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神官は琥珀を胸に抱く4

27話から30話のスオウ視点プラスアルファです。

ああ、もう二度と装飾品店になんか行きたくない。お互いに贈るものを選ぶのだって、いっぱいいっぱいなのに、トゥーリア様、髪飾りまで追加するから。

ライト先生にまでばれてた。トゥーリア様にお願いしにいった時からある程度は覚悟してたけど、自分の気持ちが皆にばれてるのは、思った以上に気恥ずかしい。まいったなぁ。


ヴァン様とトゥーリア様は、やっぱり僕たちを大神殿に呼び戻すつもりだった。ヴァン様は、もうおばば様に僕の次の神官候補を選ぶよう頼んであるって。カサネの実家のラウの神殿は、実はあの辺りの神殿をまとめる役割をしているので、人事が難しいらしいが、なるべく早く呼び戻すと、トゥーリア様は約束してくれた。

セナさんは、こっちが拍子抜けするくらいあっさりと了解してくれた。

「だてに兄はやってないよ。あのカサネが君の前で何度も泣いてるんだ。他にそんなヤツいないだろ?」

父さんには手紙書いておくよとまで言ってくれた。セナさん、ありがとう。


ライト先生、カルラ先生。ほほえましいものを見るような目をしないでください!


本番が近づくにつれ、僕とカサネは緊張していった。よっぽどピリピリしてるんだろうな。みんな、腫れ物をあつかうように接している。最後の数日は、ハーンでさえ、声を掛けられないみたいだった。ごめん、ハーン。終わったら、ゆっくり話そう。


《鏡の舞》の衣装を身に着けた。いよいよだ。気を静めようと大きく息を吸った。

カサネに贈られた腕輪を左手につける。碧石と琥珀。二人の瞳の色だ。そっと右手でさわると、少し落ち着いてきた。

控え室を出て、カサネと合流すると、かなり緊張しているのがわかった。顔色が少し青いし、こわばっている。

ちょっと考えてから、カサネの右手をとって、僕の胸にあてた。手先も冷たい。

ここから一つにつながろうと言うと、徐々に緊張がほぐれてきたようだ。今度は僕の右手をとって自分の胸に置く。二人の鼓動が段々同じになってきた。

最後に微笑みあったとき、僕たちはひとつになった。


あの《鏡の舞》は、普通じゃなかった。カサネと二人、神の領域に到達したようだ。いや、僕はカサネに引き上げてもらったんだ。神々の喜びを感じ、最後には暖かな光につつまれた。あれは光の女神だったと思う。

一生に一度の舞が舞えた事を、僕は誇りに思った。


僕たちの《鏡の舞》は、賞賛された。卒業まであとちょっと。肖像画のモデルは面倒くさかったけど、画家が話好きで、カサネと3人で楽しかった。もちろん、トゥーリア様のお茶会にもよばれてる。意外に忙しく、見習い生活はどんどん終わりへと近づいていった。


そろそろクロスに別れを告げるときがきた。カサネはしょげている。クロスにずいぶん懐いていたから、寂しいのだろう。

クロスはいつもと同じように、僕たちを送り出してくれた。

カサネとわかれ、神殿の廊下に誰もいなくなったのを確認してから、僕は、クロスの元に戻った。

「言い忘れたことでもあったかの?」

クロスは楽しそうに笑う。

「カサネには、内緒だよ。何年かしたら僕とカサネは呼び戻されるんだ。」

「ふむ、王と女王かの。」

「うん、でも、僕からもお願いしたんだ。カサネと一緒になるために。」

「…お主、意外と策士じゃのう。」

「自覚してる。」

ひとしきり笑いあった後、僕は再度クロスに送り出されたのだった。



認定式とそれに続くライト先生とカルラ先生の結婚式も無事に終了した。これで、僕たちは神官になったわけだ。

翌日、朝から新しい神官たちは、それぞれの任地へと旅立って行く。

ハーンはさっさと行ってしまった。ササラは、大神殿に残る。

僕とカサネは、途中まで一緒だから、同じ馬車で行くことにした。

先生たちや神官たちに見送られて、僕とカサネは大神殿に別れを告げた。しばしのお別れだ。


気楽な旅だった。のんびりと景色を見たり、おしゃべりしたり。御者はカサネの知り合いらしく、ちゃんと神官になれてよかったねぇ、などと話している。

フッセの町を出発する時、同じ馬車に乗り込んだら、カサネがびっくりしてた。本当なら、ここから、別れるはずなのだが、じつは、王と女王からカサネの父宛ての手紙を預かっていたのだ。

「え、私が渡すんじゃだめなの?」

「うん、僕ご指名。」

「ふ~ん?」

不思議そうな顔のカサネ。君と僕のことなんだよって言えるのは、何年先になるかなぁ?


もうドキドキしてきた。カサネのお父さんに会うのは、《鏡の舞》より、緊張しそうだ。

神様、僕に勇気を!


間章は終了です。

次回より第2章、教師編に入ります。

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