表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/77

12.霧の中

スオウにつかまって馬の背に揺られながら、カサネは夕べの話を思い浮かべていた。

シアは、本当はキエという名で、宵の一族の長の娘だったこと。王女付の女官で、エルトゥーリアが身を隠していた間は身代わりをしていたこと。キエは事件のときに負った怪我が元で死亡したとされ、記憶を消してゼント公爵の養女にしたこと。

いろんなことを考えて、なんだか分からなって、スオウをつかむ手にぎゅっと力が入る。スオウが大丈夫かというように手をトンとたたいてくれたら、なんだか落ち着いて力みが抜けた。

私はシアさんを助けに行くんだ。それだけでいい。暖かいスオウの背中でカサネはそう決心した。


馬を駆ること7日。まだ、追いつかない。情報を集めながら進んでいるので、距離をつめられないのだとカイは言う。

そして久しぶりに小さな町に泊まった翌日。出発前にカイが宿の主人に話を聞いている。

「このまま道なりに行けばヤトに通じるが、途中霧の出やすいところがあるので、注意が必要だそうだ。」

「え~、霧?いやねぇ。」

「それと、霧の出るあたりから、商売にくる連中がいるそうだ。」

「なんだか嫌な予感がしますね。」

「気をつけるに越したことはないな。」

カイの言葉に気を引き締めて、一行は出発した。


「こまったなぁ。」

カサネが水を汲みに、ちょっとだけ休憩場所からはなれたら、あっという間に霧に囲まれてしまった。

「もしかして、ここが今朝言ってたきりの出やすい場所?」

もう皆のもとにつくはずなのに、一向に見えない。さすがにまずいと立ち止まる。

「スオウどこぉ?ミオさ~ん、カイさ~ん、ここです~!」

呼んでも誰も応えない。下手に動かないで、探しに来てくれるのを待とうと思ったとき、カサネの耳は足音をとらえた。

ほっとして足音のした方を振り返ると、12歳くらいの少年がいた。

「こども…。」

「おねーさんも充分子供だと思うけど?」

そういう声は、女の子のもので、よく見れば後ろで縛っている髪の毛も長い。

「あなたも迷ったの?」

気を取り直してそう聞くカサネに、その少女は笑った。

「違うよ、おねーさんをさらいにきたの。」

そう言って、すっとカサネに弓を向けた。



水を汲みに行ったカサネが帰ってこない。しかも霧が急に出てきた。スオウは、いつになくあせっている。

「ミオ姉、カイさん。カサネが遅い。しかもこの霧だ。迷っているかもしれない。」

スオウの訴えに二人も同意する。

「このまま動いたら、私たちが迷ってしまうわ。スオウ、風で霧を掃いましょう。」

二人がかりで、周囲の霧を一掃した。

「いない…。」

「待って、向こうの端に何か落ちてるわ。」

ミオの言葉にスオウが飛び出した。また広がってきた霧を風で吹き飛ばし、落ちていたものを拾い上げる。

「カサネが持っていった水筒だ―。」

追いついたカイが周辺を調べる。

「足跡が2つある。連れていかれたか…。」

カイの言葉に、ミオは顔をゆがめた。スオウは手の中の水筒をただただ見つめていた。



カサネは、ユーリという少女に弓で脅されながら、霧の中を歩いていた。少女の村に連れて行くのだという。私を攫っても何もでないというと、お金なんかいらないと言う。

「じゃぁ、なんで私をさらったの?」

「決まってるじゃん、おねーさんが一番弱かったから。それに利用できるってユキト様が…。」

「ユキト様?」

「長様の代理だよ。あ、兄さん!」

いきなり霧の中からカサネと同年代の少年が現れた。

「よくやったな、ユーリ。いくぞ、ユキト様がお待ちだ。」

少年と少女の間に挟まれて、カサネは霧の中を行く。前後にいる兄妹もかすむほどに霧は濃い。しばらくすると霧の中から家々があらわれた。集落に入ったようだ。

家というよりは館という表現の合う建物に入り、奥へと通される。

「ここだ、騒ぐんじゃないぞ。」

少年がそう言ってから扉を開ける。


「カサネさん!」

そこにいたのは、驚いた顔のシアであった。

「シ、シアさん!」

二人して駆け寄り、思わず抱きしめあう。8日ぶりの再会だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