カイベルト大迷宮攻略(その6)
ルシファーの炭化した皮膚から生まれた4人?の取り巻きの処理は、とあるアニメ映画で出てきた方法を参考にして攻撃を考案する。そして、体感時間で2時間後、4体の取り巻きを処理することに成功した。同じような処理方法とはいえ、結構時間がかかってしまった。処理していく過程は同じでも、此処に撃破していくのではなく、連携されながらの撃破となると、やはり勝手が違ってくる。
まあ、倒すことができたので、結果オーライといえばいいのだが。
それはそうと、しっかりと時間は測ってはいないが、このフロワーにいるのは、すでに20時間くらい経過しているのではないか?戦闘による戦闘で、気持ちがハイテンションになっているため、全く眠気も食い気も感じないが…。
まあいい。
さて、いよいよ最終決戦であるルシファーだ。
もちろん5体の時は、様々な連携をしてきて私たちを苦しめてきたが、ルシファー1体となった今、今度かこちら側が連携して倒すことになる。
ルシファーといえば、天界と魔界(この世界では、どう呼ぶのかは知らないが)の力を同胞した存在であり、善と悪、聖気と邪気など、正反対の力を併せ持つバケモノでもある。
…まあ、なるようになるか!!くだらないことを考えるよりも、目の前の戦闘に集中しよう!!
堕天使ルシファーと言ったら、地球に存在する神話の上では、『光をもたらす者という意味をもつ悪魔』。つまり、神の力と悪魔の力を内包した最強の戦士である。
対して私たちは、神の力しか利用することができない。悪魔の力は、こちらの世界に来てからは全くと言っていいほどの未体験な力だ。魔物にも『スキル』が存在するように、この世界で使用するすべての技や技能は、『神が作り出したスキル』によって発動するのだから。
「天界の追放者よ。…我等と遊ぼうぞ!!」
なんか少し間の抜けた挑発が、マツリから発せられる。私と同等のオタクなマツリも、何を言っていいのは理解できていなかったみたいだ。私も、ルシファーに対して、どんな挑発が有効なのかは、理解はしていないが…。
そんな間の抜けた挑発でも、しっかりと機能はしているみたいだ。マツリの持つスキル『絶対防御Lv10』の元になった『威圧の魔眼Lv10』からは、どんな生物もこの発動範囲から逃れることは不可能だ。ましてや、全力旋回で発動されたら、啖呵がどんなに間抜けなセリフであろうとも、その効果は如何なく発揮する。
その間抜けな挑発に乗り、ルシファーがマツリに向けて、両手に持つ巨大な2本のバスターソードを同時に振り下ろす。対するマツリは、長重両武器『超重量戦棍』でもって相手をする。長さ約3m、重さは約200㎏にもなるその戦棍を軽々と振り回し、ルシファーのロングソードを受け止める。
マツリが、正面に対応している隙に、背後に回ったナオミとミヤビが、それぞれのメイン武装である水晶鋼製の長剣と日本刀でもって、ルシファーの背中に生える漆黒の翼を切り落とす。翼が切り落とされた後には、再生を阻止する呪いを付与した氷でもってエリザが魔法を放つ。
ボスの両目には、カズハが放った矢が突き刺さり、突き刺さった直後に、鏃に仕掛けた爆破魔法が発動して、ルシファーの両目を潰した。その後、アカネの振るう、槌の部分だけでも身の丈の5倍はある巨大な戦鎚が、ルシファーの脳天に炸裂し、その衝撃でルシファーの体が、膝近くまで地面に沈んだ。釘のように地面に叩きつけられた体を這いだそうともがくルシファーに、再びアカネの振るう戦鎚がルシファーの脳天に炸裂し、今度は腰くらいまでその巨体が沈んでいった。
一仕事終えたとばかりに額の汗をぬぐう仕草をしたアカネは、手に持っている戦鎚を観客席のほうへ投げ捨てる。きれいな放物線を描きながら空中を飛んで行った戦鎚は、その重量に似合った轟音を立てて観客席を破壊し槌の半ばくらいまでを沈めた。
アカネによる2度の攻撃で、動きを封じられたルシファー。此処からは、総攻撃のはじまりだ。
攻撃魔法無効化の効果なのだろう。ルシファーに刻まれていく傷が、徐々にだが回復してきており、時間が経てば今度はこちら側がじり貧になっていく。なんせ、この短い時間ですでに先ほどカズハに潰された両目や、ナオミとミヤビが斬りおとした翼が再生を始めているのだ。エリザが放った再生を阻止する呪いが付与された氷のおかげで、再生のスピードは格段に遅くなってはいるが。
そのため、私たちは休みなく、ルシファーの持つ攻撃魔法無効化の時間よりも早く、全身に大量の致命傷を与えていく。
私は後方に下がり、とある作業を行っている。その作業を終えると私は、全員に作業完了を念話で伝え、配置につくように指令を出した。
