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黒幕、タイフーン登場

 ロシア兵器によって拉致される元帥。ロシア兵器たちは拉致を容易にするため、元帥をダウンさせることを提案する。しかしロシア兵器たちのリーダーは却下した。

「だあ、わかったすよ姉御。戦車回収車こっちにこい」

 そう言って現れたのは……といってもロシア兵器は全員迷彩服で目出し帽をかぶっているので見分けがつかないが、とにかく戦車回収車と呼ばれた女の子が元帥の服を掴むと無理やり背中に抱えて先を進みだした。ちなみに戦車回収車とは動けなくなった戦車を牽引して回収する車両だ。

「こんな力持ちがいるのなら、何で最初から使わないのさ?」

「お前馬鹿か。地上で兵器形態になったらアメリカの連中に気が付かれてしまうだろうが」

「あ、そういうことか……」

 そう言った元帥は手が尽きてきた。アメリカ州当局はこの一件はトラックの炎上で片付いたとみているだろう。地下のロシア兵器たちを当局の兵器形態監視網は感知できない。となるとアメリカ州当局の支援はアテにできない。

 どうせこの地下道は国境を越えたところまで続いていて、そこを出るとタイフーンがお出ましになるのだろう。

(しかし、そんなことをしても何の意味が……?)

 元帥はそう疑問に思った。しかしそんなことを考えている場合ではなかった。ロシア兵器たちは兵器形態に転換すると、兵器の性能そのままのスピードで走り始めた。これでは国境を越えられるのも時間の問題だ。

 しかし打つ手もない。地下だと電波や光波は使えない、兵器形態監視網も効かない。元帥は体力を温存することにした。その間にもロシア兵器たちは国境の外を目指して走っていく。

「姉御、着きましたぜ。出口ですぜ」

 ロシア兵器の一人がそう言うと地下道は行き止まりになっており、地上に出る梯子とマンホールの蓋があった。ロシア兵器の一人がマンホールの蓋を少し開けてまわりの様子をうかがう。

「大丈夫ですぜ」

 ロシア兵器が安全を確認してそう言うとマンホールの蓋を除け地上に出て、面々もそれに続く。元帥も戦車回収車に背負われたまま地上に出ようとするが……。

「お前にはこれをつけておかないとな」

 戦車回収車はそう言うと手錠で自身と元帥の腕をつないだ。

 元帥は「くそっ」と叫ぶ。これでSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル、核ミサイル)の兵器形態で自らを発射して逃げることができない。マンホールを出ると周りは原っぱで何もなかった。当然アメリカ州外で兵器形態監視網もないだろう。SLBMには通信手段がない。万策尽きたか?

 一応、最後の手はある。リアル世界ではSLBMなどの核ミサイルの発射を探知する人口衛星、早期警戒衛星がある。発射時のロケット噴射の赤外線、すなわち熱で核ミサイルを探知する。この異世界にもアメリカ州の早期警戒衛星があれば探知してくれるはず。

 ただリスクはある。ロケット噴射で燃料を消費したら兵器形態の元帥の体重が軽くなって拉致しやすい。しかし取れる手は取っておく、元帥は意を決した。

「うぉーりゃあー」

 元帥はそう言ってSLBMの一段目ロケットに点火する。SLBMの発するロケット噴射で周りの物は吹き飛ばされていく。もちろん、重量のある戦車回収車と手錠でつながれているので、上昇することはできないが、ロケット噴射の熱を早期警戒衛星がとらえてくれることを期待する。

 だが意外なことが起きる。爆風を物ともせずに元帥に近づき、その額を手の平でグッと抑える人物がいた。元帥は「痛いっ、頭が割れるっ」とわめくが、その掌の力が増していくと同時に元帥のSLBMのロケット噴射が収まっていく。

 元帥は訳が分からず「え、えっ、なんでっ?」とだけ言った。ただその人物を見たロシア兵器たちは跪く。

「タイフーン様っ」

「お前たち、ご苦労だったな。よくぞ元帥をここまで拉致してきてくれた。報酬はたっぷりくれてやる」

 その人物は他ならぬ、双頭の鷲計画の首謀者、戦略原潜(核ミサイル潜水艦)タイフーンの魂、その人だった。大統領選出戦で少し目にしただけだが、相変わらず長い銀髪、鋭い目、大和にも劣らぬ長身、固そうな絶壁の胸、雪より白い肌、冷酷さを体現したかのようなロシア兵器の魂だ。服は水色と白のデジタル迷彩戦闘服だ。

