定を受けた者達による討伐隊が編成される規模の戦い、というのも決して珍しくはない。
だからこそ、ギルドは定期的に『ナシワーツ樹海調査依頼』という依頼を張り出す。
この調査依頼とは、要するに《はぐれ》を警戒したいわゆる哨戒任務であり、高レベルモンスターが樹海の入り口付近に出現していないかを調べて報告するのが仕事となる。その報告も必ずギルドマスターに直接報告をする事が義務付けられ、受注も最低Cランク以上と制限が設けられている点でも、この依頼の重要性は察せるだろう。
とは言え、何度かこの依頼をこなしている私――メイ・ブルーフィールにとっては、いつものお仕事だ。
単身で挑むにはCランクでは些か実力不足が懸念されるナシワーツ樹海での調査だが、私のスキル《気配希薄化》と、防衛・防御に特化した『メズゥー流護剣術』の師範代でもある私自身の腕前を買われてこの依頼を度々引き受けていた。
さて、そんなわけでお仕事となったわけだけど、今日は、いつもと様子が異なる。
魔物の数が、異様に少ないのだ。
いくら比較的魔物の数が少ない外側を中心とした調査とは言え、前に調査に来た時はレベルにして20そこそこの魔物が相当数居たはずなのに、今回に限っては未だにエンカウントがない。
間違いなく、何かがおかしい。下手したら、森の中心部にいる高レベルモンスターが外側へと流れてきている可能性がある。そうなると、そのモンスターが《はぐれ》と化すリスクもまた高まる。
「もう少し周辺を探ったら、一旦、ギルドに報告すべきかしらね」
そう呟きつつ、私は最大限警戒しながら樹海の奥へとさらに踏み入れる。
「グァァァァァァァァ!!」
魔物の咆哮が上がったのは、それから暫くした時だった。
前半の説明が長すぎた気がしますが、一応、お話の前提部分ですのでそのまま載せました
なので、今回の「ナシワーツ樹海定期調査」は前後編に分けて掲載してます




