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Crafter  作者: 絶英
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天国世界 3. 無力

 4体の大天使は横に並ぶと、床に鎮座する。数秒後、大天使ウリエルが立ち上がった。

「1体ずつ来るぞぉ!」

 大天使ウリエル。全体的に薄暗い色の甲冑を身に着け、羽は灰色に近い色である。手には紋章が刻まれた大剣を持っている。ウリエルは大剣を振り上げそれを地面に叩きつける。前衛には届かない距離である。ただの威嚇だろう。そう思った。

「ガハッ」

 隣のプレイヤーから呻き声が聞こえた。俺は恐る恐る横を向く。頭から股にかけて直線が入っている。このゲーム特有の切り口の突き方である。裂けたりはしないが切られたところにオレンジ色の線が入るのだ。なぜ、隣のプレイヤーにそれがついているのか? 周りを見るとそのプレイヤーの真後ろにいたプレイヤーにもそれがついていた。

 2人のプレイヤーがポリゴンの欠片となり消えていった。

「衝撃波で一撃だと……」

 えびすはそう呟いた。衝撃波? つまりはあの振るった剣から衝撃波が出てそれが当たったというのだろうか。確かに地面には衝撃波が通ったかのように地面が抉れている。だが、間接的攻撃で一撃というのは聞いた事が無い。

「厄介な奴だ。さっさと倒すぞ!」

 ハッと気づくと俺は地面に剣を落としていた。怖いに決まっていた。

「止まったら死ぬぞぉ! 前衛は止まらず突っ込めぇ」

 ゆっくりと剣を拾い走り出した。

 前衛はウリエルに突撃すると足の部分を囲った。足元に剣はふれまい。そう思ったが間違いだった。

 ズドンと言う音とともに剣が地面に突き刺される。直撃したプレイヤーはポリゴンの欠片となり消えていった。

 それを目の当たりにしても俺は剣を振るった。なぜか、ウリエルは殆ど動いてこないので前衛と後衛で集中攻撃で倒すことが出来た。前衛は最初の2人、後衛は1人死んだ。

 次に動いたのは大天使ラファエルだった。

ラファエルは白色の羽と黄緑色の服を纏っている。武器は一切持っていない。

ラファエルは立ち上がると少しずつこちらに寄ってきた。そして縮んだ(・・)。大きさが10メートルぐらいに小さくなったのだ。

「どういうことだ……?」

 俺は絶句する。

 そして、それ(・・)が起こったのはその1秒後ぐらいだった。目の前にいたはずのラファエルがいなかったのだ。ラファエルを見失った次の瞬間後方で断末魔が聞こえた。

 後ろを振りかえる。そこには、後衛に拳を振り下ろしていたラファエルの姿があった。拳が直撃したであろうプレイヤーが吹き飛ばされている。HPは保っているようだが瀕死状態だ。

「なぜだ……。後衛の救出を最優先だぁ!」

 えびすさんはそう叫び、前衛が後衛の救出に向かった。前衛の全員が後衛の方にいるラファエルに目を向ける。だが、そこにはラファエルはいなかった。

「どういうこ――――」

 えびすが何かを言おうとしたときその声が途中で止まる。何かの気配を感じそちらの方を振り向く。そこにはえびすの体を手でつかみあげたラファエルがいた。

 バギバギという鈍い音ともにHPがみるみる減っていく。

 助けないと……。そう思うのに体が動かなかった。

「誰か、たすけ…………」

 ラファエルの体からポリゴンの欠片が飛び散る。

「えびすさぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

 プレイヤーの中の誰かが叫ぶ。

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」

 さっき叫び声をあげたと思われるプレイヤーが集団から飛び出しラファエルに切りかかる。能力補正のかかった巨大なジャンプで敵の顔を切り裂く。ラファエルのHPが微かに減っている。だが、ジャンプの浮遊中ラファエルに足を掴まれる。そして、物を投げるかのようにラファエルはプレイヤーを壁に向かって放り投げる。そのプレイヤーは気絶しており立てそうにない。そんな無防備なプレイヤーに向かって、ラファエルはゆっくりと近づく。

