第15話 念願の冒険者へ
「ん〜……もう朝か」
寝たと思ったら、一瞬で朝だった。
自分じゃ気づかなかったけど、案外疲労が溜まってたみたいだな。
今日から冒険者になるんだ。『まだ行けるはもう帰ろう』を心に刻んで頑張ろう。
……この世界は、油断すると本当にあっさり死ぬのだから。
「とりあえず支度して朝食だな」
手早く準備を整えて、1階の食堂へ向かおう。
「ルイン君、おはよう!」
「おはようソフィ」
そこには、もう給仕を始めているソフィの姿が。
「すぐに朝食持ってくるから、席に座って待っててね」
「わかった」
言われた通り席について待っていると、すぐに料理が運ばれてきた。
あったかいパンに、焼いたベーコンとサラダ。ポタージュっぽいスープという献立だ。
「おいしい」
ひとりで静かに味わっていると、朝の給仕にひと段落ついたソフィが話しかけてきた。
「"フェザーテイル"の3人から伝言よ。『朝じゃないと、ろくな依頼が残ってないから先に行く。付き添えなくてすまん』だって」
保護者かな?
「ありがとう。さすがに登録くらい1人で大丈夫なんだけど。心配性なのかなんなのか……」
「それだけ気に入られているのよ、きっと」
「そうかな……そうかも」
多少雑談を交わし、朝食を美味しくいただいた後は一度部屋に戻りギルドへ向かう準備をする。
そして再び1階へ。
「じゃあ、行ってくるよ」
「はいよ。気をつけるんだよ」
ターシャさんに鍵を預けたら、今度こそ出発だ。
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道中は特に何もなく、無事に『冒険者ギルド ヴォルクス支部』と書かれた建物へと到着した。
さっそくとばかりに入口のスイングドアを通り抜ける。
すると、
「ここまで完全に想像通りだと、逆に怖いな」
これ、説明いるか? ってくらいコッテコテの冒険者ギルドが、そこにはあった。
俺はこういうの大好きだから、最高に嬉しいんだけどね。
入り口から右手方向を見ると異世界ファンタジー定番の、受付嬢が待機するカウンターが。その隣には買取カウンターも存在し、エプロン装備のイカついオッサンがそこに待機している。
正面に目を戻すと、大きなボードが目に入った。これが依頼ボードだな。
貼ってあった依頼は既にあらかた持っていかれたのか、まばらにいくつかの依頼が貼ってあるだけだ。
ボード横には2階へと続く階段が。2階にはギルド長室とか会議室、応接室なんかがあるのだろう(断言)
そして左を見ると、ザ・酒場がその存在感をこれでもかとアピールしてくる。
それらをひと通り眺め回して堪能した俺は、
(あ〜! お客様!? いけません! お客様!)
テンションがおかしなことになっていた。
この世界は、どこまでワクワクさせてくれるというのか。
とりあえず大人になったら、アルたちとここで一杯やろうと堅く心に誓った。
……おっと、いけないいけない。
「そろそろカウンターに行かなきゃ」
冒険者登録をしに来たんだよ俺は。観光しに来たわけじゃない。何が『お客様!?』だよ。ふざけてる場合じゃないんだよ。
周りからのチラチラとした視線を受けながら、ちょうど空いた受付カウンターへ。
……あれ? そういえば俺、登録方法とか知らないわ。
「あのー、冒険者登録したいんだけど。どうすればいいのかな?」
暗めの茶髪をポニーテールにまとめているのが印象的な、垂れ目の受付嬢に話しかける。
「ご登録ですね。登録料は銀貨1枚になります。…………はい、確かに。では、こちらの用紙に必要事項をご記入ください。代筆は必要でしょうか?」
「いえ、大丈夫です」
お姉さんに登録料を支払うと、記入用紙と羽ペンを渡される。ふむふむ、名前と出身地と戦闘スタイルくらいしか書くところがないけど……。
「あのー」
「あ、知らない方は、記入項目が少なくて戸惑いますよね。こちらの魔道具で、魔力を読み取って個人情報の登録をしますので、大丈夫ですよ」
カウンターの裏から、縮小版のコピー機みたいなものを取り出すお姉さん。
「あ、やっぱりそういうのもあるんだ」
「ご存じでしたか」
えぇ、まぁ。知識にはありますね。
俺が知っているのは水晶玉とかだけど。そんなコピー機みたいなのは聞いたことないですね。
「では、ここに手を置いていただけますか?」
コピー機のような魔道具の、読み取り部分に手のひらを置く。光が10秒ほど行ったり来たりすると、すぐにカードが出てきた。
そのカードを別の魔道具に移し、カタカタと打ち込んでいく。今度はパソコンかな?
「……お名前はルイン、と。……シーズ村出身。……はい、出来ましたよ。こちらがあなたの冒険者カードです。再発行する場合は銀貨5枚かかりますので、紛失しないようにお気を付けくださいね」
「あっという間に終わるんだね。ありがとう」
「いえいえ。それでは、冒険者制度についてご説明しますね」
聞いた内容をまとめると、
以前言ったように冒険者はF〜Sランクまである。
依頼は、自分の1ランク上のものまでしか受注できない。身の丈にあった依頼を受けましょうってことだ。何があっても自己責任。それが冒険者だからね。
そして、冒険者カード。これがまた便利だ。
身分証明に使えるのはもちろん、カードを街の入場門で提示すればどの街でも基本的に通行料を支払う必要がない。
これは依頼の際、街を出入りする度に入場料を支払っていたら、依頼を達成しても赤字になってしまうことがあるから出来たシステムとのこと。
また、銀行のキャッシュカードのようにも使える。どの国のどの冒険者ギルドでもお金を自由に入出金することが可能だ。
大金を持ち歩くと、あらゆる状況で邪魔になるからね。
主な機能はこれくらいだな。
最後に冒険者ランクが上がる条件について。
Dランクまでは依頼の達成件数で上げられるが、Cランクからは昇級試験がある。
さらに普段の素行も考慮されるため、基本的に迷惑系冒険者は、Dランク以下にしか存在しない。
もし貴族からの高ランク依頼にならず者が行っちゃったら、ほぼ確実に揉めるもん。これは納得。
てかラノベとか読むと、高ランク冒険者でタチ悪い奴とか結構いたりするけど、あれ普通に放置してるのヤバいよな。
とまぁ、説明にあったのはこんなところだ。細かいことはその都度確認するとしよう。
「以上となります。よろしいでしょうか?」
「うん。もし分からない事があったら、また聞きに来るよ」
「そうしてください。本日は私、アンナが担当させていただきました。良い冒険者ライフを」
垂れ目のお姉さんことアンナさんにニッコリと見送られて、カウンターを後にする。
「それじゃ、さっそく依頼を見てみよう」
ついに念願の冒険者となった俺の足取りは軽かった。




