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静寂
「なっ、なんと!」
ふたたび眼鏡の天狗は驚きの表情を見せた
「持っておらぬ、と仰せで。それで、この苦楽魔の結界にやってきたとは、なんと大胆不敵、傲岸不遜、面張牛皮! まさに、一大事にございますな。よろしゅうございます、それでは、そこの薄桃色の書類に必要事項を記入して、写しを三通作成してください。それが終わったら、三番の窓口に出頭して、こことここに認可印を押していただきます。あと、七番と十二番の窓口で必要事項を記入して……」
「おいおい!」
紐を握った天狗は呆れた。
「そんな面倒な手続き、必要なのか? 先週までは、もっと簡単だったぞ!」
「申し訳ございませんが、つい先週、窓口業務の改善がなされまして、必要な書類の数が増えました」
時太郎は我慢の限界だった。
「おいっ! おれたちの話を聞けよっ!」
時太郎の声は部屋の中で響き渡った。
ぴた、とそれまで引っきりなしに立てられていた打鍵を打つ音がやんだ。天狗たちは驚きの表情を浮かべ、時太郎を注目している。
「おれは、河童淵からきた時太郎! 水虎さまの〝お告げ〟でこの苦楽魔にやってくることになったんだ! それなのに、いきなり縄を掛けるなんて、ひどいじゃないか!」
しーんとした静寂が支配している。




