聖女と召喚師、二号泉を確保する
「えっ、ええええ……!?」
私は慌てて両手を身体から離した。
目の前で二本の針金がぐるぐると回転し始める。
まるで冗談のような反応の強さに、私だけではなく、ハイゼンも目を見開いた。
「うっ、嘘だろ!? こんなあからさまに反応が……!?」
「普通はない、わよね……こんな反応」
《スキル【源泉探知】により、源泉の場所を特定しました》
と――そう書かれたステータスウインドウが開き、私とハイゼンは目を丸くした。
「なるほど……源泉を探知できるスキルか。便利なものだな……」
「あはは……確かに。こんなこともできるんだ……」
あまりに万能な『絶対温感』に乾いた笑い声で笑って、私は自分の足元を見た。
何の変哲もない、ただの地面である。
岩の割れ目から湯が湧いているようでもなし、蒸気が噴き上がっているわけでもない。
本当に正真正銘、なんでもない森の中の、落ち葉の積もった地面であった。
「と、とにかく……ここに源泉があるみたいね」
「そりゃそうらしいが――どうやって温泉を掘るんだ?」
うーん、と私は難しい顔をしてから、結局考えるのをやめた。
「ハイゼン、スコップ出して」
私が言うと、ハイゼンががっくりと肩を落とした。
「やっぱり人力で掘るのか……」
「仕方ないでしょ。アダムたちが戻ってくるまでに温泉を見つけとかないと言い訳が立たないんだもの。つべこべ言わずに出せ」
もちろん、これで何百メートルも深い穴が掘れるわけはない。
だが遥か西日本の温泉では、砂浜を数メートルも掘ればどこでも湯が湧くとも聞く。
現状、何メートル掘れば温泉が湧くのか知らないが、やるしかないのだ。
ハイゼンはぶつぶつと文句を言いながら、棒きれで地面に魔法陣を書いて手を置いた。
「我が求めに応じてこの腕に寄り至り来たれや――《召喚》!」
ボン! と閃光が発し、年季の入った建設用スコップが二つ現れた。
どこぞの建設会社さん、ごめんなさい。
「――よし、とりあえずやるしかないわね」
「ああ、白魚のようだった俺の指が土に塗れてゆくなんて……」
「自分で白魚とか言うな気持ち悪い。いいから覚悟決めろ!」
私はスコップを持ち上げた。
よし、何が何でもやってやる。
私は温泉の聖女になるんだ。
そして人々を癒やして癒やして癒やし倒すんだ――!
その意気と共に、私はえいやっとスコップを地面に突き刺した。
その途端だった。
じわ、と溢れてきた水で、スコップの先が濡れた。
「え……?」
私が目を瞠った、その瞬間。
『スキル【温泉掘削】により、新たな源泉を開削しました』
そのステータスウインドウを突き破るようにして、水柱が噴き出した。
ボン! という轟音とともに、私の顔に水柱が吹きかかり、私はアッパーカットを喰らったように後ろに吹き飛んだ。
「あぽプ――!」
間抜けな声とともに地面に倒れると、ハイゼンが悲鳴を上げた。
「こ、コノヨ!? 大丈夫か!」
「熱ッぅぶひゃあああああッ! 目が! 目が煮えた! 目があああああ!!」
私は顔面を両手で覆い、サッカー選手のように地面を転がった。
転がったところに熱湯の雨がザブザブと降ってきて、私は矢も盾も堪らず、這いつくばってその場を逃げ出した。
「あ、熱い! 熱いぞこの水! な――まさかこれは!?」
「ぷぇっ、ぺぺっ! う、嘘でしょ……!?」
私はごうごうと唸りを上げて噴き上がる水柱を見た。
水柱は地上十数メートルまで噴き上がり、火山を背景に綺麗な虹がかかった。
「ま、まだ一発目なのに温泉が湧いた――!」
吹き上がる温泉を呆然と見上げると、しとどに濡れる私の視界にステータスウィンドウが乱舞した。
【名もなき野湯2号泉
浴槽名:名もなき野湯
源泉名:山岳地帯西側1号泉
泉質:アルカリ性塩化物泉
PH:9.1
湧出量:毎分150.3L
泉温:76.3℃】
【適応症:うつ病、神経痛、リウマチス、肩こり、筋肉痛、関節痛、うちみ、くじき、きりきず、慢性皮膚病、ニキビ、はだあれ、冷え性、ストレスによる諸症状、産後の体力回復、慢性婦人病、流石性兄様称賛症、異世界電子携帯端末依存症、致死性行軍異世界転生症、膵臓異食症、汎用能力性世界最強症、聖女能力万能症、八男病
禁忌症:急性疾患(高熱を伴う場合)、呪術疥癬】
《【絶対温感】のスキルにより、温泉から【源泉操作】を獲得しました》
《【絶対温感】のスキルにより、温泉から【飲泉指導師】を獲得しました》
《【絶対温感】のスキルにより、温泉から【温泉玉子マイスター】を獲得しました》
「面白そう!」
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「温泉行きたい!」
「ヌルッヌルの温泉大好き! 湯船の中で尻が滑るよ! すっごい滑るよ!」
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何卒よろしくお願い致します。
【追伸】
3/6ランキングで21位を頂きました!
現在もガンガン伸びてます!
この調子でこの作品をよろしくお願いいたします!!




