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白脚と呼ばれた男  作者: アパーム
第1章-メイル伯爵領にて-
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07-初パーティーの戦い

12月25日 色々修正

「一人なのであれば、どうかな。私とパーティーを組まないか?」


 話しかけてきた女性剣士は、ポカーンとする俺にそう告げた。

 俺が唖然とするのも仕方がない。その剣士はとても美人だった。

 この世界に来てからというもの、美人が多いと思っていたが、今回の剣士はそれ以上だった。ここが地球なら絶世の美女と謳われても間違いはないと思う。

 そして胸。そう、胸が美乳なのだ。俺の守備範囲(A~C)ギリギリの、Cという大きさではあるが、綺麗な形をしている。鎧に隠れているがこの美(微)乳マイスターの俺には解る!


「あの……。聞いているのか?」


 おっと危ない、思わずガン見してしまっていた。

 それにしてもこの娘、今俺にパーティーを組もうと言わなかったか? 登録したばかりのこの俺に声をかけてくれるなんて、なんていい人なんだ。


「あ、あぁ一人だよ」


「そうか。私も今一人でね。良ければ二人でパーティを組ん「喜んで!! 」あ、あぁ」


 あまりの興奮に話を途中で遮ってしまった。

 だが、許して欲しい。なにせこんな美人と、二人っきりで冒険ができるのだ! コレ以上の幸運はあるか? いや無い! 反語。


「ではこれからよろしく頼む。私はア……アリサという。騎士と「騎士なんて凄いですね! 」ん、まぁ……な」


 また遮ってしまった。そろそろ不敬罪とかで投獄されるんじゃなかろうか。


「俺はリュウイチと言います。よろしくおねがいします」


 俺と美女騎士のPTは、こうして誕生した。



 一緒に狩りに行くことが決まって、俺とアリサは討伐依頼を眺めていた。

 ギルド証で確認したところ、アリサはレベル4で、クラスはFクラスだった。クラスとレベルは低いといえ、アリサはなんといっても『騎士』だ。

 騎士というのは、上級の貴族や王族に認められるか、もしくはそれ相当の実力を提示しないと、なれないらしい。宿のツィツィが、昨日そんなことを言っていた。

 そんな『騎士』のアリサがいるんだ、ちょっとやそっと難し目の依頼でも楽勝だろう。

 そうして、俺とアリサはEクラスの依頼『鎌熊』の討伐を受けることにした。

 あ、因みに俺が『アリサ』と呼んでいるのは、アリサの要望があったからだ。

 なんでも、仲間に『さん』付けで呼ばれるのはこっ恥ずかしいらしい。敬語も使わなくていいとのことだった。なんて心の広い……。

 討伐を受ける時にアリサが「もっと弱目のほうが」と言っていたが、「騎士がいて俺が居るんだから余裕でしょ」と答えたら静かになった。遠慮がちな人だなぁ。

 早速受付に戻っていたライラさんに依頼書を渡して、手続きをしてもらってギルドを出た。

 ギルドを出る前に「捕まってしまいましたか……」と、ライラさんが言っていたような気がする。何だったんだろうか。

 と、いうかギルドにいた冒険者達が俺達の事を見ていたような……。女性とペアの俺が羨ましかったのかな?



 鎌熊の出る場所は、歩いて2時間ほどのところにある森だった。道すがらアリサから色々なことを教えてもらった。

 国の成り立ちから鎌熊の生態まで。色々聞きすぎて「君は何も知らないんだな」というお言葉を頂いてしまった。知らないんじゃない、知ろうとしてなかったんだ! と誤魔化したが、あの白い目はごまかしきれてなかったのだろう。

 ほとんどの内容は聞き流してしまったが、お陰で硬貨の大体のレートがわかった。

 銅貨が日本円の100円で、50枚で銀貨1枚分。銀貨50枚で金貨1枚。金貨100枚で白銀貨ということらしい。

 緑貨についても聞いてみたが、アリサはその硬貨を知らなかった。そんなに高い硬貨なのだろうか……。


 森へ到着するまでは、街道を通ったからか魔物に襲われることはなかった。

 到着して辺りを探索しはじめて数10分、おあつらえ向きに2匹の昆虫型の魔物が出てきた。『診断』を使って確認する。固殻蟻シュタルク・アント、レベルは3、スキルはなし。まぁ余裕だろう。


「1匹づつだな、そっちのは任せたよ!」


「え……ちょ!」


 1匹をアリサに任せて、もう1匹の方へ突撃する。

 向かってくる俺に、蟻が叫び声を上げる。が、俺は止まらない。

 蟻が6本ある腕の4つで身体をガードし、1つを振り上げる。振り下ろされる前に懐に飛び込んだ。あまりの速さに混乱している蟻を尻目に、俺はそのままアッパーで顔面(顎)を打ち抜く。

 空中に浮かび、ガードが緩む。そこに正拳を打ち込んだ。

 角度をつけたため、吹っ飛ぶこともなく蟻が地面に叩きつけられる。近寄って確認すると、蟻は絶命していた。固い殻って……名前負けしてね?


