第25話 ソフィとお出かけ
ここ最近、休みなく働いていたので「今日くらいは休んじゃおっかな〜」と思った矢先の出来事だった。
「え? ゴルドフが店に来いって?」
「うん。剣が出来たんだって」
ソフィがわざわざ部屋まで、鍛治師ゴルドフからの伝言を伝えにきてくれた。
「今日は休もうと思ったのにな……」
う〜ん、どうしよう。
「別に明日でもいいと思うわよ?」
「いや、行くよ。やり残したことがあると、なんか落ち着かないし」
「じゃあ準備ができたら行きましょうか!」
……ん?
「ソフィもくるの?」
「うん! ルイン君さえ良ければ、一緒に行ってもいいかな。ゴルドフさんの娘のエルルとは友達なのよ」
「ゴルドフって娘いるの!?」
衝撃の事実が判明した瞬間だった。
てか嫁さんいたのかよ!? あいつが女性とお付き合いしてる姿が、1ミリも想像できないんだが。
「それで、一緒に行ってもいい?」
愕然としている俺に、ソフィが再度聞いてくる。
「あ、ごめんごめん。もちろんいいよ。すぐに準備するから、1階で待ってて」
「分かったわ!」
久々に友達と会えるからか、軽快な足取りで嬉しそうに降りていった。
「ゴルドフの嫁ってどんな人か凄まじく気になるな。アマゾネスみたいな感じかな?」
めちゃくちゃ失礼な事を呟きながら、急いで外出の準備を整えた。
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「待たせてごめん」
「ふふっ。そこまで待ってないわよ」
1階に降りてソフィと合流する。なんかデートみたいなやりとりだな。なんて思っていると。
「なんだお前ら。デートみたいなやりとりじゃないか」
入口のドアからアルが現れた。
思ってても言うなや。そういうとこだぞ。
「ちっ、違います! ルイン君が剣を受け取りに行くっていうから、私もエルルに会いに行こうかと!」
「おっ、おう。なんかすまん」
「謝るくらいなら最初からするなって。んで、アルはなんでいるの? 依頼は?」
いつもなら朝イチで依頼に出かけるから、いない時間帯のはず。
「良さそうな依頼がなかったから、急遽休みにした。あの2人はもうどっか行ったぞ」
あぁ、労力の割に報酬が低いとか、そんな依頼しかなかったのかな。
「なるほど。アルは今からどうするの?」
「酒場へ飲みに行く。休みの日はこれに限るぜ」
「ほどほどにね。じゃあ俺たちは行くよ」
「おう! よそ見して馬車に轢かれないように気をつけろよ」
……ちょいちょい保護者感を出してくるのは、一体何なんだろうか。
「ごめんソフィ。それじゃ今度こそ行こうか」
「う、うん」
ソフィの方を見たら、顔がちょっと赤くなっていた。
「……ルイン君って、なんか慣れてる?」
宿を出て歩き始めてすぐに、ソフィが聞いてくる。
「慣れてるって、何に?」
「えっと、女の子と話したり、揶揄われたりするのに。もしかして、住んでた村に仲の良かった女の子がいたとか?」
「いや。歳の近い女の子すらいなかったよ」
「ほんとかなぁ」
……俺、ソフィの中で女たらし認定を受けてない? 大丈夫?
ゴルドフ鍛冶屋へ向かう道中、大通りを2人でのんびり歩きながら、お店をなんとなしに見て回る。
「……」
ふとソフィの目がどこかを見ているのに気づき、その視線の先を追ってみると
「へぇ」
何の花かは知らないが、綺麗な青い花を象った髪飾りが露店で売られていた。
うん、センスいいなソフィ。
店員のお姉さんに声をかける。
「その青い髪飾りをください」
「えっ」
「毎度あり〜! 君ぃ、若いのにやるねぇ」
すんごいニヤニヤしてる。全く嫌味な感じはしないから腹は立たないけど。
「い、いいよルイン君! 悪いよ!」
「まぁまぁ。初めて2人で出かけた記念ってことで。はい、お姉さん。お金」
値札に書かれている金額を手渡す。
「はい、確かに! お嬢ちゃん、この男の子は将来性あるよ〜。ちゃんとツバつけときなね。うっかり他の女に取られないよ〜に」
「えっ、えっと…その…あのっ」
「お姉さん、そういうのはいいから。また機会があったら寄らせてもらうよ。またね」
「ありがとうございました! またのお越しをお待ちしてま〜す!」
ソフィがグルグルお目々になってしまったので、強引にその場を離脱した。
少し離れた場所で、彼女が落ち着くまで待ってから髪飾りを渡す。
「はい、今日の記念にどうぞ」
「……本当にいいの?」
「もちろん」
「ありがとう、ルイン君! 大事にするね」
やっと笑顔を見せてくれた。
「せっかくだから、ルイン君が付けてくれる?」
「うん、いいよ。じゃあちょっと失礼して」
髪飾りをソフィから受け取って、慎重に髪に付けてあげる。
「銀色の髪に青がよく似合ってる。すごく可愛いよ」
褒めてあげると、ボッ!という音が聞こえてきそうなほど、一瞬で頬が真っ赤になった。
「う、嬉しいけどっ! やっぱり慣れてる! これが、お母さんが言ってた『たらし』なんだ! ルイン君、女たらしだったんだ!」
「ちょっ! こんな往来で何てことを! それは人を殺す言葉ぞ! 社会的に死んじゃうって! ……あ」
きっと偶然通りかかったのだろう。
遠くの方から、無表情のグレースさんがこっちを見ている。俺と目が合うと、サッと逸らしてどこかへ行ってしまった。
…………やっべぇっすわ。
社会的に死ぬのが先か。グレースさんにある事ない事吹き込まれた、ガーランド伯爵の手によって物理的に死ぬのが先か。これもうわかんねぇな。
「どうしてこうなった!」
俺はただ、お世話になってる女の子に髪飾りをプレゼントしただけなのに!
俺は悪くねぇ! 俺は悪くねぇ!
「ルイン君、本当にありがとう。ずっと大事にするね」
顔を俯かせ、モジモジしながらそう言ったソフィの言葉は、死を覚悟した俺の耳には届かなかった。
『俺は悪くねぇRPG』って、今知ってる人どれくらいいるんでしょうね




