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第9話 2人の少女

「……う、うーん」


 目が覚めると僕の知らない天井だった。

 寝起きと混乱のためか記憶がハッキリしない。


「おっ、やっと目が覚めたんか? 丸一日は寝てたんやで?」


 不意に声をかけられて驚くが肩が痛むために振り向くことができない。

 すると声の主が僕の方へやって来て顔を覗き込んでいる。

 そこには金髪のケモ耳少女の姿があった。


「まさか人間族がホンマにおったとはな」


 その言葉を聞いて急激に記憶が戻ってくる。


(僕はトンガンに刺された後に首輪を触れられて……)


 声の主が誰かは知らないけれど早くこの場から逃げないと!

 無理やり体を動かそうとするが痛みのためか思うように動けない。


「心配せんでも大丈夫や。うちらは普通の冒険者やから……っと帰って来たかな。サラ、少年が目覚めたで?」


 目の前の金髪ケモ耳少女が誰かの名前を呼ぶとバタバタと足音が聞こえて来る。

 そして僕の顔を覗き込んだのはトンガンから助けた銀髪ケモ耳少女だった。


「よかった、目が覚めたのね! えっと何か飲めそう?」


 確かに喉がカラカラに乾いていたので小さく(うなず)くと銀髪ケモ耳少女は上半身を優しく支えながら起こしてくれる。

 その間に金髪ケモ耳少女が木のコップに水を入れて持って来てくれた。

 木のコップを受け取ると一気に喉の奥へ流し込む。


「ゴクゴクゴク……うぐっ、げほっごほっ!」


 急に水を飲んだので気管に入り盛大に()せていると銀髪ケモ耳少女が優しく背中をさすってくれる。


「ゆっくりで大丈夫だよ」

「誰も取らへんから安心してエエで。おかわりいるか?」


 体はまだ水分を欲していたのでさっきと同じように小さく頷くと木のコップに新しい水を汲んで僕に渡してくれた。


「ゴクゴクゴク……ぷはぁ。やっと生き返った」


 そんな僕の様子を笑顔で見ている2人のケモ耳少女。

 水を飲みながらそっと2人の様子を伺っていたけれど敵意は無さそうだ。


「えっと、お水、ありがとうございます」


 まずはお水のお礼を伝える。

 言葉が通じるのは今までの会話からわかったので大丈夫。


「あの、聞きたいことが――」

「あの時、助けてくれて本当にありがとうっ!」


 質問しようとすると銀髪ケモ耳少女が僕に抱き付いてきた。

 何が起きているのか混乱する僕を横目に金髪ケモ耳少女にも話しかけられる。


「うちからもお礼を言わせてな。大事な親友を助けてくれてホンマにありがとう。っと先に自己紹介しとかな。うちは猫人族のティナ、冒険者やで」


 そう言って自己紹介を始めたのはなぜか関西弁で話す猫人族のティナ。

 年齢は10代後半で金色の髪を肩の手前で乱雑に切り揃えたショートヘア。

 深い緑の瞳で僕を見る彼女は悪戯好きで人懐っこい感じがする。

 170センチの長身に小麦色の肌でとても健康的な少女だ。


「私はサラ。狐人族で同じく冒険者だよ」


 僕に抱き付いて介抱してくれているのは狐人族のサラ。

 年齢は10代後半で紺碧(こんぺき)色の瞳に胸の辺りまで伸びた艶やかな銀色の髪がよく似合う。

 160センチほどの小柄な少女で白く透き通った肌がとても綺麗だ。

 童顔ではあるけれど優しいお姉さんのような印象を受ける。


 そして2人に共通するのは頭から飛び出た2本のケモ耳とお尻から伸びた尻尾。

 猫人族のティナは細長くてスマートな感じに対し、狐人族のサラはフワフワで抱き枕にすれば気持ちよさそう。


「僕の名前はミオです。種族は……人間族です」


 あんなことがあって種族を伝えるか悩んだけれどバレてるみたいだし。

 これで何か悪い方向へ物語が進んでも運命だと思って諦めるよ。

 僕の言葉を聞いて2人のケモ耳少女が驚いている。


「やっぱり本人の口から聞くとビックリするわ」


 人間族ってそんなに驚かれるようなことなんだ?

 過去に何があったのか知りたくなってきたよ。


「あの……、ここはどこなんですか?」


 まずは自分の現状を把握しておきたい。


「ここはアテリルの街で蹄鉄(ていてつ)の宿って名前の宿屋だよ」

「アテリル……?」

「そうだよ。ユミルバート王国が治めている街って言えばわかるかな?」


 新しい単語が増えるけれど何とか覚えておかないとな。

 ちなみに世界の名前はリーディエルと言うらしい。


「うちらはこの街の冒険者ギルドで世話になってるねん」

「冒険者ギルドがあるのですか?」

「あんまり大きくないけど近くにダンジョンがあるから冒険者が多いねん。ミオくんもいつか行ってみるか?」


 異世界と言えば冒険者でダンジョンだよな。

 いつか自分に余裕ができたらぜひチャレンジしてみたい。


「その時はぜひ! それと僕を呼ぶ時はミオで大丈夫ですよ、ティナさん?」

「あぁ、うちのことも呼び捨てでええよ」


 ティナと呼ばれたケモ耳少女はそう言って明るく笑う。

 その明るさが今の僕には凄く有り難い。


「ミオちゃん、私のこともサラって呼び捨てでいいからね?」

「はい、ご主人様」


 僕が返事をすると部屋が静寂に包まれる。

 部屋の外から聞こえるのは住民たちの声だろうか。

 しばらく3人で見つめ合って我に返る。


「「「……え?」」」


最後までお読みいただきありがとうございます。

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