「うわわわわ。くりゅな!来るなぁぁぁ!! 」


 蟻の生死を確認している俺の後ろで、そんな声が聞こえた。『え? 』と思って後ろを振り返る。そこには、蟻に向かって手に持った剣を文字通り振り回しているアリサの姿があった。

 ……何やってんの?

 アリサの振るう剣に接近できずにいる蟻。時たま剣が蟻の外殻に当たるが、特に傷つくこともなく弾き返されている。なるほど、固いな。

 蟻の後ろから近づき、頭部を殴りつける。正面から倒れた蟻に、一応もう一発拳を落としておく。動かなくなった。


「私なんて美味しくないよぅ! 早く倒れてよ!!」


 矛盾したことを叫びながら、剣をやたらめったら振り回すアリサ。というかこいつ目をつぶりながら剣を振ってるんだが……。

 

「お、おい! 終わったぞ。もう倒したから」


「早くはや……。え? もう終わったの?」


 俺の言葉に気づいて、剣を止めて目を開ける。キョトンとした顔をしながら、目線が俺、蟻2匹と動いていく。

 ようやく状況を把握したのか、剣を収めて美乳の前で腕を組む。


「わ、私にかかれば楽勝だな!」


 オイ。


「えっと……。アリサさん? 一つ聞いていいかな?」


「な、なんだ? なんでも聞くがいい」


 自分の中で半分出てる答えに、震えそうになる声を抑えて努めて冷静に尋ねる。


「アリサは騎士で、討伐依頼も何度もこなしたことがある……んだよな?」


「……私は、騎士…………」


 ふむ、騎士なのか。


「見習い……」


 騎士見習い? 騎士になりたてとかをそういうのかな?


「を目指して……」


 おかしな雰囲気になってきた。騎士見習いの候補生ってことか?


「いけたらいいな……」


 急に希望的で抽象的な言葉になったぞ! 何それ、騎士見習い候補生志望ってこと!? 


「と思ったことがある!!」


 ……終わっ……た?


「えっと、つまり騎士見習い候補生志望になれたらいいなと思ったことが過去にある……ってこと?」


 俺の出しかけていた答えよりも輪をかけて悪い状況に、オウム返しで聞いてしまった。


「そう……です。」


 そうか。それで会ってるのか。……つまり


「最悪じゃねぇかぁぁぁ!!」


 森に俺の悲痛な叫びが木霊していった。









 思わず叫んでしまったショックから立ち直って、俺はアリサから詳しい話を聞いた。そしてその内容に愕然としてしまった。

 アリサ……本名をアーレス・リィル・サーウェルという貴族の末端らしい。なんでも貴族バレが嫌だったらしく、冒険者登録も、この街でも偽名のアリサで通してるらしい。

 冒険者ランクがFなのは、以前屋敷に来て、剣の指導をしてくれていた冒険者の口利きで登録したところ、始めからFランクにしてくれたらしい。

 この街で冒険者の再登録をして、何度かPTで狩りに向かったのだが、結果は散々。さっきの戦闘で分かる通り、魔物を見て慌ててしまい、戦いができないと認識されてしまう。しかも4回も。

 その結果、街の冒険者からはPTを組んでもらえず、諦める前の最後に、と声をかけたのが俺だったらしい。

 最初はきちんと説明をするつもりだったが、俺の返答のあまりの速さで機会を失ってしまい、さらに俺があまりにも煽てたために自分もその気になってしまったらしい。

 そして依頼について。本当は弱めの魔物を狙っていくつもりが、俺が決定してしまったので、騎士であるはずの自分が「怖いから無理」などと言えるはずもなく、ここまできてしまった……とのこと。

 な? 愕然とするだろ?

