聖女と召喚師、次の温泉掘削を目指す
「しかし、本当にあんなことを約束してよかったのか、コノヨ?」
去ってゆくアダムの背中を見ながら、ハイゼンが不安そうに私を見た。
あの後、「数日中のうちに必ず人手を寄越す」と確約してくれたアダムは、お供を引き連れて急ぎ都に戻っていった。
人手の確保はできた。
後は全責任は私にある。
私が《シジルの聖女》になれるかどうかは、私の知識と工夫と熱意次第だ。
だが正直、私だって今後についてなにひとつ展望があるわけではなかった。
私はちょっと迷った後、言った。
「私にもわかんないよ。ただ、ここの温泉の効能は本物でしょう? 他にこれと同じような温泉が見つかるかどうかはわからないけど……やるしかない」
私が言っても、ハイゼンはあくまで不安そうだった。
「だがなコノヨ、お前にオンセンに関しての深い知識があるのはわかる。だがその場所をどうやって特定する? この通り火山地帯は広いんだぞ」
その懸念も当然私はわかっていた。
山肌から蒸気が噴出している場所はともかく、まさか山肌を闇雲に掘るわけにも行かない。
そしてここは異世界であるから、現代日本のように何千メートルもボーリングをするわけにも行くまい。
最初からある程度「ここだ!」と決め打ちして温泉を掘る必要があるだろう。
だが、秘策がないわけではない。
私はハイゼンに言った。
「ねぇハイゼン、これぐらいの長さの太い針金を二本なんだけど……召喚できる?」
私は両手を三十センチぐらいに広げて訊いた。
ハイゼンは皆目訳がわからないという表情で私を見た。
「針金――?」
「そう、針金。召喚してくれるなら凄く助かるんだけどさ」
「そ、そんなもん召喚してどうする? まさかそれで温泉を探そうとでも……」
「そう、その針金で探すのよ」
私が言うと、ハイゼンは私に正気を疑うような視線を向けてきた。
ハイゼンがなにか言う前に、私は懇願するように両手を合わせた。
「ね、ハイゼン! こればっかりは実際やってみないと説明しようがないことなのよ! お願い!」
「ま、まぁ、そこまで言うなら……」
ハイゼンが岩に魔法陣を描き、何やらブツブツと唱えると、ボン! と例の音が発した。
煙を手で掻き分けると、そこには私の指定した通りの針金が二本、転がっていた。
「これでいいか?」
「オーケーオーケー、太さも長さもバッチリよ。これをこうやって手で曲げて……」
私は一直線の針金の一端をグイッと手で捻じ曲げ、L字型にした。
もう一本も同じ形に曲げた私は、曲げた部分を手に持ってみる。
そのままみぞおちの辺りで構えると、思った以上にそれらしい格好になった。
「これでよし、と……」
「お、おいコノヨ。お前、真剣に頭おかしくなったのか? こんな針金が何を……」
ハイゼンが本気で不安そうな声を上げた。
確かに、こんな針金程度で温泉が掘り当てられるとは、さすがの私も思っていない。
ただ、【絶対温感】の中のスキル、【源泉探知】に目覚めた今なら――。
それは現代日本のそれよりも遥かに強い力を発揮してくれるかもしれない。
私はちょっと大きな声で言った
「ダウジング、っていうのよ。私の世界ではこれで地下水脈や温泉を探し当ててたの」
「面白そう!」
「続きが気になる!」
「温泉行きたい!」
「サウナで整う!」
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