30-話を整理する1日
12月20日誤用修正
「……は?」
思っても無い言葉に、返す言葉が見つからない。おれが勇者? 一体何を言ってるんだ?
「『お前は、アリストア王国に召喚された勇者か』と言ったんだ。」
俺の言葉に、ライド男爵がもう一度同じような質問を繰り返す。いや、二回言われても訳がわからないんですが。
ん、ちょっと待てよ。確か今いる勇者は2人で、帝国と連合しかいなかった筈だな。……何かあるぞ、これ。
男爵の言葉を否定して、経緯を詳しく尋ねる。
『王家からの指示があっただけで、詳細はわからんが』と前置きして、内容を詳しく話してくれる。
本にも書いてあったが、この世界には、魔族に対処する為の存在として『勇者』を異世界から召喚することがあったらしい。
近年魔族の出没が増えたことから、各国は魔王の復活を懸念して勇者召喚の儀式を行った。
帝国、連合の順に勇者を召喚し、その勇者は武勇に秀でるとの宣言もされている。
今から3年ほど前、王国も勇者を召喚したらしい。召喚された勇者は、17歳の男で、最初は王家の話を聞いて乗り気だったのが、1ヶ月ほどして突然出奔したそうだ。
王家は勇者を召喚した事や、出奔したことを隠してつつ所在を探したが、未だに見つかっていない。
召喚された男は、異能を発揮するわけでもなく、歴史や言語、剣の扱いや魔法の習得を恐るべきスピードでこなしていた。
王家も安心して勇者召喚の宣言をしようとしたところ、突然の出奔。王家は信頼できる貴族に事のあらましを話し、発見したら報告してくれと伝えたらしい。
それで出自の不明な俺が突然出てきて、伝説の創世の勇者と同じような武器を作り出したため、確認したということだ。ふむ、言われてみれば俺って怪しいよなぁ。
「それでなんだが…。疑うわけではないのだが、お前の出自を教えてもらえればと思ってな。自分の娘を嫁がすのに、相手のことを何も知らんとは言えぬだろう。」
話を聞いて納得していると、男爵が尋ねてきた。うん、言われてみれば最もだ。
最初は暈して伝えようとも思ったが、短い間だけどこの人達に悪意があると思えないし。それに近しい存在になるであろう人達に嘘もつきたくない。
異世界からやってきたこと。神様と名乗るジジィに会って、加護を貰ったこと。落ちた先でダズという狩人に教えてもらった事。等など、アリサと出会うまでの事を説明した。
アリサやココア達は、驚きながらも話を聞いてくれた。……が
「ハッハッハッハ! 猫を…それで事故って…! しかも間違い…。ダァッハッハッハ!」
一人の爆笑する親父を除いてな。
少しして笑いが収まった(顔は笑っていたが)ライド男爵と、この先の話をした。決めたことは3つだ。
1つ、この話は誰にもしない。
1つ、俺のことは遠く東にある『ジャポネ』という国から来たと言う事にする。
1つ、白銀の剣を作った『鬼神力』 (リュウイチが名づけた)はその『ジャポネ』で覚えた技ということにする。
これは全て俺を守るためのものだ。話が漏れて神様の使いと言われても困るし、だからと言って出身等を聞かれる度に違うのもおかしい。そしてこの先戦いで剣を作る度に『創世の!』とか言われても困る。
それらを防ぐために、ここにいる者達だけでも話を合わせる必要があった。
お互いに確認を含めて詳細を決めていき、今日はそれで終わり。病み上がりである俺の大事を取って、休むことになった。
因みに魔族襲撃の日から、俺達3人はライド男爵の屋敷にお世話になっている。俺に1部屋、ココアとリリに1部屋貸してもらった。
ココアとリリは、俺が寝込んでからというもの少ししか眠っておらず、会議中も眠たそうにしていた。俺を心配して俺が寝かされている部屋にいたらしい。……ありがとね。
ベッドに戻って、一人これからの事を考える。明日から何するんだろう。男爵は『明日教えるからさっさと休め』としか言ってくれなかったからな。
と、考えているとドアがノックされる。誰か来たのかな? はーいと返事をする。
「あの…私だけど…。いい?」
ノックした相手はアリサだった。手招きしてベッドに一緒に座る。
…そういえば俺、アリサと婚約…したんだよな。それに、抱き合ったって…。
意識した途端顔が熱くなってきた。視線が思わずアリサの身体に向いてしまう。
「あ、あの…。さっきの、話なんだけど。」
そんな俺の意識を離してくれたのは、アリサの言葉だった。そういえば、アリサは俺に思いを伝えてくれたけど、俺はまだ何も言っていない。男として失格だよな、こんなの。
「さっき、私でもイイって「アリサ」…はい。」
アリサの言葉を遮る。そこから先を誘導されちゃ男がすたるよな。
「俺は、さ。アリサの事…。好きだよ。」
驚いているアリサ目を見て、俺の想いを告げる。
「何時からとかは分からない。けど、今回魔族と戦った時、傷ついたアリサを見て、許せないって思った。俺のアリサを傷つけるなんて…って。アリサが死んでしまったらどうしようっていう考えで一杯だった。」
