04-決意と旅立ち
12月23日 色々と修正
翌日は、朝早くに出発した。
ダズが弓矢と少しの食料。俺はハンドボール大の石が10個ほど入ったバックを持った。この石は、昨日村の子供に集めてもらったものだ。
因みになんでも入る『ふくろ』だが、これ自体が出し入れ自由のようだ。意識すれば表にも出せるし、出さないまま中から物を取り出すこともできる。なんとも便利な道具だ。
まぁそれをやると、何もない場所から物が出てくるので、今のところ必ずポケットから出すよう心がけているが。
まずは昨日俺が襲われた場所へ向かった。
辺りを見回してみるが、ゴブリンの姿はなく、死体もなかった。おそらく獣にでも食われたのだろう。
「近くにはいないようだ、でもちょっと先に1体ウロウロしてるのがいるな」
「そうか。……ってかどうしてわかんの?」
「気配をな、察知してるんだ。狩人やるにはありがたいスキルだ」
「スキルかぁ……。なあ、俺にもできるかな」
「できるかどうかわからんが、やり方なら教えてやる」
ダズによると、精神を集中させればそいつのまとっている『気力』……オーラのようなものが見えてくるそうだ。昨日の最後に感じたようなやつかな?
話を聞きながら目をつぶり、集中していく。
最初は一人になったかのように感じる。少しすると、近くに昨日とは違う、暖かい色のオーラを感じる。これがダズか?
ダズの暖かさを感じながら範囲を広げていく。
先にある丘との中間地点。そのあたりに小さく、冷たいオーラを感じた。昨日と同じような感じ……これがゴブリンか。
目を開け、感じたことをダズに伝える。すぐにスキルを使えたことに驚いていたが、ダズが確認したものと距離も方向も同じだったようで、直ぐに移動を開始した。
『診断』で自分を確認してみると、スキルに『気配察知』が追加されていた。
気配を追っていくと、ゴブリンが1匹で徘徊しているのを見つけた。
まだこっちには気づいてないみたいだ。早速、ダズに援護してもらいながら……。
「待て、お前の投げる石の命中はどれくらいだ?」
「え? まぁ、1個を狙って投げればほぼ当たるけど」
「そうか。ならお前はそれで相手の動きを止めてくれ。俺が弓でとどめを刺す」
「……わかった」
本当なら出て行って、援護してもらいながら倒すほうがダズは安全だと思ったが、この申し出は正直ありがたい。
石をゴブリンの下半身に狙って投げつける。足が折れたのだろう、跪き、驚いたようにあたりを見廻している。
そこをダズが射る。頭に命中して、そのまま絶命した。
周りから仲間が出てこないことを確認して影から出た。
ダズは死体を解体して魔石を取り出す。その間に俺は気配を確認する。丘の中央辺りに1匹。その周りに後5匹ほどいるようだ。
残りがいる場所を、魔石を取り出し終わったダズと確認し合う。うん、間違ってない。
これからの作戦について話し合う。今回みたいな方法で、各個撃破する事になった。
それから俺達は、気配を探りながら1匹づつ仕留めていくのだった。
□
「ここが巣か……。どうやら本当に『はぐれ』のようだな」
丘の麓、人が一人入れるくらいの狭さの入口の前でダズが呟いた。
聞いてみると、ゴブリンの巣は規模が大きくなるにつれ入り口も大きくなるらしく、このサイズだと少数の規模らしい。
ここに来るまでの間に、外に出ていた他のゴブリンの討伐も終えている。
これで合計の数は12匹。そして巣に残る最後の1匹……おそらくボスだろう。
「早速行くか」
歩き出すダズ。それを俺は、手を広げて遮った。
「……どうした?」
「俺一人で、行かせてくれないか」
「お前の力なら大丈夫だろうが……。いいのか?」
ダズの表情が『心配』と言っている。
「……あぁ、行かせてくれ」
それを振り切るように声を出す。緊張か、声が掠れてしまっていた。
ダズには入り口を見張ってもらい、一人、中に入る。
後ろから『気をつけろよ!』との声がかかってきた。
右手を上げてそれに答える。
本当は、まだ気持ちの整理なんて付いていない。
洞窟の中は、明かりといえるものはなかったもののうっすらと明るい。どうやら土の中に、陽の光を浴びてうっすら発光する石が、埋め込まれているようだ。
洞窟には横道などなく、まっすぐに進んでいく。
最近作ったものなのだろう、ダズ予想は当たっていそうだ。
