提案と話し合いと懸念
物陰に行ってから10分ほどして戻って来た姫騎士風の女性は、自らをパトリシアと名乗った。満華曰く顔立ち的に日本人ではないし、名前も恐らく本名だとの事だ。それこそ佐藤とか小林並みによくある名前だそうだが。
そこから改めて行われた説明によれば、どうやらこのレベル9最終階層のボスというのは、超巨大なドラゴンらしい。黒い体に赤い目を持つそいつは、攻撃力と防御力が見た目通り桁外れている上、参加している人数と同じ数のコンボが入らないとダメージが通らない特殊能力を持っているとの事。
ただコンボを決めないといけない間は、攻撃力に応じてそのボスドラゴンの動きが止まるんだそうだ。だから現在、どうやら一定時間で復活するらしい「採取スポット」から手に入る素材を使って、使い捨ての高火力アイテムを作ろうとしているらしい。
「そこに来たのが君達だ! あの置手紙は私も見たが、ここの壁にあんなに派手な傷がついているのを見るのは初めてだ! 素晴らしい! 攻撃の手数を叩き込むだけならどうにでもなるし、共闘は今回だけで構わない!」
「あ、何で同盟という名の今限定の大規模パーティ入りを勧めてるかっていうと、同じ組織に参加してないと攻撃がそもそも認識されないみたいでスカるんだ。コンボ部分は俺らが担当、そっちは火力を担当して、ウィンウィンな関係になりたい」
「もちろん他の同盟者にもそれぞれ役割がある。だから無理にとは言わないが、コンボを通すには0.1秒以内に攻撃を繋げる必要がある! かなり難易度が高いと思うのだが、どうだろうか!」
「もちろんそっちは2人だから、2コンボぐらいならどうにかなるっていうんなら、しっかり報酬を支払わせてもらった上で俺らが進んだ後に残って、自分達だけで再挑戦してくれてもいい」
という事らしい。しかし喋らないな、あのでかいの。何で来たんだ?
まぁ、話の内容としては分からなくもない。火力として勧誘する方向を決めたのはあの置手紙を見てからだろうが、その前から仲間に入れる予定ではあったんだろう。確かに、普通に考えれば厳しそうだ。
ただ、練習すればそれなりにコンボは繋げられる自信があるんだよな。ひーちゃんとすーちゃんが連携すればそこそこ行くだろうし、リボルバー状態なら0.1秒は無理でも、半秒ぐらいで次が撃てるし。
「……あれの事さえなければ受けていいとは思う」
「……同じくー。ただ問題は、やっぱりあれだねー」
このリーダー自身と、その右腕だろう隠密系騎士は信じてもいい。それは満華も同意見らしく、問題としている場所が1点に絞られた。そう、戸籍上の妹だ。そこまで具体的に言わなくても、ここまで追い回してくれた不審な奴らの事だ。
どうにかして確認する必要がある訳だが……そうだな。
「置手紙を読んだのなら、場所を移動した理由については把握してるんだな?」
「無論だ! ただ、すまない。どの同盟者が出した指示かは分からなかった!」
「こっちもお願いしか出来ないのが辛いところなんで、たぶん連続で相手した馬鹿のどれかだと思うんだけど、あんまり強くも出れないんだよなー。すまん。それは本当にすまん」
「置いて行けばいいのでは?」
「それは騎士道にもとる!」
「って、リーダー様が絶対切り捨てようとしないんだよなー」
……思わず、ご苦労様です、と言いかけた。ギリギリ飲み込んだけど。そうかー。馬鹿だっていうのが分かってても見捨てられないのかー。
「……くーちゃん。なんだか嫌な予感がするよ?」
「……奇遇だな。私も嫌な予感がする」
「……具体的には、いいように使われて美味しいとこだけ持ってかれる感じの」
「……裏切られて持ち物とかを奪い去られるまでありそうだ」
あの戸籍上の妹ことクズなら、やりかねないんだよな。少なくとも私に対しての仕打ち……自分が絶対的優位に立っている場合の容赦のなさを考えると。




