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白脚と呼ばれた男  作者: アパーム
第2章-アーネス子爵領にて-
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27-男爵とバトる!

「まずは小手調べかの。コレでやられてくれるなよ」


 そう呟いたランド男爵が、距離が空いてるのに剣を振るう。やな予感がして、位置をずらす。

 ドガガッ!

 男爵の剣から放たれた斬撃が、さっきまで俺がいた位置を通り、壁に激突する。あれ食らったら痛いぞ。

 その光景を眺めた後、再びランド男爵に視線を戻す。剣を振りかぶっている。また同じのが来るか?


「さぁ、踊ってくれ」


 その一言がきっかけだったのか、ランド男爵が剣を振り回す。

 その剣の一振りごとに、さっきと同じような斬撃が飛んで来る。何だこの人! やばすぎる!

 斬撃を避けながらも、ランド男爵の動きから目を離さない。早すぎて剣先の動きが見えないので、身体や腕の動きから剣筋を見極めるしか無い。

 男爵の言葉の通り、俺は一人ダンスを踊っているみたいだ。

 言ったとおりになるのもなんか癪に障る。斬撃を冷静に観測してみる。これは……気力?

 剣に気力を纏って、それを打ち出してるって所なのだろう。一度俺もやったことがあるが、纏うのは素早くできるが、そのまま斬ろうとすると、剣が持たなかった。

 それ以来練習はしていなかったんだが……。打ち出す位なら出来るかも?


「どうした、避けているだけでは勝てんぞ」


 ランド男爵が挑発してくる。その挑発……買った!

 男爵に向かって正対する。腰を落とし、両拳を腰辺りに構える。俺の動きに何かを感じたのか、男爵の動きが止まった。


「さっきみたいに撃って来ないんですか?」


 今度は逆に俺から挑発してやる。不思議そうにしていた男爵の口が歪む。


「ほぅ……。なら見せてもらおう……かっ!!」


 言い終わると同時に斬撃が襲ってくる。両腕に気力を溜め、突きを出すと同時にそれを……撃ち出す!

 轟音とともに、斬撃と、俺の打ち出した気力弾が相殺される。

 男爵は一瞬驚きの表情をしたが、すぐさま不敵な笑みに変わる。


「さすがだな、『白脚』殿。初めて見る技だ。名をなんという?」


 ……名前? そんなん考えてなかったな。えーと、うーんと。


「『拳銃マグナム・アーツ』」


「ふむ。『拳銃マグナム・アーツ』……か。面白いなぁ。面白いなぁ!!」


 そうして再び斬撃が俺を襲う。先ほどとは段違いの速度と大きさ。あれで本気じゃなかったのかよ!

 男爵の動きを読み、それら全てをどんどん相殺していく。たまに俺からの攻撃も忘れず打ち込んでいく。

 相手もそれを読んでいるのか、飛ばしたものは避けられ、又は相殺されて行く。

 打ち付ける弾が100発を超えた当たりで、男爵が斬撃を飛ばすのをやめた。

 相殺の轟音も消え、会場は静寂に包まれる。観客は息を呑んで見守っている。いや、驚いて喋れないのか。


「このままやっても終わらぬな。ならばっ……!」


 そう呟いた男爵が剣を構え飛びかかってくる。俺はすぐさま左半身に構え、迎え撃つ。

 俺の前で剣が横に払われる。重心を後ろに下げ、目の前で避ける。振りぬいた腕に拳を打ち付ける。が、片手で方向をずらされた。いつの間に片手で剣を持っていた!?

 先ほど横に払ったはずの剣が、今度は下から切り上げてくる。片足を上げて受け止める。……っ。重いっ。

 男爵の身体が沈む。と、同時に足払いを仕掛けてくる。

 片足で飛び上がり、先ほど上げていた足でかかと落としを撃つ。

 ガキィン!

 剣で安々弾かれる。弾かれた勢いを利用して距離を取った。

 そして再度左半身に構え、男爵を見据える。体勢を戻した男爵も、再び剣を中段に構えている。


「早いなぁ、剣先が全く見えない。それに体術も出来るなんて反則でしょう」


「ふん、お前こそ動きが読めない。身体ではなく俺の腕を狙ったり、足でも自由に攻撃が飛んでくる。全く恐ろしいよ。」


 絶対嘘だ。安々と受け止めといてよく言うよ。


「お褒めの言葉として受け取っておきます……よっ!」


 今度は俺から攻撃する。瞬動で近づき、速度を利用して右足で飛び回し蹴りを放つ。

 体勢を低くして避けられる。起き上がりながら剣を突いて来るのが見える。

 空中では避けられないと思っているのだろう、男爵の顔がニヤリと歪む。

 そうはいきませんよっと!


「な……なにっ!?」


 突いてきた剣に左足で乗る。そして勢いをつけて、右足でかかと落としを腕に撃つ。

 剣で払われるかと思っていたが、腕を引かれてしまい、避けられた。

 だが、俺の動きはまだ続く。

 飛び回し蹴りの推進力と、かかと落としが外れた回転を利用する。

 さらに距離を詰めながら縦に回転し、剣に乗った左足でもう一撃かかと落としを撃つ。

 ギィン!

