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3.旅にでるのは

大神殿の中を一人の女官が歩いている。今、アカネやカルラとの打ち合わせが終わったところだ。

彼女の名前はミオ。エルトゥーリア女王付の女官で、ヴァナート王の親戚でもある。小柄で童顔のため、見習いたちと同年齢くらいに見えるが、実際は20歳をいくつか超えている。


「ミオさ~ん!」

カサネが駆け寄ってきた。あとから、ササラも急ぎ足で追いかけてくる。二人ともミオを姉のように慕っているのだ。

「お仕事ですか?」

「ええ、お城と神殿合同のね。私は、連絡係。」

「あ、知ってる!日の隠れ里に神殿作るんでしょ?」

「よく知ってるわね。もう噂になってるの。」

「こんにちは、ミオさん。あの、日の隠れ里って王とミオさんの出身地ですよね?」

「ええ。」ミオはササラに微笑んだ。

「今度お話聞かせてくださいませんか?」

「いいわよ。」

「あ、わたしも、わたしも!」


そのまま立ち話をしていると、急に声をかけられた。

「おい、ミオ。打ち合わせはもう終わったのか?」

「カイ。」

ミオは振り返って目つきの鋭い大柄な男を見上げた。

「さっき、終わったところよ。神殿側の了解はとれたわ。」

「そうか。すまないな、間に合わなくて。」

「大丈夫よ。じゃぁ、両陛下に報告に行きましょう。」

そういうと、ミオはカサネとササラに暇をつげて、カイと一緒に帰っていった。


「きゃ~、生のカイ様見ちゃった!カッコいい~!!」

カサネは部屋に戻るなりベッドに飛び込み、枕を抱きしめた。

「相変わらずカイ様ファンなのね、カサネは。」

「当然よ!両陛下の親友で、南領主の次男で、近衛の団長、なんてすばらしいのかしら。それに漆黒の髪に鋭い群青色の瞳、きたえられた身体、ス・テ・キ…。でも、王領の総督になるっていう噂もあるし…。」

ササラは、カイのことは好きでも嫌いでもなかったが、これ以上カイの話は聞きたくなかったので、違う話題を振ることにした。


「それより、新しい神殿の話で、聞いたことがあるんだけど。」

案の定、カサネは興味を持った。

「え、何々?」

「女王の名代として、出身者のミオさんが行くらしいわ。で、神殿からも人を出すんだけど、その中に見習いも含まれるらしいの。それも下級生。」 

「へぇ~、誰になるんだろ?学年代表のササラか男子寮長のハーンじゃないの?」

「どうかしら?エドゥー商会が絡むらしいからミサキかもね。」

「え~、そしたらミサキ鼻高々でじまんしそう。やだな~。」

「誰になるにせよ、先生たちが決めることよ。出発も近いらしいし、発表も近いと思うわ。」


発表は次の日だった。

上級生、下級生とも集められ、日の隠れ里の神殿建立の正式決定通達、光の神殿への表敬訪問、南領の視察に女王名代としてミオが、神殿代表としてアカネが赴くことが告げられた。

「私のいない間は、カルラ先生が責任者です。尚、私の補佐として、カサネを連れて行きます。」

部屋中がざわついた。関係ない話だと思っていたカサネは、いきなり名指しされて固まっている。

「なんで、下級生のカサネなんですか?ササラやハーンならともかく納得いきません!」

声を荒げるのは、ミサキだ。

「上級生たちは、神殿の仕事に深く関わっています。連れて行けません。ササラとハーンは、カルラの補助につきます。」

「で、でも、なんでカサネ…」

食い下がるミサキをアカネがにらんだ。

「カサネを選んだのは、一番丈夫そうだからです。」


「えぇ~、そんな理由~~!?」

きっぱり答えるアカネに、カサネは叫んだが、それを見た全員がアカネの答えに納得してしまったのだった。


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