うまい話
小高い丘のてっぺんにその女は居た。
人間とは思えない美貌と新雪のような白い肌を見てまず人間か疑った。
次の瞬間背中に白い羽が動くのを発見した、どうやらほんとに人間じゃないみたいだ。
「よく来ましたね。私は神の使い、皆様方が言うところの天使という存在です。」
ガチか、俺は衝撃的すぎて逆に冷静になった
まずは挨拶しないと
「ご丁寧にありがとうございます、私は人間の石原拓海と申します。よろしくお願いいたします」
社会に出たことはないがそれっぽい挨拶はできたはずだ。笑われてたら少し恥ずかしい。
「拓海さんですね。それでは、立ち話もなんですしお座りください。」
そういうと彼女は指を鳴らし、テーブルセットを出した。
俺はこの非日常感に少し興奮した。
「ありがとうございます。」
あ、これ先に座ったらまずかったのかな。そんなことを考えるが再度立ち上がるわけにもいかないのでそのまま相手が座るのを待つ。
「驚かないんですね。」
そう言い天使は笑いながら対角の椅子に腰を下ろした。
「この空間に来た際にもう驚きすぎて」
「それもそうですね。では早めに本題に入りましょうか」
この美女とならずっと話していたいと思ったが、さすがに口を開かず相槌を打った。
「拓海さんあなたには異世界転生してもらいたいと考えています。あなたの読んでいた小説とほぼ変わらない世界です。」
「え?見てたんですか」
天使様は何でもお見通しらしい。
「もちろんです。あの世界のような剣と魔法のファンタジーでニューゲームできますよ。」
それは俺にとって願ってもない言葉だった。
これから色んなチートを選んで美少女とイチャイチャできるのかと思うと胸が躍った。
「本当ですか!!お願いします。」
俺はその言葉に縋り付くような気持ちで転生を申し込んだ。
「本当ですか、ありがとうございます。では転生体には能力もいくつか授けておきますからよろしくお願いします。」
どうやら異世界でチートも得れるらしい。俺はこのクソみたいな人生がようやく報われたのだと思い込んだ。
「では、アルザス王国の第二都市、チロルの一般家庭に転生させますね。能力はあとのお楽しみです。」
あ、能力は選ばせてもらえないんだと思ったが、転生自体嬉しすぎて俺は有頂天になっていたため即返事をした
「わかりました。ありがとうございます。」
次の瞬間、女神が手をかざすと眼の前がまばゆい光に包まれた。
―――
「はあ…ようやく終わった」
天使はそう言い立ち上がると空間を切り裂くように開け、歩き出した。先はオフィスビルの廊下だ。
すれ違う人々に挨拶をしながら外へ向かう。
「馬鹿な奴もいるもんだよね笑、話もまるで聞かないとか」
そう言うと天使はタイムカードを切った。
そして定時退社より少し遅れたためギリギリになった映画を見るため少し小走りで映画館へ向かった。