 ラファエルの次の行動が読めた俺は咄嗟に走り出す。

「やめろ!」

 そんな声も届くはずがない。ラファエルは拳を振り上げ、そして無慈悲に叩き落とす。プレイヤーのHPバーは吹き飛びポリゴンの欠片となり四散する。

「くそおぉぉぉぉぉ!」

 俺はバッとジャンプしラファエルに向かって剣を振るう。だが、前方にいたはずのラファエルはいない。それと同時に後方から凄まじい衝撃が来る。

「がはっ……!」

 衝撃に押され地面に叩きつけられる。ラファエルは後ろに瞬間移動しており後方から殴られたのだ。

 体力は、Lvのおかげなのかまだ半分残っている。

 なんで誰も援護に来てくれないんだ……? 前衛がいる方に目を向ける。そこには絶望の眼差しをしたプレイヤーがいた。ココロは? WanKAは? BeBeは? Shiroは? 俺を見捨てたのか?

 ラファエルがもう一度拳を振り上げる。とどめの一撃である。

 まだだ……。まだだ……。まだだ……。

 拳の攻撃を剣で防ぐ。ラファエルは、攻撃が防がれたとわかるともう一度拳を振り上げ振り下ろす。隙があったのだが体が痛んで動けそうにない。

「うぐっ……!」

 剣から手に強烈な衝撃が伝わる。受けれて後3回……。死を覚悟していた時遠くの方で声が聞こえた。

「ユウ君!」

 ラファエル向かって矢が飛んでくる。正確な射撃ができていない。ことごとく外れている。ラファエルは矢の飛んできた方を向く。

「ユウ君だいじょ――う……ぶ……?」

 ドスッと言う音と共にShiroは壁めがけて吹き飛ぶ。俺の目の前にいたラファエルの姿はもうない。別方向からの攻撃を確認したラファエルはターゲットを変えたのだろう。結構単純である。

 俺は何とか立ち上がりShiroの方に移動したラファエルに向かって走る。ラファエルは背を向けている。俺は直前でジャンプしラファエル背中向かって剣を振るう。出来る限り連続で攻撃を与える。5連続は攻撃を与えただろうか。HPが2割減っている。ウリエルに比べると体力が大分低い。

 背後からの攻撃を食らったことにより怯んだのかラファエルは動かなくなる。これは大きな隙だ。地面に着地後もう一度大きく飛び、次はラファエルの首に向かって連続攻撃を仕掛ける。5連続の攻撃でさらに2割HPが減る。残り6割。厳しい戦いだがこのままいけば押し通せる。さらに動かなくなっていたプレイヤー達がようやく動き始めた。勝機はこちらにある。

 ラファエルの欠点はターゲット以外の攻撃を食らうとその攻撃をしたプレイヤーにターゲットを移ることだった。これは、戦っていて分かったことだった。後半からはこの特性を使った連携攻撃でHPを減らし勝利に漕ぎ着けることが出来た。

「はぁはぁ」

 ラファエルを倒し、俺は後衛の後ろで控えている回復支援のでポーションで回復していた。

次に襲ってきたのは大天使ガブリエルである。残念ながらさっきの戦いでかなりの消耗をした俺とShiroは後衛に下がり回復している。

 大天使ガブリエルは白い服を着て、杖のような物を持っている。今までの近距離系攻撃

とは違い聖属性だと思われる魔法を使ってくる厄介な敵だ。また浮遊していることが多くこちらの近距離攻撃がまるで当たらない。頼りは弓矢ってことだ。魔法のパターンは浮遊中に直進する光の弾を放ってくるものと、ガブリエルの周囲10メートルぐらいに光の魔法陣が発生してその範囲内にいたプレイヤーにダメージが喰らうというもの、後は突然頭上より光の剣が降り注いでくる回避不可の鬼畜魔法である。が、ダメージはそれ程でもないので問題はない。

