14.君を、想う
宵の館が見えてきた時点で、ミオとスオウが周辺の霧を一掃した。
この異変に、館の中、周囲の家の中から、村人が飛び出してきた。侵入者であるカイたちを排除するべく、攻撃してくる。
「カイ、殺さないでよ?」
「わかってるよ。」
「スオウ、カサネを守って。」
「まかせて。」
襲ってくる村人を、次々と戦闘不能にしていく。
「ミ、ミオさんも剣つかえるんだ。」
「旅してたときに、カイさんに習ったんだって。」
「あ、スオウ、あの子弓を持ってる。」
「了解。」
カサネの指示でスオウは風を操り、遠距離攻撃をする者から武器を奪い使えなくする。
「カイさん!」
シアとユキトが現れたときには、戦えるものはほとんど残っていなかった。
「貴様…!ゼントの次男か!?」
ユキトがシアの前に立つ。
「さぁ、義姉上を帰してもらおうか。」
カイが剣先をぴたっとユキトに向けた。
「させるか!キエはわたしの、我等のもの。我等の長。渡しはしない!勝負だ。」
ユキトは倒れていた男の剣をとった。
「よかろう、一対一の勝負だ。手を出すなよ。出せば王家の力がふるわれるぞ。」
カイが周りを威嚇し、最後にミオを見た。ミオはわかったとうなづく。
「そんな、カイさんもユキトさんも、やめて!」
シアが駆け出そうとするのを、女性たちが引きとめた。
「姫様、これはやらなくてはならない男の戦いなんです。」
「いくぞ。」
カイの声で勝負は始まった。ユキトもなかなかの使い手だ。勝負はなかなか決着がつかない。見守る者たちは、じりじりしてきた。
「このまま決着がつかないんじゃ…?」
「いいえ。」
カサネの疑問にミオが答える。
「よく見て。両者の技術はほとんど同じくらい。相手は力の足りなさをスピードでカバーしているけど、段々疲れてきてスピードが落ちてきている。」
見る見るうちに、ユキトは防戦一方になってきた。やがて、足がもつれ、横転する。カイがユキトに向かって剣を振り下ろそうとしたその時。
「やめてぇ!」
シアが止める手を振り払い、ユキトをかばって身を投げ出した。
「キエ、なぜ…?」
「義姉上…。」
「カイさん。お願い。この人を殺さないで。私は争いも復讐も望んでいません。もう、させないから。」
「キエ?復讐も一族の再興もキエが望んだことだ。だから、ずっとわたしは…。」
「キエはもういません。私は、ゼント公爵の長女、シアです。」
「…やはり貴女は私を必要としないのだな…。」
がっくりとうつむくユキトの手をシアはとった。
「だから、シアとして望みます。私と共に生きてください。」
「…キ、シア?」
シアはにっこりと笑った。
「あ、義姉上?」
さすがのカイも動揺がはげしい。
「この人のことを私が一生監視するわ。それならいいでしょ、カイさん。」
「いや、まぁ、そう言われれば…。」
うろたえるカイを、駆け寄ったカサネが押しのける。
「シアさん、また犠牲になろうなんて…!」
「ううん、私ね、ここに来たとき懐かしいって思ったの。私はキエとしての記憶はないけど、思いは残ってると思う。それでね、ユキトさんのこと考えるとね、懐かしくて胸があったかくなるの。キエはユキトさんのこと好きだったんじゃないかなぁ?」
にこにこと話すシアに、皆の前で思いっきり告白してますが、とは言えないカサネであった。
両親の説得が…とぼやくカイをなだめるミオ。気が抜けたら腰が抜けたカサネを支えるスオウ。一休みしましょうと、館に迎えられ、おばちゃんが嬉しそうに世話を焼いてくれる。ユーリも一緒だ。
村人たちも、ほっとした表情で家に戻ってゆく。
ユキトも館に向かおうとするが、シアが動かない。
「なにか?」
首をかしげるユキトをシアはちょっとすねたように見上げる。
「…まだお返事いただいてません。」
はっとしたユキトは、あわててシアの前に跪き、その手をとり口付けた。
貴女の望みが私の望み。私の命は貴女と共に―。




