第十七話 三者三様
美羽とのデートの後、朔弥は自宅に着いた。
ソファに寝転がりながらクロと話す。
「クロ、思いやるって難しいな。」
朔弥のテンションがいつもより低い。
『主、デートは失敗したのですか?』
「いや、美羽は喜んで帰っていったよ。」
『では何がダメだったのですか?』
「俺、しっかりエスコートできてなかった。」
『でも、気を遣っていた事は、向こうにも通じていたのではないでしょうか?』
「確かに『気を遣ってくれてありがとう。』とは言ってたよ。」
『ならいいでしょう。悪い方には取られてないのですから。』
「なんか納得できないんだよなー。」
休み明けの学校。
校門の手前で美羽の姿が見えた。
「おい、美羽。」
美羽が、振り向きながら返事をする。
「あ、朔弥くんおはよ。」
「おはよ。」
「嬉しいなぁー。朔弥くんに美羽って呼ばれるの。」
朔弥は少し複雑な表情をした。
「そうか?でもクラスのみんなどう思うかな?」
「え?」
「だって名前で呼ぶんだぜ、付き合ってるの?って聞かれそうじゃない?」
美羽は小さい声で言った。
「私はそれでもいいんだけどなぁ……。」
「ん?なんて?」
「んー。何でもない。」
美羽は笑顔ではにかんだ。
ある休み時間。
「美羽、ちょっといい?」
「どうしたの?朔弥くん。」
ざわざわ…
クラスがざわめき出す。
貴文がすぐ反応を示す。
「桐谷が美羽って呼んだよな?」
友達も続く。
「早乙女さんも朔弥くんって呼んでたよ?」
「二人付き合ってたりして。」
貴文が一気に不機嫌になる。
「つ、付き合ってるだと!僕の美羽と!」
「いや宮園くんのじゃないけど……。」
「う、うるさいな!くそー!桐谷のやつー!」
昼休みになると美羽と朔弥の周りには、人だかりができていた。
「付き合ってるの?いつから?」
鬱陶しくなった朔弥は席を立つ。
「お前らなー、そういうの無いから。」
朔弥は教室を出ていった。
美羽の方も一緒だった。
「ちょっと美羽ー、男子から名前呼ばれるの初めて聞いたけど?」
美羽は両肘を机に突いて手のひらに顔をのせる。
「えへへー。いいでしょー。」
「桐谷くんのこと好きなんでしょ?」
友達は疑いの目で美羽を見ながら言った。
「わかる?」
友達が頭を抱えながら首を振る。
「もう。美羽ったら天然なんだから。桐谷くんは美羽の事、どう思ってるんだろうね?」
「んー、私はどっちでもいいんだ。片思いでも。」
美羽は座ったまま脚を交互に振る。
「何で?両思いがいいに決まってるじゃん。」
「いいの。私は朔弥くんの事が好きなんだから。」
「美羽のそういうとこ分かんないわー。」
友達はため息をついた。
その頃、朔弥は一人校舎の外にいた。
イヤホンをつけクロと話す。
「はぁー、やっぱりだよ。」
『どうしました、主?』
「美羽が名前で呼んでって言うから名前で呼んだら、みんなが二人は付き合ってるの?だって。」
『主はそういうやりとりは嫌なんですか?』
「しつこいのはな、好かねぇ。だから外にいる。」
『主、思いやりを忘れてはいけません。美羽さんを傷つけないようにして下さいね。』
「それはわかってる。つもり……。」
教室に戻った朔弥と美羽が鉢合わせする。
「あ、朔弥くんどこ行ってたの?」
「ん?外だよ。」
そう言うと、自分の席に座って肘をつく。
(どうしたのかな朔弥くん……。)
「桐谷くん。」
朔弥の元に優介がやってきた。
立ててた肘を戻し体を起こす。
「お、中野くんどうした?」
「今日さ、学校終わりに遊ばない?この間のお礼もしたいし。」
朔弥は親指を立てて合図を送る。
「いいよ。俺もちょうど気分転換したかったから。」
その日の放課後。
美羽が朔弥に声を掛ける。
「朔弥くん、一緒に帰ろー。」
「ごめん、今日は中野くんと帰る約束してるからさ。」
朔弥は優介の元に走って行った。
(朔弥くん、私避けられてる……?)
美羽は不安を抱えたまま一人で帰った。




