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小説世界の創母様!【マジか…自分の創造物に入っちゃった?!】  作者: 空夜時音
朱夏編

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届かぬ過去への思い【朱夏編①】


人は何を持ってして、その感情に名をつけるのか?哲学の様な考えだ。然し、其れもまた様々なモノの中で存在する。特に人が人を思う気持ちなどは具体的な例だろう。遠き空を見上げながら紅きモノは手の平を頭上に輝く太陽に伸ばした。

天音達一行は活気溢れる市場街を訪れていた。

『凄い!色んな屋台が出てる!マコト君、一緒に周ろうか!』

ワクワクと胸を踊らせる天音を見つめる傍らで、マコトは…顔を真っ赤にさせていた。

「ごめんなさい、僕行けそうにない。パパ…僕…」

イツキは息子の言葉の意図を直ぐに汲み取り、マコトの耳にそっと触れた。

「マコト、熱が籠ってしまっているじゃぁないか!何故、黙っていたのだ?!」

『え?!』

天音も直ぐにマコトの額に手を当てながら、熱を確認した。

『うわっ、結構熱い!?マコト君、無理してたの!?』

天音が慌てたように声を上げると、マコトは気まずそうに肩を竦めた。

「だって……折角、もっと一緒にいたくて……」

その言葉に、天音は一瞬だけ目を丸くする。何故その言葉が、胸の奥をじんわりと温かくした。けれど同時に、何処か締め付けられるような切なさも混じっている。

「全く……」

イツキはそんな二人を見つめ、小さく息を吐いた。

「マコト、お前は昔から我慢を隠すのが上手すぎる。」

その声音は呆れを含みながらも、酷く優しかった。

彼はそっとマコトを抱き上げた。

「わっ、パパ!?僕もう子供じゃ「熱を出した病人に拒否権は無い。」ムゥ!」

『ふふっ、何それ。』

そのやり取りに、天音は思わず吹き出すと。

「笑い事ではないぞ、全くこの子らは昔から無茶をする。」

やれやれとしか様子のイツキに天音は優しく微笑みを浮かべた。

『いやぁ……何か、親子って感じだなぁって…そう思ったら、実家に置いてきちゃったユウちゃんや、可愛い孫(優姫の娘なので実質)はーちゃんは私がいなくなっても元気に過ごしてるかなぁって思っちゃって。』

そう呟いた瞬間、イツキの動きがほんの僅かに止まった。

「心配か?」

『そんなの当たり前でしょ!まあ、今はすぐ下の妹が面倒見てくれてると信じるしかないよ…』

トホホとしている天音の言葉を聞いたイツキは…少し、笑みを浮かべた。

「(そうか、"あの子"が最後まで残ったのか…)」

イツキの心情を悟ったのか、マコトはイツキの胸元に額を預けながら、小さく笑った。

その仕草にイツキの長い睫毛の奥で、葡萄色の瞳が揺れた。

その瞬間、天音の瞳に映ったのは、今のマコトではない姿が脳裏によぎった。もっと小さくてふわふわとした灰色の毛玉が掌の上で眠り、無邪気に駆け回りながら甘える…とても愛しく愛らしい姿が…

「(もう、戻れぬ過去だがな…)」

『……イツキさん?』

天音が不思議そうに名を呼ぶと、彼はハッとしたように微笑んだ。

「いや、すまない。少し昔を思い出していただけだ。」

『昔、ですか?』

「嗚呼、大切な家族と過ごしたとても大切な日々を、な。」

イツキは泣きそうな顔をグッと抑えながら笑みを浮かべたのだった。

一行は近くに宿を取ると。

「貴方はこの国を見て回るといい。」

『でも、マコト君の看病をしなきゃでしょ…』

イツキは静かに首を横に振ると、眠るマコトの額に濡らした布をそっと乗せた。宿の窓から差し込む夕陽が、イツキの髪を柔らかく照らしている。

「この子の事は私が診る。熱も休めば落ち着くだろう。」

『でも……』

「貴女は、この世界に来てからずっと周囲ばかり気に掛けていただろう?心配するな、"留守番"には慣れているから。」

そう告げる声音は穏やかだった。責めるでもなく、ただ事実を述べるように。イツキは葡萄色の瞳を細め、小さく微笑む。

「貴方は優し過ぎる。誰かの為に無理をしてしまう程にな。」

その言葉に、天音は思わず口を閉ざした。

自分では普通のつもりだった。けれど、こうして真っ直ぐ言葉にされると、不思議と胸の奥が擽ったくなる。ベッドの上では、マコトが小さく寝息を立てていた。熱のせいか、時折苦しそうに眉を寄せている。

『……マコト君、辛そう。』

「この子は昔からこうだ。寝苦しくても周囲を心配させまいとする。」

そう言いながらイツキは、慣れた手付きでマコトの髪を撫でた。その仕草はあまりにも自然で、長い年月を感じさせる。

『イツキさんって、本当にお父さんなんだね。』

「……何だ、それは。」

少し可笑しそうに眉を下げるイツキに、天音は慌てて手を振った。

『あっ、いや!変な意味じゃなくて!なんていうか……凄く大事にしてるのが伝わるっていうか……』

「大事、か。」

彼はその言葉を噛み締めるように呟いた。

「守れる時に守らねば、後悔するからな。」

その一言だけ、妙に重かった。


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