 しかしタイフーンに感心している場合ではない。元帥の思惑通り、ロケット噴射をアメリカ州の早期警戒衛星が探知したらしく、アメリカ兵器の魂たちが急行してきた。早速戦闘機が攻撃してくる。ロシア兵器たちも小銃で反撃する。

「くそ、アメリカの連中ここまで嗅ぎつけてきやがったのか。タイフーン様はお引きください。ここは私が食い止めます」

 タイフーンはロシア兵器の魂にそう言われると「ではそうさせてもらおう」と返事する。そして元帥のところまできて、戦車回収車に「手錠を外せ」と令し、戦車回収車がそれに従う。タイフーンはすぐさま再度手の平で元帥の額を押さえる。

 するとまた元帥はロケット噴射を再開する。

「え、えっ。なんで、勝手にロケット噴射しちゃう。体がいう事を聞いてくれないよお」

「おまえがSLBMの魂なのは知っているな。しかしSLBMの機種名までは知らないようだな。お前の機種名はアメリカのトライデントミサイルでもなければフランスのM45でもない。旧ソ連製のR-39だ」

「ということは、もしかしてっ」

「そう、おまえは私が搭載するSLBMなのだ。だからお前にあらゆる指令を出すことができる。当然発射も目標の指定もな」

 その間もロシア兵器たちはそれぞれの兵器形態に転換してアメリカ兵器を迎撃する。

「しかし僕を発射してどうしようというのさっ」

「私の双頭の鷲計画にはお前がどうしても必要なのだよ。そしてお前を拉致する機会をうかがっていた。それはお前が大和たちから離れ、ワリヤーグ港からアメリカ州へ発射されたあと、ロケット燃料が一番少ない、アリエスの自宅に到着した瞬間なんだよ」

「くそっ」

「一見、アリエス宅はアメリカ州内という安全な場所だとお前は思っていたようだが、その裏をかかせてもらった。アメリカ州内には迎撃ミサイルがあるから、州内からは発射できない。そこでお前をアメリカ州外まで連れてきて、ロシア県に向けて発射する」

「そんなことをして、ってまさか……」

「そう、お前を手っ取り早くロシア県内に連行する一番簡単な手段だ」

「そこまでして僕を必要とする理由は……」

「それはこんな状況では長々会話している場合でもないので後で話してやる」

「大和さんはどうしたのさっ」

「お前、可愛い顔して意外に頭いいだろ。何気に話を引き延ばして時間稼ぎを試みているな」

「バレたか……しかしアメリカ兵器は君たちを簡単に返すとは思えないよっ」

「それはご心配なく。私がロシア県に帰還できれば問題ないのだから」

「アメリカ兵器に囲まれているのに、君だけどうやって逃げるのさ?」

「おまえ、今なにも搭載していないだろ。65-76魚雷を搭載するため核弾頭はワリヤーグ港で捨てた。65-76魚雷はアリエス宅に置いてきた。だからこの空いたところに私が搭載されれば……」

「くそお、くそお。大和さーん」

 元帥は泣き叫ぶしかなかった。

「さ、お前の目標をロシア県に設定した、あとは私を乗せて発射するまでだ」

「味方はどうすんのさ?」

「あいつらは金になびく、あとで金をやると言っておいてあるから、全力で戦ってくれるさ。実際金は用意しているから、ロシア県に帰って来れればくれてやるさ。ロシア県はすべて金で動く。さ、発射だ」

「くそおー」

 そして元帥のR-39は発射された。その瞬間タイフーンは元帥の額から手のひらをはがすと、ペイロード形態に転換してR-39に搭載された。アメリカ兵器も発射阻止しようとするが、ロシア兵器たちが盾となって阻止する。

 R-39は発射炎を残して元帥とタイフーン諸共、ロシア県へと向かった。

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