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第5話 最後の人間族

「うっ、ぐすっ……」


 ステージ横では落札されたエルフの少女のすすり泣く声が聞こえる。

 その周辺には同じように落札された人たちが種族や男女年齢問わずになぜか全裸姿で立たされていた。

 中には子供の姿も見えるが同じように全裸姿だ。

 しかも首輪の力により体を隠すこともできず直立不動のまま。


(あれは……)


 近くには炉と焼きごてのような物がありゾルダの部下が落札された人たちを見て不敵な笑みを浮かべている。

 今から何が始まるのか知らないが(ろく)なことではないだろう。

 しばらくするとゾルダが僕の元へやって来て声をかける。


「いくぞ、ガキ?」


 次は僕の出番が回ってきたらしい。

 無言で(うなず)くと暗闇の中を歩かされステージ中央まで行くとゾルダが僕の首輪に付いている鎖を引っ張って止める。


(口で言えばわかるっての……)


 そして舞台照明がステージ中央に立つゾルダを照らした。


「皆様、お待たせ致しました。本日最後の商品になります」


 その声とともに僕にも舞台照明が当てられる。

 けれど僕の頭からスッポリと外套(がいとう)がかけられているので声は上がらない。


「おぉ、ゾルダが自らステージに立つとは珍しい」

「先ほどのエルフもよい商品だったが?」

「期待していますわよ?」


 普段は進行役の男性に任せているのだろう。

 主催者のゾルダが商品を紹介するのはかなり珍しいらしい。

 客席から聞こえる声に笑顔で応えるゾルダ。


「この子供はとある神殿で発見されました」


 会場からはひそひそと話をする声が聞こえる。


(神殿? その関係者の隠し子か?)

(いや、そんな話は聞いたことないが……)

(エルフも凄かったし俺には見当もつかん)


 小さな話し声だがゾルダはその言葉を聞き興奮を抑えることで精一杯らしい。


「さあ、皆さまご覧下さい! ()()()()()()()の子供ですっ!」


 そう言って頭からすっぽり被った黒い外套を剥ぎ取り僕は観衆に晒された。

 もちろんエルフの少女と同じように薄絹は着ているが全裸だ。

 一瞬の静寂が会場を支配する。



「「「な、なんだとぉぉぉーーーっ!」」」



 驚きの声が会場に響き渡る。

 ゾルダも客席から飛んでくる声を聞き満足気だ。

 そして――。



(な、なんだってぇぇぇーーーっ!)



 ゾルダの言葉を聞いて僕自身が1番驚いた。


(最後の人間族ってどう言うこと!? 僕以外に人間って誰もいないの!?)


 神殿で目覚めてすぐに捕まったから気付かなかった。

 ここでようやく仲買人のサントや奴隷商人のゾルダ、他の奴隷たちが僕の種族を聞いて驚いたことに納得したよ。

 そう言えばアラミオン様の最後の言葉に「人間族を増やし――」で声が聞こえなくなったけれど、まさか僕にやってほしいことって人間を増やせってこと?

 知ってると思うけれど1人じゃ増やせないんだけど?

 まさか僕って雌雄同体(しゆうどうたい)とかじゃないよね?

 ゾルダの言葉に大混乱しているのは僕だけでは無かった。


「に、人間族だとっ!?」

「冗談ですわよね!?」

「おいっ、ゾルダ! 人間族なんて嘘を言うでないぞ!」


 そんな声があがるのを予想していたのだろう。

 手を叩いて部下を呼び寄せるとさっき見た大きな水晶を持ってステージ中央に設置された台座へ静かに置いた。


「おい、手を水晶の上に置くんだ」


 拒否したかったけれど僕の首にはめられている隷属(れいぞく)の首輪がそれを許さない。


 水晶の上に手を置くとゆっくり輝き出し、会場に見えるように透明なスクリーンが浮かび上がる。



 ===============

 名前 :ミオ(人間族)

 職業 :奴隷

 魔法 :創造

 スキル:※※、※※

 ===============



 僕のステータスがスクリーンに表示されると会場は静まり返る。


「ほ、本当に人間族だ……」

「あの水晶に小細工してるとか?」

「いや、仮に何か小細工したとしても(わし)たちを敵に回すだけで主催者側にメリットがあると思えん」

「黒髪に黒目……、まさか存在しているとは……」


 会場から聞こえる様々な声を聞きながら僕もスクリーンを見る。


(神殿で見た時と水晶で表示したステータスの内容が違ってる?)


 水晶に表示されているスキルはなぜか文字化けのように判別できない。

 しかもギフトや加護に至っては表示すらされていない。


(水晶で確認できるのは魔法までなのか?)


 これが本当なら僕のスキルやギフトが表示されなくて助かった。

 けれど命令されれば話さない訳にはいかない。

 本当に隷属の首輪は厄介な代物だ。

 そんなことを考えている僕と違って会場の客たちはステータスと僕を何度も見比べている。


「それでは、本日最後の超目玉商品! 人間族の売買を開始しますっ!」


 その声に導かれるように会場から歓声が沸き上がる。

 客たちの目は獲物を狙う肉食の獣のようで怖い。


(どうせなら綺麗なお姉さんに買われますように……)


 僕の(つぶや)きは誰にも届くことなく最初の数字が発表された。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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