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聖女と召喚師、皇子に出会う

「なんだ――?」




ハイゼンが顔を上げ、音に耳を澄ませた。

私も音の出処を探って森の奥を見ると、木立の向こうにちらちらと見え隠れするものがあった。


「えっ、アレ何?」

「ん? どこだ?」

「ほら、あそこ! 森の奥!」


私が指差した方向を見たハイゼンが驚いたように言った。


「あれは――竜の紋章……帝政エルナディアの騎士団の旗だ!」


ハイゼンの言葉に、私も思い出す光景があった。

数日前、アダムとかいうボロボロの騎士が着ていた鎧の徽章。

青地に白で染め抜かれた旗を掲げた、五騎ほどの集団。

それがこちらに向かって走ってきていた。


馬を降りた騎士の一人が、私に向かって手を挙げた。

その顔に見覚えがあった。




「コノヨ様、ハイゼン!」

「あれ……アダム!?」




私は声を上げた。

間違いない、数日前、この温泉に浸っていった、あの騎士だった。


「覚えていてくれましたか、コノヨ様! お久しゅうこざいます!」


爽やかな笑顔と声でそう言って、アダムは川筋の踏み分け道を上がってきた。

私の前に立つなり、アダムは私の両手を握ってぶんぶんと上下に振った。


「いやぁ、あの時は本当にありがとうごさいました、コノヨ様! 私のことを覚えていてくれたんですね!」

「忘れるわけないよ、まだ一週間も経ってないもん! それよりどうしたの? こんな山奥まで? 忘れ物?」


間抜けにそう訊ねた私に、アダムは白い歯を眩しく光らせて微笑んだ。


「それはもちろん、聖女様をお迎えに上がるためですよ!」


えっ、聖女?

私はアダムの顔をまじまじと見つめた。


「せ、聖女って……?」

「何を仰られるんですか、コノヨ様! 貴方様は《シジルの聖女》召喚の儀式で異世界から召喚された方だと! そしてその御業で私を癒やしてくださった! 貴方こそ《シジルの聖女》その人に違いない!」


私は次に、ハイゼンの顔を見た。

ハイゼンも驚いた表情で私の顔を見た。


「い、いやアダム。それはちょっと話が早いと言うか……」

「何を申されますやら! あの後、私は帝都まで寝ずに走って帰ることが出来たんですよ! あれが奇跡でなければなんなのですか!」

「え、えぇ……? 本当に走って帰ったの? マジで?」

「本当ですとも! さぁコノヨ様、下に馬車を待たせてあります! 積もる話は帝都で……」

「ちょ、ちょっと待てアダム!」


ハイゼンが私とアダムとの間に割って入った。


「おお、ハイゼンも久しぶり! あの時は世話になったな、礼を言うよ!」

「ま、まぁそれは今はいい……それよりアダム、お前、コノヨを迎えに来たとはどういうことだ?」


ハイゼンが目を白黒させて言った。


「どうして供を連れてこんな山奥まで来た? お前、騎士団の下っ端じゃないのか? 下っ端が迎えの馬車を用意したとは一体……」


ハイゼンがそう言ったときだった。


アダムの傍らにいた、ヘルムで顔を隠した人物の腕が電撃的に動いた。

シャッ! という鋭い音とともに、私の視界に銀色の光が弧を描き――。

気づいた時には、ハイゼンの首元に剣が突きつけられていた。


一瞬、私もハイゼンも事態を計りかねた。

きょとんとした表情を浮かべたハイゼンは、次の瞬間、自分の首元に添えられた剣を見て短く悲鳴を上げた。


「アダム皇子を騎士団の下っ端だと? 口には気をつけろ。次は遠慮なく首を飛ばす」


ヘルムの人物が放った低い声に、ハイゼンだけでなく、私も目を見開いた。


「えっ、お、皇子……?!」


私がアダムを見ると、ああ、とアダムが思い出したように言った。




「ああ――コノヨ様には一度も自己紹介していませんでしたね。私はアダム・エルナディアン。隣国のエルナディア帝国の第三皇子です!」




「面白そう!」

「続きが気になる!」

「温泉行きたい!」

「ババンババンバンバン!」


そう思って頂けましたら【★★★★★】で評価お願いします。

何卒よろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[一言] はーびばのん☆
[良い点] アダム一行のお迎えがやってきましたね。湯守としては温泉を離れるわけにはいかないでしょうが、皇子からのお誘いとあらば断るのも難しいですよね…ハイゼンもコノヨを取られると思って焦ったのか少々不…
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