夕暮れの光【白秋編①】
夕暮れ、黄昏、逢魔が時、と聞いた時、貴方は何を思い浮かべますか?呼び名は違えど感じる事は似た心持ちになるだろう。帰らなければならない時刻、出歩いては行けない時刻、或いは…また過ぎ去ってしまったと。
☆
白秋に辿り着いた天音一行は、街並みを巡りながら目を輝かせていた。
『流石、産業が1番進んでる領地!英国の街並みを創造したけど、実際に見てここまで凄いなんて思わなかった!』
ここ以外の領土の文化は主にアジア系の文化や歴史を反映しているが、ここはヨーロッパ系の文化が色濃く、石畳を叩く革靴の音が、乾いた夕風に心地良く響く。赤煉瓦の建物が並ぶ街路には、ガス灯を模した街灯が等間隔に立ち並び、窓硝子には沈み始めた夕陽が黄金色に反射していた。
『ねえ、2人とも、折角この領地に来たから…』
ウィンドー越しからでもわかる美味しそうなお菓子を見つめながら天音はイツキを見つめると。
「はぁ、分かった。マコトも食べたいものを選びなさい。」
「っ!!ありがとう、パパ!」
その時、天音の鞄が強く引っ張られ、あっという間に取られてしまった。
『アッ!待って返して!』
"その中には"と手を伸ばしながら追いかけ様と天音が手を伸ばしたとき。
「(全く…私の目の前で身の程知らずな事をするとはな。)」
大量の紙の買い物袋を抱えた白金のボブディヘアの男は、勢いよく荷物を上に投げあげ、とてつもない速さでスリの男を拘束し手刀で気絶させると、空中に投げ落ちてきた買い物袋を彼は見事にキャッチした。
「レディ、お怪我はありませんか?」
彼は天音にそっと手を差し伸べながら、優しく微笑む。
『あ、ありがとうございます!』
「いえ。無事で何よりです。」
男は天音を立たせると、拾い上げていた鞄を丁寧に差し出した。
「あんなに必死に駆けていたのです。その中には大切な物が入っていたのでしょう?」
その言葉に、天音の顔色が僅かに変わる。
『……はい、凄く大切な品が…良かった…本当に。』
彼女は両手で鞄を抱き締める様に受け取った。
「……最近余所者を狙った盗人が増えているんです。全く嘆かわしい事だ。」
美しい顔には苦労の色が滲み、眉間に皺を寄せてしまった。
『あの、本当にありがとうございました。』
「いえ、当然の事ですから。レディ、まだ今のような輩が出没する可能性は捨てきれません。ですので、日が完全に落ちる前に宿へ向かわれる事をお勧めします。」
そう告げると、彼は近くの警備員にスリの男を引渡し、静かに夕暮れの光の中で消えていった。
☆
天音の姿が見えなくなった距離に到達すると、男…白星虎は静かに目を伏せ。
「本当に、運には全く恵まれませんね。貴女も…まあ、私も…似たようなモノか。」
そう呟くと彼は自身の研究室へと進んでいったのだった。




