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第1クォーター終了

 あろうことか、県大会常連と言われているあの海清中学を相手に互角?に張り合っている我らが滝蓮。もうじき試合開始から7分が経とうとしている。開始時の速攻→ブロックの応酬は終わり、互いに堅実なプレイをして戦局を進めていた。


絵馬(えま)!」


 ボールは3Pエリアの外にいた絵馬から、中へカッティングしたアリサへ。もちろんマークマンである4番(千夏)も追ってきている。ゴール下で両者が相見あいまみえる。

 ..............決めた。


「なんかあいつ、やけに目立ってんな。さっきから点決めてんの、全部アリサじゃねえか?」


 点数にして、10対12。こちらの2点ビハインドという状況である。

 バスケは1本が2点で、3点シュートはまだ打ってすらないから、決まったシュートは5本か。5本全部アリサの奴が決めてると思うわ。


「そうですね。アリサ先輩、すごい張り切ってたんです。『練習試合で絶対に勝って、夏の大会に勢いをつけるんだ』ってずっと言ってました」

「へぇ..............」


 隣に座っていた滝蓮唯一のベンチウォーマー、1年の小春が俺の独り言に答えた。


「って、ん?小春お前、何持ってんだ?」


 ふと目に入った小春の持っている1枚の紙きれ。A5サイズくらいの小さな用紙には、なにやら文字が書かれている。


「えっ、これですか?海清のメンバー表です。試合が始まる前に貰いました」

「ちょっと見せてみろ」

「あっ」


 ひったくるようにして小春から紙きれを取り上げる。

 

「NO.4 烈火千夏(Fフォワード)、175cm、学年は3年......はいはい、なるほどね」


 各選手の番号やポジション、身長や学年までが書かれた表。メンバー16人分がずらりと並んでいた。とりあえず全部に目を通してみる。


「え〜っと、なんだったっけ。海清の3本の柱だったか?フォワードに2人いるけど、今日は1人欠場してる。まずあの烈火千夏って奴が柱のひとりだな。キャプテンだし、フォワードだし。で、あと1人なんだっけ。セ、センター。そうだ、センターだ。Cセンターのポジションの奴を探そう」


 灯台下暗し、すぐそこにあった。烈火千夏の2段下、番号は6番と表記されていた。


「ふむふむ............6番、牧場まきばあき。176cmか。6番っていやあ、さっき心がブロックした奴じゃないか」


 たしかに柱と言われるだけあって、この試合に出場している選手の中では一番身長が高い。キャプテンの烈火千夏も175cmあるしな。だけど、この6番はキャプテンに比べてあんまり凄いというか、脅威を感じない。ジャンプボールも滝蓮(うち)の心が勝ったし、シュートもブロックしたし。


「来たよアリサ!」


 ん?


「任せて!」


 千夏のドライブが滝蓮のディフェンス陣へ突き刺さる。そのままレイアップシュート––––––

 に合わせてアリサがブロックに跳ぶ。これは捕らえたか。


「甘いわね!」

「!?」


 おお、これはすげえ。シュートを打ちかけていた体勢を、鮮やかに軌道修正してパスへ。ボールは合わせに入った7番が受け取り、シュート。もちろん決まった。

 12対14。


ビーーーーーーッ


 オフィシャルテーブルの上に置かれたタイマーが鳴った。どうやら1セットが終わったようだ。選手たちがお互いのベンチへ戻ってくる。


「ごめん、最後止めきれなかった」


 小春から渡されたタオルで汗を拭きつつ、ベンチに座るアリサ。他のメンバーらも席につき、水分補給等々を済ませる。


「いやいや、アリサ今日凄い調子いいじゃない!逆に心配になっちゃうくらい」


 フォローを入れたのは心だ。アリサに次ぐ番号を持っているからだろうか?


「大丈夫だって!2クォーターも私に任せてよ」

「でも、これだけアリサが活躍してたら向こうもチェック厳しくしてくると思わない?私たちも走るから、無理しないで出してね」

「ありがと。じゃあ、その時はお願いね、絵馬、三春」


 ベンチに座る2年組とは別に、立ったまま水を飲んでいる1年の刹那。普段はただのアホ娘のくせに、妙なところで礼儀をみせにくる。遠慮してないで座りゃーいいのに。


「刹那ちゃん、おつかれ様。はい、タオル」

「サンキュー!」


 小春が渡したタオルで顔を拭った。


「よし。1クォーターは悪くなかったよ!2クォーターで追い抜くつもりでいこう!ディフェンスのヘルプ、シュート後のアウトも忘れないようにね!」

「「おおっ!」」


 全員立ち上がって、今一度気合いを入れ直す。


「先生、何かありますか?」


 アリサが急に俺に話を振った。


「無えよ。俺は観客も同然だからな。そのつもりでよろしく」


 はぁ、露骨に嫌な顔すんなよ。俺が指示を出さないのはいつも通りだろうが。ま、出さないんじゃなくて出せないんだがね。出せたとしても出す気もないけど。


「さあ、いこう!」


 メンバーはそのままに、選手たちはコートへ戻っていった。




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