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新年の儀

アカトュキ大陸北部、王国の首都シエルレード別名月の都には、大神殿がある。今、大神殿では、月の女王エルトゥーリアによって、新年の儀が執り行われていた。

一年無事に過ごせたことを神々に感謝し、これからの一年もつつがなく過ごせるよう祈願する。

王族、主だった貴族に都市の中心人物たち。大神殿所属の神官はもちろん、見習いたちも末席に座している。カサネとスオウは教師として彼らに目を配っていた。

女王の祈りの後に続き、神殿内の全員の祈りが始まる。神殿内に老若男女の声がまざり響くのは荘厳とさえ言える。見習い達も陶然としていた。この経験は、神官として貴重なものであることは間違いない。

祈りが終わり、女王が祭壇から降りた。次はいよいよ《鏡の舞》だ。


カサネとスオウは、初めての教え子の晴れ舞台に、本人達以上に緊張していたが、それを押し隠し、舞い手の二人を送り出した。

カサネは震える手を隠すように服を握り締めた。カルラやライトもこんな気持ちになったのだろうか。自分の時のほうがまだ緊張していなかった気がする。

すっとスオウがカサネの手に手を重ねた。大丈夫というようにトントンとたたいてくれる。

ガチガチになっていたカサネの身体の力がぬけた。


スオウは自分の心が読めるようだとカサネは思う。不安だったり緊張だったりした時に、いつだってスオウはカサネを元に戻してくれる。

スオウがいるから大丈夫。

カサネの中でスオウへの信頼は絶対なモノだった。


カサネはスオウと二人、教え子の舞を見守った。


無事に舞い終わった教え子に笑顔を向ける。これは、カサネとスオウが決めていたこと。自分達が経験してきたからこそわかること。

二人の笑顔に、教え子がほっとした顔をして、戻ってきた。これで神事は終了だ。



場所を食堂に変えて、新年の祝宴が始まった。

王も女王も、神官長も見習いもごちゃ混ぜで楽しむ年に一度の無礼講。

軽いお酒も出るので、(もちろん見習いには無い)みなの口も滑らかになり、会場内は、実ににぎやかだ。神殿内に入れなかった子供達も走り回っている。


「カサネ、スオウ!」

ユーリ王子が走りより、二人に抱きついた。後ろからは第一王子シンラートとアイラーシア王女がやってくる。どうやら今日は二人がお守りのようだ。父王と母女王は挨拶にあちこち飛び回っていた。


「今年もよろしくね!…シュウは?」

警戒しながらきょろきょろと辺りを見回すユーリにカサネは思わず顔をほころばせた。

「あちらで私達の料理を取っていますよ。ユーリ王子もいかがですか?」


それを聞くとユーリはダッシュして、シュウの元へと向かった。顔を合わせると、少しもめていたようだが、やがて、二人で協力して料理を取り始めた。


「まあ、一時はまたケンカかと思ったけど、よかったわ」

ほっとする王女に、カサネとスオウがくすっと笑う。

「ケンカするほど仲がいい、ですね。ああ、量が多くて持てなくなってる。手助けに行きましょう」

「僕も行こう」


スオウと兄王子が、助けに向かうと、ユーリとシュウはうれしそうに二人を迎えた。大盛りの皿を持ってもらい、いそいそとカサネと王女の元に戻ってくる。


「スオウはいいお父さんになりそうね」

王女がカサネににっこりと笑いかける。

「お、王女…!」

カサネが頬を染めてうろたえた。

「うふふ、私もカサネ達みたいに、好きな人と結婚できたらいいなぁ」

まだ12歳の王女は、うっとりと夢見ている。


カサネの両脇をユーリとシュウが占め、おとなしくなったところで、皆で食べ始めた。

王子と王女がいるので、皆が挨拶に来る。歩き回らなくてもいいから、助かった~と思っていると、あいさつ回りを済ませた王と女王もやってきて、それはそれはにぎやかな宴になった。


やがて、料理もお酒もほとんど無くなりお開きになると、かなりご機嫌になった女王がグラスを掲げて宣言した。


「大人のみなさ~ん、続きはお城でね~。飲むわよ~!」


「おぉ~!」

お酒の入った大人の皆様は、王に支えられた女王と一緒にお城へと移動した。



翌日、大神殿の朝の祈りは、見習い達だけになるのは、毎年のこと。

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