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第3話 どうしてこうなった?

「お前は誰だ!?」


 小さな石室に入って来たサル顔の……サル?

 お前は誰だと聞かれても僕だって同じ気持ちなんだけれど。


「……もう1度聞くがお前は何者だ?」


 僕が子供だとわかったんだろう、少しトーンを落として聞いてくる。

 何度聞かれても僕だってわかってないんだよ。


「……俺の言葉がわかるか?」


 あ、そう言えば……。

 アラミオン様、異世界でもちゃんと言葉が通じました!

 目の前のサルの人を見ると僕の返事を待っているっぽい。


「わ、わかります」


 僕が返事をするとサルの人は優しそうな笑顔で話を続ける。


()()()()()はここで何をしているんだ?」

「うん? あ、えっと気付いたらここに寝かされていて……」


 若干気になる単語が聞こえたけれど、さすがに神様と出会って違う世界から来ましたなんて言える訳がない。

 僕がそう答えるとサルの人は腕を組んで何かを考えている。

 しばらくするともう1匹……じゃないもう1人のサルの人が部屋へやって来た。


「おい、そいつは何者だ?」

「この子供はどうも――」


 僕に聞こえない小さな声で話し込んでいるサルの人たち。

 最初は驚いたけれど話してみると悪いサルの人でもなさそうだし何とかなるかもしれない?

 話が決まったのか僕の方を見るサルの人。


「俺たちは街へ向かっている途中なんだが一緒にどうだ? せっかく知り合ったんだしコレをやるから腕に付けて一緒に部屋を出ようか」


 こんな場所にずっといても仕方ないし街まで送ってくれるなら助かる。

 助かるけれどイキナリ出会った子供に高価そうな腕輪を渡したりするか?


(怪しい時には調べるのがゲームの基本だよな)


 悩む素振りをしながら腕輪を<鑑定>しようとするとサルの人が笑顔を向けて僕に言う。


「……さっさと腕輪を付けろ。この()()()()


 さっきの言葉は撤回します!

 優しそうだと思ったサルの人は野蛮なサルにレベルアップしました!

 口の端が上がり意味ありげな笑いを浮かべるサル。

 目の前のサルに向かって<鑑定>を試してみる。



 ===============

 名前 :サント(猿人族)

 職業 :奴隷の仲買人

 スキル:敏捷増加D

 加護 :風の精霊

 ===============



「まさか奴隷の仲買人だったとは……」

「んなっ!? 何で俺が仲買人だとわかったんだ!」

「あ……」


 思わず出てしまった言葉は元には戻らない。

 サントと言う名の男から距離を取ろうと後退(あとずさ)りをするが小さな石室で入り口はもう1人の男が塞いでいる。

 ついでにその男も調べてみた。



 ===============

 名前 :ウノード(猿人族)

 職業 :奴隷の仲買人

 スキル:腕力増加E

 加護 :風の精霊

 ===============



(ふむ、ウノードで同じ奴隷の仲買人ね)


 今度は口に出さなかったぞ。

 入り口は奴らに塞がれている以上、何とか隙を突いて抜けるしかない。


 アラミオン様の加護の力で悪い奴らをぶっ飛ばして逃げる!

 なんて期待したけれど普通に子供のままだった。

 人間の子供がサルにスピードで勝てるわけないじゃん。

 10秒もかからずにあっさり捕まって無理やり腕輪を付けられる。


「お前の名前は何だ?」


 サントが僕に質問をしてくるが素直に答えるわけない。

 そう思ったのに……。


「僕の名前はミオです」


 なぜか僕の意思に反して口が勝手に答えてしまう。

 自分自身に驚いてすぐに腕輪を<鑑定>で調べてみる。



【 奴隷の腕輪 】

  主人の命令は一部を除いて絶対で隠し事は不可能に近い。

  奴隷の解放には主人の命令が必要。



(……奴隷って)


 異世界に到着して最初の職業が奴隷って残念過ぎない?

 もし小説やゲームで馴染みがなければ卒倒してるところだ。


(ヤバいな……、スキルを知られたら面倒になる)


 もし奴らに言えと命令されたら腕輪の力で話してしまうかもしれない。

 緊張しながら奴らの次の命令を待つ。


「まずはお前の種族は何だ?」

「僕の種族は人間族です」

「……」


 僕の答えになぜか驚くサントとウノード。

 たっぷり時間を使って、今度は食い気味に話しかけてくる。


「もう1度だけ聞くぞ? お前の種族は何だ?」

「だから人間族です」


 嫌々ながらも僕が答えるとサントとウノードは離れた場所でコソコソ話し出す。

 一瞬、逃げるチャンスかもと思ったが腕輪が付いている限り無理だろうな。

 壊そうとして力を入れて引っ張るがビクともしない。

 そんな僕を放置して2人はかなり興奮している。


「今まで誰かに話したのか?」

「いえ、初めて出会ったのがご主人様なので話していません」


 こんな奴らを「ご主人様」って呼んでいる自分に驚いた。

 奴隷の腕輪の力はかなりヤバいぞ。


「よしっ、部屋を出るが忘れ物はないだろうな?」

「はい、ありません」


 お前は僕の両親かよ。

 しかし悔しいけれど素直に返事をしてしまう。


 サントとウノードに付いて部屋を出る。

 そのまま建物を出たところで振り返るとここは小さな神殿だった。

 放置されてかなりの年月が経っているのかあちこち風化している。


「さっさとこっちへ来い!」


 しばらく歩くと街道に出たところに1台の馬車が止まっている。


「荷台に乗ったら床に落ちている黒い袋を被って静かにしてろ」


 そう命令されて抵抗できずに幌馬車(ほろばしゃ)の荷台へ移動すると僕の他にも数名の人たちが頭に黒い袋を被って大人しくしていた。

 僕も適当な場所に座ると御者(ぎょしゃ)の方から声が聞こえる。


「俺たちも運が向いてきたぜっ!」

「これで大金持ちだな!」


 人間の子供1人を誘拐して奴隷にしただけで何を大騒ぎしてるんだ?

 まさか危険な性癖の奴に売られるとかはないよな?


(ホント、これからどうなるんだよ……)


 僕の心配をよそに幌馬車は静かに走り出す。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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