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騒音

 建物の中に入ると、けたたましい騒音が耳を打つ。


 がちゃがちゃ、ばたばたという連続音が、ひっきりなしに部屋を満たしていた。


 広大な床に、見渡す限り床机しょうぎが並び、その前に百人を越す天狗が座って、なにかの機械を操作している。

 機械には無数の打鍵キーが並び、天狗は忙しげに、打鍵を叩いている。かちゃかちゃと打鍵を打つと、機械からは紙が吐き出される。


 文字打出鍵盤タイプライターなのだ。


 時太郎とお花を引き立てた天狗は、その床机の一つに二人を連れて行った。目にも止まらぬ速さで打鍵を打ちまくっている天狗に声を掛ける。

「おい! ちょっと……たのむ!」

 かちゃかちゃかちゃ、と打鍵をひとしきり打って、その天狗は顔を上げた。鼻にはちょこんと眼鏡を掛けている。その眼鏡を直し、上目遣いになった。


「はい、何か?」


 両手を組み合わせた。

 紐を握る天狗は口を開いた。

「こやつら、もしかしたら他国の間者かもしれぬ。急ぎ取り調べをしたいので、申請をしたいのだ」

「間者! それはまた、容易なりませぬ話でございますな!」


 眼鏡の天狗は大仰に驚いて見せた。


「それでは申請書類として、被疑者の通行手形パスポート査証ビザを拝借いたしたい」

「それが二人とも、持っておらぬと申すのだ」

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