 後半全部俺のせいでこうなってしまってるんだぜ……。穴があった入りたい。


「話は分かった。……1つだけ聞いていいか?」


「? 何?」


 俺には、どうしても確認しておかないとならないことがあったんだ。


「さっきまでのしゃべり方と、今。地はどっちだ?」


 さっきまでのアリサは、騎士っぽいというか、これぞ騎士といわんばかりの尊大な話方をしていたはずだ。それが今は、歳相応の (何歳か分からないが)女の子の話し方になっている。


「そんなこと? こっちが地よ。バレちゃったようだし、取り繕っても意味ないかなって。」


 よかった、俺の剣幕に押されて無理やり喋ってたらどうしようと思った。


「それはそれとして、これからどうするかだな」


「……」


 俺の発言に、死刑執行を待つ罪人のように諦めた表情をして、無言で返してくるアリサ。体調不良か?


「今日は帰って、俺の装備ができあがる2日後にもっかい来るかぁ」


「え……? まだ私と組んでくれるの?」


「?? 俺とアリサで受けた依頼だろ? 受けた以上成功させないとな」


 何やら血迷った事を言ってくるアリサに、当たり前のことを返す。

 「あ、依頼ね……」とまた落ち込んだ表情になる。情緒不安定か?

 街に帰る前に、倒した蟻の外殻を剥ぐ。ちょっと先にいる1匹を取りに行っている間に、目の前の蟻の処理をアリサに頼んだ。

 大体剥ぎ終わり、振り向こうとしたところ、首筋がチリッとした。しかもさっきまで反応のなかった気配察知に、大きな気配が引っかかった。近いっ!

 アリサに知らせるために急いで振り向く。すると、蟻を処理しているアリサの後ろに、4本腕の巨大な熊が現れていた。


「アリサ! 逃げろ!!」


 言い終わらない内にアリサの元へ走る。熊が腕の1本(先が鎌になっている)を振り上げているのを確認したからだ。

 アリサが声に気づいて熊を見る。声にならないのか、そのままへたり込んでしまった。


「まにあえぇぇぇぇぇ!!」


 早く動かない脚がもどかしい。このままでは間に合わないかもしれない。もっと早く。早く。早く早く早く早く!!


 早く走ることに意識を集中すると、急に身体が軽くなった。これなら間に合う! 熊の腕が振り下ろされる前にアリサの元へ到着した。さっきまで絶対間に合わないハズのところにいたのに。

 アリサを起こそうとしたが、熊の腕のほうが早かった。アリサを突き飛ばし距離を取らせたが、横を向いていた俺は、なんとか腕で防御したものの、吹っ飛ばされてしまう。

 地面を転がって勢いを殺す。勢いがなくなってきたところで立ち上がった。ガードした左腕から血が出ている。深くはないが生身だからなぁ、刃には弱いか。


「リュウイチ!!」


 アリサの焦った声が聞こえる。手をヒラヒラと振り、大丈夫だと伝える。

 距離を取ったので熊を観察してみる。4本腕の熊。上2本が先が鎌になっており、下2本は普通の腕だ。

 『診断』を使ってみる。レベル58。名前が『鎌熊・突然変異種ズィッヒェルベアー・アルビノ』となっている。レベル58!? ここいらの魔物にしては高すぎない!?


『グルァァァァァァァァァ!!』


 驚いている時間はなかった。叫んだ熊は、アリサを標的にしたのか、アリサに向かって猛然と走って行く。このエロ熊が!


「そいつ(の美乳)は俺のだ! エロ熊野郎!」


 挑発をしながら熊に突っ込む。幸運なことに標的は俺に変わったらしい。こっちを睨みつけてくる。

 森の中で長々と戦うつもりはない。胸元で左の拳と右の掌を打ち付ける。

 ちょっと間が開いたところで構えをとる。後ろ足に集中して、意識を早く走ることに向ける。

 心を落ち着かせ、一気に後ろ足を踏み込んだ。

 さっきのように身体が軽くなり、一瞬にして熊の懐に入る。勢いそのままに拳を打ち込み、鎌の付いた右腕を吹き飛ばす。一瞬の事に熊は全く反応できていない。


「終わりだ!」


 俺の声で熊が懐に気づく。反応しようとするがもう遅い。気力が込められた俺の腕は、既に熊の腹部を突き抜けている。

 万が一の事を考えて、腕を引き抜いた勢いで、身体をバネのように撓らせて、今度は顔面を打ち抜く。

 おそらく首の骨が折れたのだろう。ゴキリという小気味の悪い音を響かせて、顔が背中の方へ回る。そのまま熊は後ろ向きに倒れこんでいった。



「お、終わったの……? あ、貴方怪我してるじゃない!」


 熊が倒れた音で正気を取り戻したのか、アリサが駆けつけてきた。

 言われて腕が切れていたことを思い出し、腕を見る。またキレイに切れたもんだ。


「ちょっと待ってて。内なる活力にて祝福の御力を示せ……『ベッセルング』!」


 アリサが何か呟いたかと思うと、アリサの身体から青いモヤが光に変わり、俺の腕にまとわりつく。

 心地よい感触に身を任せていると、腕の傷が治っていく。え、魔法使えたの!?

