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女神と始めるJKライフ! ~卒業式で死んだら美少女にされました~  作者: 橋本 泪
第二章 青浜高校には女神がいます
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第十話 モテたくて心理学を勉強すると、ハロー効果でまず絶望する

自己紹介というものは実に奥が深い。


短ければ十秒もかからず終わってしまう刹那的所業。


しかし。


言ってしまえばその刹那で第一印象が決まる。


心理学の研究では、第一印象で今後のその人の印象の六割から九割が決まるという。


そう。


この自己紹介でクラス内の立ち位置が、所属するグループが、果ては高校生活の行く末すら決まってしまうかもしれない。


一言で言おう。


恐怖である。


「緊張すんなって」


膝の上に座ったレビが、私の首に手を回しながら言った。


いや、何してんの?


この後キスする体制だよねこれ。


俺にまだアレがついてたら絶対勃ってたわ。


あぶねえあぶねえ。


ちょっと股間が熱い気もするけど全然問題ない。


「じゃ、一番からどうぞ」


興味なさそうに一番の子の方を指す先生。


それを受け、皆がそちらに向き直る。


やる気なさそうだけど大丈夫かなこの先生。


レビが勝手に移動しても注意しないし。


綺麗な女性だけど覇気を感じないっていうか……。


女性だよな。


あのー、あれが控えめだから、あのー。


「うぃぃーーーーっす! どうも、出席番号一番、アズマ太一でぇーーす! 小中とサッカーやってました! 一曲うたいまーーーーす!」


おーっと、待ってくれ。


中途半端に美形の陽キャ軍団幹部みたいな雰囲気だとは思っていたが。


「やってくれたな」


珍しくレビに同感だ。


一発目でなんだこいつ。


目立ちたいのは結構だが後続がつらいだろう。


「決めました!」


おお、びっくりした。


急にでかい声を出すのはレビの悪い癖だ。


「何が?」


「あだ名です」


「東君の? どんな?」


期待はしてないが一応聞いておこう。


「お調子」


「シンプル」


シンプルすぎるよ。


オリジナルソングなのか、まったく聞いたことのない歌を歌い終えたアズマ君に拍手喝さいが起き、うぇーい見たいな歓声も飛ぶ。


ノリがいいと言えば聞こえはいいが、クソ寒いノリである。


続く二番手。


場は温まっている。


コンビニのレンジくらい急速に、そして強引に温められただけだが。


次はえーっと、イリヤマさん。


女の子か、いいね。


乱れ切った場の空気を少し落ち着かせてくれ。


「出席番号二番! 入山杏子あんず! バスケ部入部予定です! では歌います!」


うーたいます?


えぇー……。


メンタル強者かよ。


この子は一軍確定だな。


黒髪ロングの活発女子って感じ。


目は細いけど美人、愛嬌もある、強い。


「決めましたよ!」


……聞いてほしいのか。


さっき微妙だったしなぁ。


「なに?」


「ノリがいい」


「それはあだ名ではない」


俺たちがくだらないやり取りをしてる間にも自己紹介は進む。


次は三番ウエノさん。


「どーもー。西中学校から来ました、上野陽菜でーすぅ」


なんかふわふわした喋り方だな。


ふわふわ天然女子か。


見た目もふっわふわ。


甘い茶色のショートカットに空気がふっわふわ。


まさにエアリーヘア。


「じゃあ歌いまーす」


歌うんかい。


……めちゃくちゃうまいし。


力強いタイプかい。


「ふわふわ天然」


だからあだ名になってないって。


「よ、四番、内山愛理ですっ。う、歌います」


無理するなって内山さん。


あなたはこちら側の人間でしょう。


常識人でしょう。


分かりますよ、私には。


顔真っ赤ですもの。


「あー、申し訳ないが時間ないからもう歌はやめてくれ」


先生ナイスアシスト。


頼りないとか思ってごめんなさい。


「苦労人」


うん、そのあだ名はあながち間違ってないと思う。


「五番、江口俊充としみつ、よろしく」


あー、まるで前世の俺。


「陰キャ」


「おいやめろ」


それは俺に効く。


次は六番、廊下側の列の一番後ろ。


クラスの視線が熱いものに変わった。


彼が立ち上がる。


おお、でけぇ。


「北中から来ました、扇美おうぎみ蓮です。えっとー、スノボとダンスやってるんで部活には入りませんが友達ほしいです。よろしくお願いします」


ワーッとクラスが湧き、拍手喝さい。


これがイケメンの力か。


さわやかだけど大人っぽさもありセクシーだ。


あれ、なんかテンション上がってきた。


なぜだ。


もしかして、恋?


……なんつって。


一人乗りツッコミってつらいね。


「面白いですね」


「それがあだ名?」


レビは首を横に振った。


「イケメンに熱い視線を送るのは女性だけじゃないんですね」


あー、確かに。


周囲を見渡すと女子だけでなく、男子も彼を真剣に見つめている。


まあその理由はわかっているんだが。


「ああいう一軍確定のやつには男も寄ってくるんだよ。クラス内でより高い地位を得るために」


「なるへそ」


クラス全体を見ても上位のカッコよさ、このクラスの筆頭モテ主の一人だな。


そしてついに俺の番だ。


「……あのー、どいて? 立つから」


レビは、まあまあとでも言いたげなジェスチャーをしてからひと言。


「あ・だ・名」


「いや、レビのあだ名ピンとこないしな」


「ほら次、オウシキー」


先生が俺の名前を呼んだ。


ちょっと強引にレビをどけ、立ち上がる。


おっと、声がひっくり返ってはまずい。


水を飲んでおこう。


「ねーえ、聞いてくださいよー」


……ちょっとかわいいじゃねーか。


やっぱり男はこういうのに弱いもんです。


「わかったって、早く言えよ」


「彼のあだ名は」


喉の乾きが収まらない。


へっ、緊張してやがるぜ、情けねぇ。


もう一杯水を飲んでおこう。


「脳チ〇コです」


「ぶげっほぉぇ!」


俺は口に含んでいた水を勢いよく吹き出した。


そしてその水は、見事な放物線を描きアズマ君の顔面をとらえたのであった。


自己紹介とは刹那の所業。


たった十秒で第一印象が、印象の六から九割が決まる。


こうして俺の二度目の高校生活は、最悪のスタートを切ったのでした。

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