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罪と罰

△ 無力という罪、喪失という罰 ▽


「爺さん!」


随分安らかな顔で逝きやがって……。

まったく……。

瞼をふさいでやる。


「うおおおおおお!」


「女子供の逃げられる時間を稼ぐぞ!」


鼓舞された多くの町人が、前に出る。

狂戦士は無慈悲に彼らを殺害していく。

こちらも応戦するも、出撃できる数も少なく、対人向きではない投擲士のみである。


「絶対娘たちは守ってやるぞ!」


一際大きな声の持ち主は、材木屋の親父だった。

娘の命を助けた所、社建設に力を貸してくれた人だ。

俺にとっては恩がある。


その娘は、村人の集団の後方にいる。

町人は怯むことなく再度突撃を決める。

狂戦士たちは、その勢いに飲まれ、多くの命を散らす。

しかし、突撃した町人たちにも大きな被害がでている。


「とーちゃん!クーちゃん!」


悲鳴にまざり、後ろから、娘の声が聞こえる。

別方向から、攻めてきた狂戦士たちに、挟みうちにされてしまったようだ。

後ろにも狂戦士があらわれ、女子供を次々にひねり潰していく。


「と、ちゃん。く、ちゃん」


命は運命づけられてしまっているんだろうか?

助けても、その命は、すぐに失われてしまう。


幼い娘は、首の動脈を食いちぎられ、血を噴水の様に上げて倒れていく。

その眼には涙が浮かんでいた。

これが戦争だ。

この不条理な運命に逆らえる者は、そうそういない。

その小さな命を再び救う事ができなかった。

彼女が何を願おうが、命が終われば、それは空に消える煙のごとき儚いものだ。

俺は、俺は神なのに、この不条理な壊滅に立ち向かう事が出来ない……。


木材屋の親父は、その光景を反らすことなく、目で捉えていた。

その手にいくら力をこめても、それは取り戻す事はできない事を、知りながら。


親父は、向き直り目の前の敵を倒していく。

娘と同じ運命の人を、一人でも減らすために。


町人の状況は明らかに不利である。

挟撃されたら、訓練を受けている兵ですら混乱するのに、町人では悲鳴が後ろから上がった時点で、統率力がなくなる。

ある者は、後ろの妻子を守る為に、前線を離脱する。

その影響で、前線の一点が破られ、側面からも攻撃を受けるようになってしまう。

ある者は、その混乱に気力を失い。無駄にその命を散らす。

また、ある者は、どうにか逃げようと、他人を押しのける。

反動で、転倒した人は、踏まれ圧死してしまう。

とにかく混乱によりすでに、勝敗は決してしまった。

数千人の狂戦士の前に、一万あまりの町は、壊滅させられたのである。

通常防衛側は、非常に有利であり、数倍の軍で攻めなければ陥落させるのは難しい。

しかし、それを成し遂げた。特に奇策を使ったわけでもなく。正面から少数で潰してきた。


木材屋の親父が、狂戦士を道連れに、その命を散らした瞬間に、背後から攻撃をうけて、意識が召喚したクーから離れて、自分に戻ってくる。

全身の不快な湿り気により、恐怖と興奮により、大量の汗をかいているのが分かった。


「無力だった……そしてその罰がこれか……」


【共感覚】による、死による恐怖の余韻を感じる。そして思うのだ。

いつこの社に敵がいつ来るか分からない。


「守らなくては、そして奪還しなければならない」


外で、震える村人を、疲れが見えるルカとルナの顔を窺いながら、思いが自然と口にでる。


俺にだって守りたい者はいっぱいいる。

力がほしい。

何人(なんびと)も寄せ付けないほどの強大な力がほしい。

たとえどんな手を使っても。


翌日、【柏手の音】によるスキルポイントの増加量が、一万以上減少した。

人々の思いが数字となってあらわれる【柏手の音】は、その分減ってしまうと胸に熱いものを感じざる負えない。俺を慕ってくれた人たちが居なくなる感覚。

決して忘れてはならない。他者から力を与えられる俺にとっては、その与えてくれる人たちは、俺が思っている以上に大切なものなんだ。


ルカやルナを同じ目に合わせてたまるものか!

ここに避難してきた村人たちに、家を与えなければ、そしてここを門前町として完成させる。それから、防御力を上げなければならない。そして、奴らの正体を暴かなければならない。

あの規模のベルセルクを生み出すのは、人の所業ではない。

恐らくあれは、他の神の仕業であろう。

神の所業ならば、同じ神として叩き潰すしかあるまい。

情報は、おそらく岩戸に尋ねてきたあの老人に聞けばわかるだろう。


スキルポイント《510000》

敵対勢力を叩くには十分なポイントストックはある。

町を奪還する。

ベルセルクを一人残らず壊滅させてやる!

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