2-12「これからの方針と対策」
自分が実は寝間着のまま、樹海に居たという事実に打ちひしがれる事、数秒。
自分を助けてくれた冒険者の少女の言葉に気持ちを切り替える。
「はぁ…。もういいわ。それより、今はアレよ」
アレと言うのは、言わずと知れたクレイジータイガーの事だろう。
しかし。
「あのトラか!? でも、もう追っかけて来てないみたいだぞ?」
肝心のトラの気配がないのだ。
後を追ってきているような足音をはじめとする一切の物音がないし、咆哮の類も聞こえない。
そうゆう意味で、静かなものである。
「あいつには種族特性として《隠密奇襲》ってスキルがあるの! 要は、誰にも気付かれずに獲物を襲う為のスキルよ。一見撒いたように見えるけど、今も付かず離れず私達を狙ってるわ」
えっ? 何、そのスキル!?
まさに狩猟の為にある様な技能に戦慄する。
そのスキルの存在を知って、尚、それでも奴の存在を確認する事が出来ない。
――――ってか、さっき撒いたと思った矢先に噛み殺されそうになったのも、そのスキルか!
何気に恐ろしいな!
気付いた時には既に手遅れ、噛み殺される寸前ってわけだ。
「怖ぇな…なんて化け物だよ!?」
「とりあえず、今は足を止めないで! 立ち止まったら膂力で即行、押し潰されるわ」
「何か手はないのか!? 冒険者なんだろ!?」
「無理よ!? あいつの討伐推奨ランク、いくらだと思ってるの!?」
彼女曰く、クレイジータイガーという魔物の討伐推奨ランクは『A』。
そう言われてもピンと来ないが、曰くAランクの魔物というのは単独で討伐するようなレベルではないらしい。
それこそ、数々の修羅場を潜り抜けた熟練の戦闘技術を持った屈強な冒険者達が一堂に会して集団で討伐に乗り出して、ようやく対等に渡り合える。
そんな次元のレベルだと言う。
当然、討伐に参戦する冒険者自身、高ランクでなければ話にならない。
先ほど述べた『数々の修羅場を潜り抜けた熟練の戦闘技術を持った屈強な冒険者』――即ち、冒険者ギルドからAランク認定を受けた強者である事は当然、最低でもBランクに達していなければただの足手まといにしかならない。
ちなみに、彼女のランクは『C』だそうだ。
当然、クレイジータイガーとの戦闘経験などない。
精々、他の同業者からエピソードとして聞いたことがある程度。
で、あるから、採れる対策として。
「なんとかあしらって、ひたすら逃げるっていうのが一番現実的ね!」
……女神様、俺は――いや俺達は生き残れるでしょうか?