アリサの目から、一滴の涙が溢れる。最初は一滴だったものが、俺が言葉を紡ぐ度に、奥から奥から溢れ出てくる。
「アリサと出会って、一緒に依頼をして、一緒に旅をして、気が付かない内に君に…。アリサに、俺は恋をしていたみたいだ。」
そこで言葉を留めて、隣りに座ったアリサの手を包む。優しく、大切なモノを守るように。
「アリサ。俺と、結婚してくれないか。」
最後の言葉を言ったと同時に、アリサと俺の唇が触れた。アリサが飛び込んできたのだ。
突然の事で混乱してしまったが、アリサの身体を抱きしめる。目の前に目を瞑ったアリサの顔がある。そして口からは、電気の走るような感触が伝わってきていた。俺はその幸せな感触に没頭した。
10秒だったのか、1分だったのか分からない口吻が突如として終わる。顔を見られるのが恥ずかしいのか、俺の胸に顔を押し付けてくる。
「…緊張で口から心臓出そう。」
次に出てきたのは、そんなビックリ発言だった。だとしたら、俺が飲み込む事になってたのかな。っていうか、もうちょっとロマンチックな言い回しがあったろうに…。
「婚約の瞬間に独り身ってのは勘弁してほしいな。」
「……バカ。」
恥ずかしさを誤魔化しながら軽口を叩くと、ようやく笑いながら顔を上げてくれる。
目の端にある涙の跡を拭いてあげる。恥ずかしそうにしながらも、俺と目を合わせてくれる。
「んで、返事は?」
「…勿論。よろしくお願いしまんむっ…」
アリサの最後の言葉をキスで遮りながら、俺はそのままアリサの身体を押し倒した。
「ん…。あの、私その…。初めてで…。」
口を離すと、赤い顔でそんな事を言ってくる。・・・いや、それ逆効果だから。
「うん。優しくする。」
「ほ、ホントに私でいいの? 後でやっぱヤダとか言わない?」
混乱してるのか、そんな事を口走っている。何を言ってるのやら。
「アリサが良いんだ。そうじゃなきゃ、…嫌だ。」
「あぅぅ…」
ゆでダコの様に赤くなったアリサの髪を撫でる。サラサラとした光沢のあるブロンドの髪が、俺の手に吸い付くように絡みつく。
そんな筈はないんだけど、まるで髪の毛1本1本に神経があるかのように。髪を操って俺の手を愛撫しているかのように、気持ちが良い。何時間でも撫でていられそうだ。
「あの…する前に、その…。」
知識として知っているのだろう。身体をモジモジさせながら、切なそうに伝えてくる。
「もっかい、キス…して」
その言葉が引き金となる。こんな可愛い娘に、こんな事を言われて耐えれる奴は男じゃない。人間じゃない。
さっきのように、口吻を交わす。だけど、さっきのような軽いキスではない。貪るようなキスだ。
アリサの口に、舌を入れる。最初は驚いていたけど、ゆっくりと、おずおずとアリサの舌が動き出す。
2つが絡まる度に、身体に電撃が走る。まるで、初めてのキスの様に感じる。いや、最初の時は興奮しすぎてそれどころじゃなかったな。
長い間お互いを貪りあった後、一度顔を離す。お互いの唇に線が引かれている。
ゆっくりと、アリサの着ているワンピースを肩から脱がす。
肩、胸、腰。だんだんとアリサの肌が顕になってくる。
『ちょ…お…、押す…』
『お…が大…。ちょ…。み…。』
『な…の…あそ…』
なんか、変な声が聞こえた気がする。脱がすのを止め、声の聞こえたドアの方向を見る。
「ちょ、お前たち…どわぁぁぁ!」
ミシミシと音を立て、ドアが開かれる。・・・いや、重さで破られると言ったほうがいいか。
倒れたドアの上には、男爵、メイド長、リリ、ココアが乗っている。しかもリリの口はメイド長が塞いでるし。・・・まさか、覗いてたな?
「いや! これは、その…だな。」
「お嬢様の成長を見届けるのは、メイドの嗜みですわ!」
「んむ…むー!」
「?? 何でアリサはだかなの?」
各々がそれぞれ、言い訳をする。ココアからだと、アリサの下半身は布団で見えないのか、そんな事を言っている。
それに気づいたアリサが、布団で胸を隠して、立ち上がる。
「あんた達…」
ゆっくりと、ドアに近づいていくアリサ。後ろに般若のオーラが見える。あ、ありゃマジだ。
「ま、待て! これにはれっきとした理由がだな」
「そ、そうですわ! お、お嬢様、まず手を、手を下ろして頂いてですね・・・!」
「む~…んむむむ!」
「お、怒ってるの? はだかとか言ってゴメンなさいなの!」
アリサの怒気に気づいたのか、皆の顔が青くなり、それぞれ必死に取り繕っている。・・・無駄なあがきを。
俯きながら歩いていたアリサの顔が上げられる。そして・・・
「ばかーーーーー!!!!」
その日ライド邸から、『ごめんなさい』という悲痛な叫びが夜遅くなるまで聞こえてきたそうな。
後にそれは、『ウーデン市のごめんなさい幽霊』という噂話に発展するのだが、俺達には知る由もなかった。
読んでいただき、ありがとうございます。
艶が足りない…かな?
次回更新は20予定です
よろしくお願いします




