第13話 子供がはっちゃける時って、大体お母さんが見てる
こんにちは、ルイン(12)です。
あっという間に7年が経ちました!
修行パートはどうしたって? ……そこに無ければ無いですね。
というのはさすがにアレだが、本当に特筆するようなイベントは何もなかったのだ。
初めの方は、ひたすら俺の中での理想の動きをするためのイメージトレーニング。
さらに、村には剣と槍と弓があったので、せっかくだし「全部極めちゃおっかな〜!」と思ったのだが、弓だけは絶望的に下手くそなことが判明。
1回だけなら誤射かもしれないが、10回中10回やったらそれはもう誤射ではないので、弓は諦め近接メインで生きていくことを決意した。
最後の方は、森に入って魔物を狩りまくった。ボア騒動の時は鳴りを潜めてたけど、ちゃんと他の魔物もいるんだよね。ゴブリンくんとか。角うさぎくんとか。
そんなこんなで、ついに先日12歳を迎えた俺のステータスがこちら。
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ルイン
レベル8
魔法
【点火】【氷の盾】【ウィンドカッター】
スキル
【視て盗む】【魔力操作】【突進】【剣術】【槍術】【気配察知】【身体強化】
称号:転生者
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レベルはほとんど上がっていない。
やっぱりある程度魔物とレベル差があると、経験値的なものが入りにくくなるみたいだね。
魔法なのだが、訓練の合間にいくら頑張っても新しく覚えることはできなかった。スキルと違って魔法は自力習得が無理という説が浮上している。
イメージで覚えられるって言ってたのに……。ガルフが。
新スキルは【剣術】【槍術】【気配察知】【身体強化】の4つだ。
剣とか槍って、技ごとにスキル覚えるのかと思ってたんだけど。大枠で剣術や槍術ってのもあるのね。俗に言う『パッシブスキル』だ。
効果は単純に、動きがキレッキレになる感じ。素人のダンスとプロのダンスくらい変わる、超有用なスキルである。
この7年間は地力の底上げに全振りだったから、新スキルの少なさはしょうがないと割り切っている。これからガンガン覚えていく予定です。
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夜、我が家の食卓にて。
「時間が経つのは早いわね〜」
「もうルインも12歳だもんね」
7年前と全く変わらないセラ母さんと、成長しすぎて180cmに届きそうな15歳のウィル兄さん。優男風の細マッチョに仕上がっている。
見た目は完全に参謀とかやってそうなのに、これで一般通過農民なんだよな……。ギャップがすごい。
あ、ちなみに俺は160cmくらいです。
「出発は明日か?」
「うん。なるべく朝の早い時間に出るよ」
父さんは、若干老けたかな? それでもまだ若いが。
「本当に寂しくなるわねぇ……」
めっちゃ、しんみりする母さん。
「ちょいちょい帰ってくるよ。しばらくはヴォルクスを拠点にするつもりだし」
「そこまで遠いわけじゃないしな。とりあえず、滞在先が決まったら知らせろよ」
「いつでも帰ってきていいからね」
「わかってるって。またすぐにでも会いにくるよ」
別れは辛いが、子供はいつか巣立つものなのだ。なるべく帰ってくるようにするから、明日は笑顔で見送っておくれ。
こんな感じで、出発前夜は過ぎていくのであった。
そして、出発当日の朝。
「それじゃ、行ってきます!」
『行ってらっしゃい!』
なんか盛大に、村人のみなさん総出でお見送りしてくれた。
村を出発した後も、ちょくちょく振り返って手を振る。
……こういう時って、いつまで手を振ればいいのか分からなくなるよね。
すぐに手を振るのをやめたら、なんか薄情なやつみたいになるし。
かといって、いつまでも振り続けてたら止め時が分からなくなるし。
とりあえず村の人たちが見えなくなるまで手を振っておく。そして完全に向こうから、俺の姿が確認できなくなったと"確信"した瞬間。
「ヒャッホーィ! いくぞいくぞー! いよいよ夢にまで見た、旅立ちじゃい!」
盛大にはっちゃけた。
転生してからずっと、1つのコミュニティに縛られていた鬱憤を晴らすかのように、のびのびし始める。
村という檻から解き放たれた獣《俺》を、止められる者はもはやいない。
「よぉ〜っし! おじさん、こっから先は全力ダッシュで行けるとこまで行っちゃおっかなぁ〜!」
もう、何者も俺を縛ることはできないぜ!
フハハ! 俺を止めたかったら母さんでも連れてくるんだなぁ!!
「ルイーン! お財布忘れてるわよ〜!」
タタタッ!
……スンッ
「はーい! ありがとう、母さん」
「あら? さっき、なにか大きな声が聞こえた気がしたけど……」
「え? なんだって?」
…………本当に連れてくるやつがあるか!!
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「本当に今日中に着いちゃったな」
目の前には遥か遠くまで続く立派な外壁が。それをしばし眺めた後は、足早に門へと近づく。
あの後、母さんから財布の忘れ物を受け取った俺。危うく街への通行料が払えなくなるところだった。
再度別れの挨拶を交わし、今度こそ村を出発した俺はやはり、全力ダッシュを敢行した。
途中で簡単な食事休憩を挟んだ以外、ずっと走ってきた結果。
馬車で2日かかる距離をわずか1日足らずで走破した。これにはメロスもにっこりである。
「早く着いたのはいいけど、もう夕方だ。早く宿を取らないと」
これからの予定を考えつつ、いよいよ門前まで来ると門番に話しかけられた。
「こんにちわ。身分証はあるかい?」
優しそうなおじさんだ。よくある高圧的なタイプじゃなくて良かった。
「初めて村から出て、今着いたところなんです。身分証はまだ持ってませんので、通行料はひとまず銅貨でお願いします」
「了解だ。銅貨2枚だよ。見たところまだ12歳か13歳くらいだろう? 随分しっかりしているね」
「あはは。よく言われます」
まぁ、言われる。
転生者だからね。多少はね?
この世界の通貨は、銅貨。銀貨。大銀貨、金貨。大金貨。白金貨の6種類ある。
銅貨10枚で銀貨1枚。
銀貨10枚で大銀貨1枚。
大銀貨10枚で金貨1枚。
金貨10枚で大金貨1枚。
大金貨10枚で白金貨1枚となる。
うん。これも大体はテンプレ通りだ。
金貨以上は、庶民がほとんどお目にかかれないところもお約束だね。
ただ、日本の貨幣価値に換算するのは難しい。
物価の基準が違い過ぎて、一概にこうと言うことができないのだ。『現在の貨幣価値に換算すると、およそ〜倍である』とか言いたかった。
頭の中で復習しながら、門番さんに銅貨を2枚渡す。
「はい、たしかに。それじゃあ、コホン。初めてこの街を訪れた少年よ」
「はい?」
ん? 急に形式ばった感じになったぞ。
「ようこそ『ヴォルクス』へ。この街は君を歓迎する」
そう言って、右手を心臓の上に添え、軽くお辞儀のように腰を曲げる。
……おぉっ! ちょっとグッときた。
「ありがとうございます!」
こうして俺は、生まれて初めての街へ足を踏み入れた。
───粋な門番さんに敬意を。




