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異世界版、バラクラヴァ原子力潜水艦秘密基地

 そしてトンネル入り口を前にして面々は呆気に捕らわれていた。巨大なトンネルの入り口が無傷で口を開けていた。

「しかしこんなトンネル。真っ先に攻撃しているはずなんだけど……」

「どうやら今まで偽装網で秘匿されていたみたいっす。だから私たちも見逃していたようっすね。65-76魚雷はここにいるに間違いないっすから、早速内部に突入するっす」

「F-4EJそんなことできるわけないわよ。あちらさんも無警戒で誰でもどうぞなんていう訳ないから、正面から入ったら派手に歓迎されるわよ」

「んじゃどうするの? こっちの戦力は戦闘機は兵器形態で飛んでいるし、他の兵器は人間形態で歩兵程度の攻撃力しかないよ。重火器はないから突破できない」

「元帥君、簡単よ、トラックに大量のガソリンを積んで突撃させるのよ」

「相変わらず、派手な作戦だなぁ」

 元帥がそう言い終えるまでもなく、日本側の手でガソリンを満載したトラックがやってきた。そして運転手は、運転席のアクセルをつっかえ棒で吹かした状態に固定、速やかに運転席から飛び降りる。するとトラックはそのまま加速してトンネルの入り口に向かっていった。

「うわああ」

 元帥たちを歓迎するのに待機していたロシア県側の兵器の魂たちは、蜘蛛の子を散らしたように奥へと逃げだした。しかしトラックは止まらず奥へと向かっていく。そして大爆発を起こした。

「さあいくわよっ」

 トラックの爆発で、ロシア県側の迎撃に穴が開いたことを確認した大和を始めとする日本側はトンネル内への突撃を敢行する。トラックのガソリンで燃えさかるトンネルを駆けていく。元帥はこのトンネルをただのトンネルと踏んでいたが、しかしトンネルの奥で待ち受けていたのは意外なものだった。

「これはっ」

 元帥がそう発したのも無理はない。潜水艦ドックが複数ある地下基地だったのだ。

「そう、旧ソ連海軍のバラクラヴァ原子力潜水艦秘密基地……の、異世界版」

「大和さん、まあ内容は聞くまでもないけど、核ミサイルを搭載した戦略原潜を、敵の核攻撃から隠しておくための基地だよね。まさかこの異世界に来てまでこんなものを目にするとは……」

「元帥君、詳しいのね。まあ、私はこんなことだろうと思っていたわ。『はるしお』を攻撃した潜水艦はここから出撃したんでしょ。そんなことより、65-76魚雷はここにいるとみて間違いないわ、奥に進みましょ」

 大和はそう言って遭遇するロシア兵器の魂をダウンさせながら進んでいく。リアル世界の人間なら抵抗しなければ見逃してもいいが、兵器の魂の場合死なないのをいいことに無駄な抵抗をしてくるからだ。

 そしてついにある小さい女の子を見つけた。と言うか幼い女の子の外見をした兵器の魂だ。大和は問答無用で64式小銃のライフル弾を三発叩き込んだ。その女の子はその場に崩れ、大和は荒々しく髪を掴んで顔をこちらに向かせ、タブレットパソコンで顔を確認する。

「この子で間違いないわ。65-76魚雷よ。早速『はるしお』まで戻って帰投するわ」

 が、予想外の事が起きる。死んで目を瞑っていた女の子の目が開いた。生きているっ。

「まさか防弾チョッキっ? みんな逃げてっっえ」

 大和がそう叫んだが、65-76魚雷の判断に先を越される。なんと弾頭を爆発させた、簡単に言えば魚雷の自爆だ。

「っつ」

 65-76魚雷の弾頭である500キログラムの高性能爆薬は大爆発を起こし、それは日本側の兵器の魂たちをミンチにした。

「元帥君、大丈夫?」

 だが大和は生きていた。

「大和さんは大丈夫?」

 爆煙でよく見えないが、元帥は大和が盾になって守られていた。

「私は大丈夫よ……。寸前に人間形態から兵器形態に転換したの。いくら65-76魚雷と言っても戦艦大和を破壊することはできないから。でも他のみんなはダウンしたみたいね」

 周りを見ると65-76魚雷諸共、日本側兵器の魂たちもみんなヒットポイントのゲージがゼロになっていた。大和は人間形態に転換して65-76魚雷に近づく。今度は完全にダウンしているようだ。

 しかし65-76魚雷には奥の手があった。なんと再度爆発した。これには大和も驚愕した……といっても再度元帥の盾となり、壁にまで吹き飛ばされた。人間形態ではこの爆発に耐えられず、ヒットポイントのゲージはほぼ尽きかけていた。そして元帥は大和に駆け寄る。

「大和さんっ、大丈夫っ?」

「どうやらクルスク沈没の原因である65-76魚雷の爆発する不具合が作動したようね」

 そう言うと大和は口から血を吐いた、そして続ける。

「とにかく今は作戦を完遂することが先よ。みんなの事は後で考えるとして、元帥君は65-76魚雷をアリエスさんのとこまで連れて行ってほしいの」

「非力な僕がどうやってこんな女の子を、小さいとはいえアリエスさんのところまで連れて行くの?」

「簡単よ。君は人間の魂とはいえ異世界の兵器としてはSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル、核ミサイル)よ。核弾頭のかわりに65-76魚雷を搭載してアリエスさんのところまで直で飛んでほしいの。アメリカ州には事前に連絡しているから、SLBMでもすんなり通してもらえるはずよ」

「大和さんはどうするのさっ」

「私たちは何とかなるわ。でも作戦は君にしか完遂させることができないの。私の願いは元帥君が、いま私に構って作戦が頓挫することではないわ。作戦成功、それが私の本望なの。さっ、行って」

「うっ。分かった、僕は行くよ。その代わり約束してほしいの、絶対に帰って来るって」

「わかったわ。絶対に日本街に帰ってみせるわ。それとアリエスさんの家に着いたら、私が迎えに行くまで日本街に戻らないで。いいわね」

「うん、わかった。んじゃいくよっ」

 元帥は涙を拭いて駆けだした。目指すはアメリカ州、アリエス宅。

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