 現在はガブリエルとの死闘が繰り広げられている。

「そういえば、ありがとな」

 俺はShiro に向かって言う。ラファエルに追い詰められていた時Shiroが来なければ俺は確実に死んでいたはずだ。

「遅くなってごめんね……」

 Shiroは申し訳なさそうに言う。

 

 グオォォォォォォォォ


 Shiroと話している途中に戦場の方からモンスターの鳴き声が聞こえる。俺はそちらの方を振り向く。

「ガブリエルを倒したのか」

 ガブリエルは地面に倒れこみゆっくりと散っていく。

「さぁラストだ。俺たちも行こう」

「うん!」

 俺たちは大天使ミカエルを倒すために戦場に戻った。

 大天使ミカエル。風貌はウリエルとそう変わらない。が、白色の鎧を纏っている。手には細剣を装備している。これもどんどんと縮まっていき10メートル程になる。

「最後だ。サクッと終わらせて帰ろうぜ」

 誰かがそう言った。そして前衛部隊は突撃していく。俺も一緒に突撃する。

 ミカエルのいる地点に到達する前に戦闘は起こる。凄まじい速さで移動してきたミカエルが前衛プレイヤーの1人を細剣で切り裂く。移動中で完璧に不意を突かれていた。そのプレイヤーの体力の8割を消失する。

「体力が少なくなったら構わず撤退しろ!」

 俺はそう言った。だが、遅かった。

「あっ……」

 撤退する前に既にミカエルの2回目の攻撃が瀕死状態であったプレイヤーに直撃した。一撃で8割減る攻撃である。2回受ければどうなるかは予想がついた。

 ポリゴンの欠片となり四散した。

「短期決戦だ! 全員攻撃!」

 誰かがそう言い、前衛部隊は攻撃を開始した。


 あれからどのくらい経っただろうか。ミカエルは防御力に優れておりこちらの攻撃が殆ど通らないのだ。だが何とかミカエルの残りHPは0.5割にすることができた。

 俺はミカエルの攻撃を受け少し退いてポーションで回復していた。Lvの高さなのか、防具が良いものなのかは分からないが4割程しか減らなかったためすぐ回復できる。

 俺はミカエルとの戦闘に参加すべく、HPを回復しミカエルのところに向かっていた。

 瀕死状態になったミカエルは一歩退いた。HPが全快である5人のプレイヤーがそれの追撃にでる。その中にはWanKAも含まれていた。そして、一斉に攻撃する。

 

 グオォォォォォォォォォォォ


 強烈な叫び声をあげる。ミカエルのHPが0になる。普通なら倒した後モンスターは倒れ四散するはずだ。それなのにミカエルは倒れない。それどころか、ミカエルが光っている。その光はどんどんと増していく。

 何か嫌な予感がした。

 そして、その予感は的中した。

 ミカエルの腹部から光る触手のような物が現れ追撃に来た5人のプレイヤーを捕まえる。

そして、ミカエル全体から凄まじい光が放たれる。目が痛くなるほどの光に、俺たちは目を抑える。

 数秒後俺たちが目を開けたときにはミカエルはいなかった。残されていたのはミカエルに捕まえられた5人のプレイヤーだけだった。

俺はよく目を凝らす。5人のプレイヤーのHPがみるみると減りそして0になった。

「ワンカ!」

 俺は、急いで5人のプレイヤーが倒れている所に向かう。

 そこに着いたとき既にWanKAは消えかけていた。

「そんなのおかしいだろ……!」

 こんなのおかしすぎる。何で、何でこんな殺人プログラムなんか……。ましてやなんで俺の仲間が巻き込まれないといけないんだ。

「ユウさん……。ココロと……ベベをお願い……します……」

「そんなこと言わないでくれよ、ワンカ……。生きて、生きて抜け出すんだよな?」

 俺の悲痛の叫びには、答えてくれずWanKAは四散した。


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