 俺の驚きを無視して、アリサは傷が治ったことを確認し、「よかった」と呟き安堵の溜息を吐く。緊張していたんだなぁ。


「よかった、ふたりとも無事で」


「うん、よかったんだけど。あれが鎌熊? レベル違わない?」


 落ち着いたところで、思っていた疑問をぶつけてみる。もしこれが鎌熊ならランクEの依頼っていうのは間違ってたんでない?


「そんなわけないじゃない。あれは『アルビノ』と言われる何十年に一度生まれる化物よ」


 アルビノ? カブトムシとかで聞いたことあるような。


「じゃあ今回の依頼の達成にはならないのか?」


「いいえ。鎌熊のアルビノだから依頼にも当てはまるわ。Dランク相当が倒せる魔物じゃないから、本来は依頼自体が無効になるんだけど……」


 どうやら依頼達成にはなるらしい。一安心だ。

 安心したところで鎌熊へ近寄り、魔石を取り出す。こないだの狼人間より大きくて赤い。さすがレベル58。

 熊の死体をどうしようか考えたが、もしかしたら売れたりできるかもしれないので、姿のまま袋に入れてみる。お、入った。どうやら死体は袋に入れることができるらしい。生きているうさぎを入れようとしたときは入らなかったので、死体なら入れれることが判明した。


「鎌熊が消えた……。何をやったの?」


 突然のことにアリサが驚いている。そういえば袋のこと説明してなかった。驚いているアリサに「魔法のかばんがある」と説明しておく。


「そうなの……。まだまだ知らないことばかりね」


「納得してくれたところでこれからの事なんだが」


 俺の言葉にビクッと反応する。


「今日はとりあえず帰って休もう。そして明日依頼とこの鎌熊の報告をギルドにしに行こう。その後は……」


「……」


 アリサは俺の次の言葉を固唾を飲んで待つ。そんなに緊張することか?


「簡単な収集依頼をこなしながら森で訓練だな」


「…………へっ?」


 間の抜けた返答が返ってくる。ポカーンとした顔をしてこちらを見るアリサ。


「収集依頼が嫌でも仕方がないだろ。とりあえず実戦をこなして、魔物に慌てないようにしないと」


「いやっ、そうじゃなくて」


「まぁ明後日には俺の装備も出来上がるだろうし、危なかったら今みたいに助けれるしね」


「だから、そうじゃなくて。……まだ一緒に戦ってくれるの?」


「?? 当然だろ? 俺達PTなんだから」


 変なことを口走っているアリサに当たり前のことを返す。


「あ、もしかして今回きりのつもりだった? それなら」


「違うの!」


 話の途中で遮られる。それは俺の専売特許なのに……。


「戦えない私にあきれて、今回で解散だ! って言われるのかと思ってた……」


 涙声でそう呟いている。そんなに思いつめてたのか。


「戦いの練習も、一人より二人でやっていくほうが早いさ。これからも一緒に戦っていこう、アリサ」


 クサイ感じに話をまとめて、アリサに握手を求める。ここで外されたらかっこ悪いな。


「……うん!」


 俺の手を握ったアリサの笑顔は、少女の明るい笑顔で、かっこつけていた俺が、思わずドキッとなるほどに眩しかった。











 街までの道すがら、鼻歌交じりに先を歩いているアリサに、疑問に思ったことを聞いてみることにした。


「そういえばアリサ、攻撃魔法も使えるのか?」


「使えるよ~? なんで?」


「前に組んだ時にそれで攻撃してればよかったんじゃ?」


「え~、やだ。騎士っぽくないじゃない。」


 美乳騎士もどきから、そんな返答が帰ってきた。そうか、こいつ実は残念だったのか……。

 そして俺は、出かける前にギルドの冒険者達から向けられていた目を思い出していた。あれは……かわいそうなものを見る目だった。

読んでいただき、ありがとうございます。

主人公がツルペタ嗜好だと判明しました。

ロリ・・・? いえ、ツルペタです

次回更新は19日を予定してます。よろしくお願いします


11/17 誤字を更新しました

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