第4話 奴隷商人に売られた
本日もう1本投稿予定です。
「次の馬車はこっちへ来てくれ!」
幌馬車の外でサントやウノード以外の声が聞こえる。
頭から黒い袋を被っているので外は見えないが人通りが多いのか話し声が増えてきた。
「今から街へ入るための荷物検査だから静かにしてろよ?」
ウノードが命令すると声が出せなくなった。
他の人たちも腕輪を付けているのか聞こえるのは呼吸音だけ。
外ではサントが役人らしき人物と話をしている声が聞こえる。
しばらくすると幌馬車は何事もなく走り出す。
(普通に通れるんかいっ!)
幌馬車の荷台で黒い袋を被った子供が見つかれば大騒ぎになって解放されると期待したけれど無駄だった。
異世界では奴隷制度はお約束だし今は我慢するしかないのか。
しばらく雑踏の中を走っていた幌馬車が静かに止まる。
たぶん目的地に到着したのだろう。
「今から奴隷商人の旦那に会うから大人しくしとけよ?」
サントとウノードは僕たちを幌馬車から降ろすと1個所に集める。
今から何が起こるのか不安の中、誰かがこちらに近づいて来た。
「旦那、お待たせしやした! 今回も上物の奴隷が揃ってますぜ!」
「お前たちか、いつもご苦労。開催まで時間もないから手早く検証を済ませるぞ」
頭から袋を被ったままで状況はわからないが旦那と呼ばれた奴が僕以外の奴隷たちの名前や種族、魔法やスキルの有無を調べているらしい。
もしこいつらに僕のスキルがバレると本当に面倒になる。
「おっ、こいつはエルフじゃないか!? しかもまだ若いな。今日の目玉は間違いなくこのエルフだな! お前たち、よくやったぞ」
旦那と呼ばれた男は上機嫌で部下に指示を出す。
エルフなんて実際に見たことないから僕にも見せてほしい。
その気持ちが届いたのか僕の黒い袋が取られて目の前が明るくなる。
「旦那、俺たちもエルフの少女を目玉に売り込もうと思ってやしたが……」
そう言ってサントが僕の手を引いて旦那の前に突き出される。
僕の目の前で驚いているのは立派な衣服を着たモコモコ男が1人。
こいつが奴隷商人の旦那か。
「この子供がどうした? 確かに俺も見たことないが……お前の名前と種族はなんだ?」
「僕の名前はミオです。種族は人間族です」
何とか抵抗しようとするが奴隷の腕輪には逆らえずに答えてしまう。
「……もう1度言ってみろ?」
「名前はミオで人間族です」
サントやウノードが驚いた時と同じような顔をしているモコモコ男。
よく見ると僕以外の奴隷の人たちも数人が唖然としていた。
何がそんなに気になるんだよ?
「おい、例の水晶を持って来い! 今すぐにだっ!」
部下らしき人に命令すると僕の顔を覗き込む。
モコモコ男に見つめられても嬉しくないぞ?
(今のうちに調べておくか)
===============
名前 :ゾルダ(羊人族)
職業 :奴隷商人
魔法 :精神魔法D
スキル:耐久増加D
加護 :土の精霊
===============
(ふむ、名前はゾルダで羊人族ね……)
ゾルダを見ると確かに頭の横には羊のような渦巻き状の角があり、その瞳は横長の瞳孔で僕をジッと見つめていて凄く怖い。
「よし、水晶に触ってみろ」
目の前には部下が持ってきた水晶が置かれている。
抵抗できないのはわかっているから素直に水晶に手を置く。
ゾルダが水晶を覗き込み目を見開いて驚いていた。
「ほ、本当に人間族だ……」
人間の子供なんて珍しいとは思わないんだけど。
それよりスキルとかバレなかったのか?
ゾルダの驚いた顔にご満悦なサントが話しかけてくる。
「旦那、エルフや他の奴隷たちはいつもと同じ金額でお譲りしやすが、人間族の子供はそれなりの金額でお願いしやすぜ?」
「う、うむ、わかっているとも。他の奴隷たちはいつもと同じ金額だ。エルフの少女は珍しいからこれでどうだ?」
「おぉ、さすが旦那だ! わかってやすねぇ……、こっちの子供は?」
サントが僕の頭に手を乗せて値段交渉をしている。
まさか異世界で僕自身が売り物になるとは思わなかったよ。
「そうだな……、これでどうだ?」
「旦那ァ、さすがにこれは……。俺たちは別の奴隷商へ持って行ってもかまわないんですぜ?」
「(ちっ、調子に乗りやがって……)それじゃ、これなら? うちではこれが精一杯だぞ」
「すんません、旦那。他の奴隷商へ向かいやす。きっとこの2倍、いや3倍は出してくれますぜ?」
「わかった、わかった。それじゃこれで文句ないな?」
ゾルダが提示した金額に納得したのか握手を交わすゾルダとサント。
そして僕の奴隷の腕輪が取り外されると同時に、今度は新しい首輪がカチッと言う音とともにはめられる。
【 隷属の首輪 】
奴隷の腕輪より強制力が強く命のやり取りすら可能。
主人が死ねば首輪の契約により殉死する。
首輪を<鑑定>すると腕輪よりもヤバい代物だった。
奴隷の腕輪の上位アイテムって感じだ。
サントとウノードは大金を受け取ると嬉しそうな顔をして建物を去って行く。
こんな奴らに捕まらなければと思ったけれどあの場合はどうしようもない。
「よしっ、もうすぐ開演の時間だ。最初の予定を繰り上げてこの子供を最後の目玉に出すぞ! 急いで準備をするんだ」
周囲の部下に向かって命令するゾルダ。
そして扉付近にいた違う雰囲気を漂わせる部下に命令する。
「あの2人は必要ないから始末しろ。依頼料は奴らが持ってる半分だ」
「(……コクリ)」
小さく頷くと怪しい雰囲気の奴が建物を出て行く。
(アラミオン様、僕はどうなるんでしょうか?)
最後までお読みいただきありがとうございます。
ブックマークや☆☆☆評価をいただけると作者はとても喜びます!
タップするだけで終わりますのでよろしくお願いします。