 剣で受け止められてしまった。そのまま剣が横に払われる。

 体を捻り、剣を右腕で弾き飛ばし、地面に着く。

 かろうじて着地した俺に、剣が振り下ろされる。ちょっ! さっき弾いたのに!?

 急いで男爵の右に移動する。


「う、うおっ!」


 振り下ろしていたはずの剣が、横に払われる。どんだけ早いんだっつの!

 しゃがんで避けるが、今度は左拳が俺に向かっている。読まれてるか……!

 俺は打たれる拳を放おって置いて、相手の肩めがけて左拳を打ち付ける。

 ゴヅッ!

 俺の拳は男爵の右肩に命中したが、男爵の拳も俺の右肩に命中する。拳まで重い!

 横に飛ぶ俺と、後ろに飛ぶ男爵。再度二人の距離が離れた。


「ガードを考えずに拳を打ち抜いてくるかよ。とんでもないな、お前は」


 剣を構えながら男爵が声を掛けてきた。俺も左半身に構えて答える。


「貴方こそ、剣速が早過ぎる。振り下ろしたと思ったら横に薙いで来る。ディグさんの師匠ってのは伊達じゃないですね」


「ふん、あんなひよっこと同じにされてはたまらん。まぁ今ので、拳同士では勝てんのは分かった。ここにきて俺が挑戦者か。面白い」


 楽しそうな笑顔を向けてくる。この試合を心底楽しんでいるんだとひと目で分かる。

 それは俺も同じだった。力加減はしているが、おもいっきり動いて尚負けるかもしれない相手。強敵。

 そんな奴と戦うのは、この世界に来て初めてだ。

 忘れかけていたこの感触。怖い、けど楽しい。それを思い出させてくれる相手。最高だ。

 もしかすると、俺とライド男爵は似ているのかもしれない。いや、武道を習っている人なら当然か?

 ……まぁ、今はそんなことはどうでもいい。


「楽しみましょう、この試合を」


「同感だ。しかし、お前は魔法は使わないのか? ミリル様からの話だと、ありえないほど強力な魔法を使ったと聞いているのだが」


 ニヤリと笑った後、そんな事を聞かれた。当たり前でしょう、だって


「武闘大会に魔法なんて、そんな無粋な真似はしませんよ」


「……ははっ! その意気や……良しっ!」


 俺の言葉に満足したのか、笑みを崩さぬままライド男爵が飛び込んでくる。

 間合いに入る前に、剣が振るわれる。……斬撃っ!?

 慌てて右拳で気力を撃ち出す。なんとか相殺したが、その爆風から身体が飛び出してくる。


「うおぉぉぉ!」


 ものすごい速度で剣が振り下ろされる。左腕で受け止めようとしたが、首筋がチリチリする。……違うっ! 左腕を気力で覆う。

 ガチィン!

 振り下ろされた剣と受け止めた腕から、さっきの様な爆発が起こる。気力を剣に纏ってたな!?

 爆風を気にせず右半身を前に進め、煙の中にいるだろう男爵の胸の位置に掌を付ける。何かにあたった感触がする。今だ!

 右足を踏み込み、掌打に力を込める。ドゥン! という音とともに何かを弾いた。

 煙が晴れてくると、そこには左腕を弾かれた男爵の姿があった。咄嗟に腕でガードするとか、まじかよ!?

 驚いている暇はなかった。下から剣が突き上げてきた。咄嗟に左腕で気力を纏い、受け止める。


「おおおお!」


 が、今度はあっさり気力を貫かれ、左腕がおもいっきり弾かれてしまう。気力を込める量で負けたか……。左腕が痛ぇ。

 空中に浮かばされた俺に、横薙ぎが襲ってきた。『天瞬駆』で男爵の上空に移動する。

 そして右足に気力を纏い、足で『拳銃』を放つ。


「ぐぐっ!」


 斬撃を放つ余裕のない男爵が、気力を纏った剣でそれを受け止める。

 はじき返した時には、俺は既に男爵の後ろに回っていた。


「『拳銃マグナム・アーツ』、『散弾ショット』!」


 近距離から拳に溜めた気力を放つ。さっきみたいな一つの玉ではなく、小さな弾を大量に放つイメージ。

 男爵の背中で爆発が起こる。

 吹き飛んだ男爵だが、ダメージはさほど無いように見える。恐らく背中を気力で覆ったのだろう。気力操作が早過ぎる。

 俺も素早く左半身に構える。


「っ……」


 左腕が痛い。さっき弾かれたのが効いてるな。

 あの気力の量といい、操作の速度といい、この人はバケモノかよ。


「ハッ、空中で体勢を変えたり、接触した所からの謎の攻撃。それに俺の気力量に着いてこれるほどの力。お前は化け物か」


 立ち上がりながら、俺に向かってそんな事を言ってくる。いや、同じこと考えてますから。

 口から笑いが止まらない。楽しい、楽しい!

 男爵も同じ気持なのだろう、不敵な笑みが全く消えない。

 もっと、もっと戦ろう!


「「行くぞ!!」」


 俺と男爵の言葉が被る。俺が右足で踏み込み、男爵が剣を構えて駆けてくる。


『ドッガァァァン!』


 その時、大きな爆発音が聞こえた。

 結界の外から。

読んでいただき、ありがとうございます

次回更新は17日予定です

よろしくお願いします

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