私の指令を受けたマツリは、超重量戦棍をルシファーの右手に叩き込み、地面に固定するように動きを封じると、いったん後方へと下がっていく。後方では、私が用意した、巨大なバリスタが4台鎮座しており、私たちは1台につき2人ずつそのバリスタについた。
なぜバリスタがこんな場所にあるのか?それは、私が今さっき製作したからだ。私の空間保管庫の中には、様々な金属のインゴットが山のようある。耐用期間が数回程度の武器ならば、戦闘中に作り出すことなど造作ない作業だ。
そんなことはどうでもいいとして、4台のバリスタから打ち出された巨大な銛のような矢は、深々とルシファーに突き刺さりその活動を停止した。念のため私は、ルシファーに対し最大火力で電撃を放つ。すると、ルシファーの体が霧のように霧散していき、そのあとには巨大な宝箱が鎮座していた。
『700年の時を超えて、我ダンジョンを初攻略した者たちよ。そなたたち全員に、初攻略記念として【世界神の祝福】・【創造神の祝福】及び、特殊スキル【超再生(身体)】・【超再生(武器)】・【超再生(装備)】を与えよう』
ルシファーから発生した虹色の霧が、私たち全員に降り注いだ後、このようなメッセージが脳内に響いてきた。この声…、どこかで聞いたことがあるような、ないような。…あるとするならば、お友達になっている神様のうちの誰かなんだろうな。
そんなことを考えていると、誰かが私の肩を叩いてきて、現実に戻される。誰だ?を思い、後ろを振り向けば、そこにはエリザがいた。
「なんだい?エリザ?」
「アスカさん、祝福のほうはなんとなく解るのですが、特殊スキルの3つは、どんな効果があるのですか?」
エリザに問われ、改めてそのスキルを見てみる。この3つのスキル。今まで見たこともなければ私が創ったこともない。そもそも、創り出そうとしてもできなかったもののうちの3つだ。そう思い、スキルに鑑定をかけてみる。
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【スキル名】超再生
【スキルの説明】
このスキルを有する者は、どんな攻撃や状態異常攻撃を受けても、死んでさえいなければ即座に回復する効果を有する。たとえ、首と胴体が離れていても、呼吸及び心臓が止まってさえいなければ、その効果は発揮される。ただし、老衰による死及び、それに伴う身体能力の減少には効果を発揮しない。
このスキルは、カイベルトダンジョンを初攻略したものにのみ与えられるスキルである。
『超再生(身体)』は、スキル保持者に対して効果を発揮し、『超再生(武器)』は、スキル保持者が使用する武器を、即座に回復する効果を持つ。『超再生(装備)』は、スキル保持者が装備する装備品に関して、即座に回復する効果を持つ。
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「・・・・・・」
スキルの説明を聞いたメンバーは、しばらく開いた口が塞がらなかった。
「つまり、お姉ちゃん?」
「なんだい?ミヤビ?」
「この説明からするに、私たち8人を、外的要因で殺すことは不可能だということ?」
「…そういうことになるね。病気も状態異常の1つだから、老衰で死ぬまでどんな病気もかかることがないね。
特にエリザは、この国の次期国王だからね。国王になるとついてくる暗殺は、不可能になったということだ。」
「は・は・は・は…」
乾いた笑いしか起こらなかった。
こうして、カイベルト大迷宮は、私たち『狐とエルフの落し児』によって、最終階層まで突破された。ここにダンジョンが出現してから実に700年。これが初めての完全攻略だった。
数日ぶりに、地上へ帰還した私たち『狐とエルフの落し児』に待っていたのは、カイベルト大ダンジョン初攻略を祝う盛大なパレードやパーティだった。パーティ会場に於いて、回収してきた宝箱を開けてみれば、中には、金銀財宝のほか、様々な魔法付与のかけられた武器や防具、装飾品が収められていた。その中にはもちろん、超再生には及ばないものの、時間経過で再生する武器や防具もあった。
特殊スキル【超再生】については、次の攻略者にはもらえない子スキルなので、黙っていることにしたが、国王様にだけは報告しようと思っている。
それはいいとして、私たちには、宝箱の入っていたもののうち、金銀財宝以外は必要ないので、後日オークションで払い下げると明言すれば、会場が壊れんばかりの大声援が鳴り響いた。
大盛況だったパーティも終わり、大盛況だったオークションも終わった数日後。
その知らせは、カイベルトの滞在していた私たちに、突然届いた。




