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第二十六話 魔眼に隠された真の力

※十月一日 文末に数行加筆しました。

 魔力試験の翌日、朝食を済ませた僕はさっそくノア先生による魔術の授業を受けることになった。場所はいつもの授業と同じで、僕の部屋で行っている。だが、いつもとは違い今日の生徒は僕以外にも存在した。

「よろしくお願いします!」

 やる気満々でノアに挨拶しているのはトーニャだ。今日は特殊魔術についての授業をするそうなので適性があるトーニャにも声をかけたら、大喜びでついてきた。というのも、エレナからノアが父以上の魔術師だと教えてもらい、興味を持ったらしい。そのエレナも何故か僕の隣でノアの生徒として授業を受けている。

「そういえば、エレナも一応僕の教師役だったよね?」

 よい機会なので前から気になっていたことを聞いてみた。

「そうですよー。魔術と一般教養はノア先輩の担当ですけどねー。」

「……エレナの担当は何なの?」

 子供に対する教育ならノアの担当に大体含まれている気がするんだけど。やはり、向いてないせいで教師役をはずされたのだろうか。

「何だか失礼なこと考えてませんか……?私の担当は体術や剣術ですよー。あと、リオ様には魔装の適性もあったのでそっちもですねー。まあ、始めるのは数年後、身体が成長してからですけどー。」

「おお、なるほど!」

 ようは体育教師ってことだね。何だかとてもしっくりきたので何度もうなずいていると、エレナは少し不服そうな顔をした。




「今日はお二人の特殊魔術が何なのかを調べます。」

 ノアの授業はそんなセリフから始まった。

「はい!どうやって調べるんですか!?」

 トーニャが元気よく手をあげてノアに質問した。

「特殊魔術は遺伝する場合が多いので、過去にボーティス家の人間が発現した特殊魔術から該当するモノを探します。」

 ノアはどことなく嬉しそうにそう答えた。たぶん、可愛い生徒が増えて嬉しいのだと思う。

「それって、前に言ってた魔眼のこと?」

「リオ、質問するときは手をあげなさい!」

「……ごめんなさい。」

 僕が手を挙げずに質問するとトーニャに怒られた。トーニャは家庭教師ではなく、子供を対象とした塾の様な所で普段は勉強しているらしい。たぶん、そこで教えられたことを実践しているのだろう。トーニャは僕に対しては何かとお姉さんぶろうするのだ。呼び方も姉を指定してきたし、弟の様に思っているのだろう。

「リオ様の言うとおり、魔眼も含まれます。他にも特殊属性魔術が何種類かあります。可能性が高いのはその辺りですね。」

「特殊属性魔術って何?」

 初めて聞く言葉に、今度はちゃんと手を挙げて質問した。それを見たトーニャは満足そうに頷いている。

「属性魔術は炎、水、土、風の四属性を生み出して操る魔術ですが、特殊属性魔術というのはこの四属性以外の属性を生み出して操る特殊魔術のことです。」

「それって、ノアが使ってた氷の魔術のこと?」

 アンの動きを止めた氷を思い出す。あれはノアの言った四属性とは少し違うように思った。だが、僕の考えは間違っていたようだ。

「あれは属性魔術よ!水と風の属性を融合させてるのよ!」

 そう言ったのはトーニャだった。それを聞いたノアとエレナが感心したような顔をしているのでどうやら正しいようだ。

「よく知ってますねー。」

「見たらなんとなくわかったわ!」

 トーニャが胸を張って言った言葉に、ノアとエレナは顔を見合わせた。

「ノア先輩、これってあれじゃないですかー?」

「そうですね。まさか、調べる前に判明するとは思いませんでした。」

 二人は何か心当たりがあるようだ。

「何かわかったの?」

「はい、トーニャ様の特殊魔術が何か分かりました。」

「ホント!?」

 ノアの言葉に、思わずといった様子でトーニャが身を乗り出す。僕にもトーニャの特殊魔術が何なのかわかった気がする。さっきのトーニャの発言で二人が気付いたということは恐らくあれだろう。

「はい、トーニャ様の特殊魔術はボーティスの魔眼だと思われます。あの魔眼は魔力を視覚的に捉えることができるモノですから、一目で属性融合を見抜いたのならボーティスの魔眼で間違いないと思います。」

「よかったですねー、トーニャ様。ボーティスの魔眼があれば属性魔術の上達速度がかなり上がるってロベルト様が言ってましたよー。」

 二人の反応からすると、ボーティスの魔眼はかなり有用な特殊魔術のようだ。

 だが、大喜びするかと思っていたトーニャは俯いたまま顔を上げない。何か魔眼が気に入らない理由でもあるのだろうか?

「トーニャ姉様、どうかし――――――」

「やったわ!」

 心配になり、トーニャの顔を覗き込もうとしたとき、トーニャは満面の笑みを浮かべて顔を上げた。……どうやら喜びを噛みしめていただけのようだ。

「よかったね。もしかして前からボーティスの魔眼が欲しかったの?」

 僕が声をかけると、喜びのあまりアンの様にプルプルと震えていたトーニャはピタリと動きを止め、僕に振り向いた。あ、何言ってんだこいつって顔してる……。

「当たり前でしょ!ボーティスの魔眼は属性魔術師なら誰でも欲しいものなのよ!」

「そうなの?」

「そうなの!魔力が見えれば属性融合がすっごく上手になるのよ!すごい属性魔術は属性融合が必要だから、ボーティスの魔眼はすごいのよ!それにボーティスの属性魔術師で魔眼を持ってる人は皆すごく強いのよ!わかった!?」

「……とりあえずすごいことは伝わったよ。」

 トーニャが捲し立てるようにボーティスの魔眼について熱く語ってきた。


「でも他にもボーティスの魔眼のすごいところは他にもあるわ。」

「何?」

 僕も魔眼は欲しかったけど、理由はカッコいいからという単純なものだ。トーニャがこれだけ喜ぶということは何か隠された能力的なものでもあるのだろうか?ちょっとワクワクしてきた。

「本気で使うと目が赤くなってとってもカッコいいのよ!」

「何それ僕も欲しい!」

 「ふふーん、そうでしょう!でも、リオも持ってるかもしれないわ。早く調べましょう!」

「うん!」

 

「……あのー。」

 トーニャと共に盛り上がっていると、エレナが声をかけてきた。何故か苦笑いしている。

「どうしたの?」

「リオ様の目は元から赤色なので意味ないと思いますよー?」

「「あ」」

 

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