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22.陰陽の一対

カルラとライトは10年前に《鏡の舞》を舞った。その髪色から《陰陽の一対》と呼ばれ「千年に一度の舞い手」と讃えられる。共に優秀と認められて常人より若くして見習いとなった二人は、その時15歳と17歳だった。

いま、カサネは祭殿の入口に掲げられた二人の肖像画を見上げている。廊下にずらっと歴代の舞い手の肖像画が掲げられているが、入口の真上は最高峰の舞い手のみ許される。エルトゥーリア女王が当時是非にと望んだという。


「若いよね~、二人とも。」

「そうね、でもとてもしっかりしている。私たちよりも。」

カサネの目にはそういうササラもしっかりして見える。兄にはお前がしっかりしていないだけだと言われるが。

「来年には、カサネとスオウもここに飾られるのね。」

「う~ん、まだ実感が無い。」

「うふふ、楽しみにしてるわ。じゃ、私はここで。」

「うん、また後でね。」

当番に向かうササラと別れ、練習室へと向かった。


舞い手に選ばれてから一月、休みの日以外は毎日午後は《鏡の舞》の練習だった。もともと舞いは好きだし、スオウとの相性もいい。舞の練習については何も不安はなかった。いま、カサネが気にしているのはカルラのことだった。

ライトが来てから、少し落ち着かないなとは思っていたが、ここ10日ほど徐々に体調をくずしてきている。アカネもライトも気を配っているようだが…。

「大丈夫かなぁ、カルラ先生。」

カサネは扉の前で大きく息をすって、気持ちを引き締めると、練習室へと入っていった。


「カルラっ!?」

カサネの不安は現実になってしまった。練習途中にカルラが倒れたのだ。

「すまない、アカネ先生に知らせてくれないか。カルラの部屋にいる。」

ライトはカルラを抱きかかえると、足早に出て行った。


後に残されたカサネは不安そうにスオウを見た。

「カルラせんせー…。」

「ライト先生にまかせよう?カサネ。」

「うん…。」

スオウが、何か言いにくそうにしているので、カサネが待っていると、しばらくして口を開いた。

「あのさ…、カルラ先生、もしかしてつわりとか…。」

カサネはビックリして目を瞠った。

「ううん、それはないよ。先週体調悪そうな時に、えっと、その女性特有の周期だって言ってたから…。」

「そ、そうなんだ。」

「う、うん。そう。」

お互い目をそらし、顔を赤らめる。

「そ、そうだ。アカネ先生に知らせないと。」

「そ、そうだね。急がなくちゃ!」

二人は、急ぎ城のアカネのもとへと向かった。


アカネと共に神殿へ戻ってきた二人は、今カルラの部屋の前でアカネを待っている。

出てきたアカネに詰め寄ると、アカネが大丈夫だというようにうなずいた。

「もう落ち着いてぐっすり眠っています。今夜はライト先生がついていてくれますし、私も神殿に泊まります。」

今は会えないから食事に行きなさいと送り出された。


食堂は満員だったが、ハーンとササラが席を取っていてくれた。大まかな話を二人にし、よく味のわからない食事をそわそわと済ませたカサネとスオウは、カルラの部屋へと戻ってきた。

ノックに応えたのは、ライトだった。

「さっき起きたんだ。心配かけたね。さあ、入って。君たちの事を気にしている。」

部屋に入ると、カルラは起きてこちらを見ていた。カサネは枕元に駆け寄る。先程より顔色はよくなっていた。

「カルラ先生…。」

「ごめんなさい。心配かけてしまって…。よく眠れなかったのが、いけなかったみたい。少しお休みをもらうわ。」

「早く元気になって、もどってきてくださいね?」

カサネがお願いをした時、カルラの表情が変わった。

「ライト?」

すがるように扉の前のライトを呼ぶ。

「大丈夫。食器を返しに行くだけだよ、すぐに戻る。カサネとスオウもいてくれるよ。」

ライトの答えに安心するカルラ。いつも凛として立っているカルラがこんなに不安になるなんて。カサネとスオウは、カルラがライトに頼り切っていることに驚いた。

「カルラ先生、無理しちゃだめですよ?ニイナさんが手紙で言ってました。カルラ先生は何でも自分ひとりでやろうとするって。」

「あら、ニイナと文通してるの。」

「はい、光の神殿に行ったときからです。」

「まぁ、ニイナはちっともそんなこと手紙に書いてなかったわ。」

へ~、知らなかったとスオウも不思議そうだ。

「ふふ、私たちカルラ先生のことで意気投合したんです。」

穏やかに話していると、アカネと共にライトも帰ったきたので、カサネとスオウは退室する。


翌日見舞いに行った時には、ライトの徹夜の看病がよかったのか、カルラはベッドに起き上がって待っていた。


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