緊張はしなくなったが、罪悪感がまとわりつく。
洞窟を進んでいくと、開いた場所へ出た。
果たしてそこに、そいつはいた。レベルは12、槍のようなものと左手に木の盾を持っている。
名前はドライ・ゴブリン。今までのとは違うオーラと、敵意。
俺はカバンを降ろし、そいつに正対した。
これは、必要な、決別の、儀式だ。
『ギャギャギャギャギャ!』
ゴブリンが叫びながら突撃してくる。右に抱えた槍を突き出してきた。
右半身になり、槍を避ける。そして俺の前に見える槍に、蹴りを打ち込む。
槍は蹴った場所から折れてしまい、穂先が洞窟の壁にめり込む。
お前にも守るものがあるかもしれない。
ゴブリンは俺と少し距離を開けた。そして落ちてるナイフを手に取る。
今度はナイフで切りかかって来た。距離を詰めて懐に入る。
切り返しが来る前に拳を叩き込もうとするが、今度は左手の盾が俺に向かってきた。
拳をゴブリンの胸ではなく、左肩に打ち込む。
『ゴリッ』という嫌な音がして、盾を持ったままの左肩が吹き飛ぶ。
だけど、俺にも守りたいものがある。
ゴブリンと距離を取る。
痛みだろうか、敵意だろうか『グルアァァァァァ!!』と吠えてくる。そして片腕のまま飛びかかってくるゴブリン。
俺は、胸の前で左の拳を右の掌に合わせる。
そのまま左半身に構えを取り、迎え撃つ。
俺の意志で、お前を討つ。
繰り返し練習して覚えた1歩の間合い。
ここに来てからの異常な速度と距離ではなく、日本で覚えた1歩の間合い。
腰を落とし、拳を握り、後ろ足で踏み込む。
この一瞬は、この時だけは誰も俺を縛れない。
だから……。
「ごめんな」
□
右手に拳大の魔石を持って洞窟を出た。出てきた俺にダズが気づいたようだ、ホッとした表情で駆け寄って来る。
「終わったか……。ケリはついたのか?」
俺の表情を覗うように聞いてくる。やっぱり心配させてたんだな。
右手の魔石を見せて、ニッコリと笑いかけてやる。
「終わった。帰ろうっ」
笑顔の俺に釣られてか、ダズも笑って、俺達は村へ戻った。
村には商人の馬車が止まっていた。
まだ定期便の日じゃないのに……と思い話を聞くと、どうやら『はぐれ』が出たとザンドウ街にある商人ギルドで噂になったようだ。
そこで、村と定期的に交流を持っている商人ギルドが、探索隊を連れて村まで安否の確認に来たとのこと。
俺達の報告を聞いて、安心した商人は翌日朝にザンドウへ出発するらしい。出発する馬車に俺を乗せて貰う約束をして、俺達は村長へ報告に向かった。
報告が終わった後は宴会が待っていた。
村への危険がなくなったこと、それにゴブリンから取った魔石 (最後のやつは除く)を商人が買い取ってくれたのも大きかったようだ。
村人から感謝の言葉をもらい、隣に座るサキちゃんにお酌をしてもらった。
向かいから睨んでくるダズが鬱陶しかったが、これくらいは役得だろう。許して欲しい。
そんなお祭り騒ぎの夜も開け、出発の朝が来た。
村の門の近く。慌ただしく荷物を積み込む商人の前に、村人のほとんどが集まってくれていた。
「短い間だったけど、ありがとう」
「おう、こっちこそ命を助けてもらって。村まで助けてもらって。感謝してもしきれねぇよ」
「リュウイチは村の恩人じゃ。近くに来たらいつでも村に寄ってくれ。村を上げて歓待しよう」
「毎晩あのお祭り騒ぎはかんべんして欲しいけどね」
昨日の夜の宴会で話つかれていた俺を思い出してか、集まってくれた皆がクスクス笑う。
と、そうしているうちに商人の従者から『出発するぞ』と声がかかった。返事をして、改めて皆を見る。
「じゃあ、本当にありがとう」
「またな! 今度は畑を頑丈にしておくからな」
「リュウイチさんのお話、楽しみにしています」
「いつでも来いよ。娘はやらんがな!」
「さらばじゃ、良き旅を」
皆の別れの挨拶を聞きながら馬車に飛び乗る。
それにしても村には本当にお世話になった。ダズは最後までダズだったけど、あの人のおかげで色々と考えることができた。
いい人達に出会えて、俺は幸運だったなぁ。
そんな事を考えている俺を乗せて、馬車はザンドウに向けて走りだした。
読んでいただき、ありがとうございます
短くなってしまいました。
本日はもう1話更新予定です。楽しんでいただければ幸いです




