大地(新)④
「当摩先生、本当にありがとうございます。」
「おかげさまでこの通り元気になったよ!若いのに良い腕してるねぇ、当摩先生。」
「当摩先生で予約をしたいのですけれど。」
日々沢山の患者の診察、治療にあたる。
「当摩先生は本当に知識や技術が素晴らしい。先輩だからと言って世話焼き係になったけれどなんだか必要ない気がするなぁ。」
先輩医師から声をかけられる。
もう全体朝礼から2か月近く経つだろうか。
僕は樹林総合第二病院にて知識や手腕を奮っていた。
そして、勤務後は定期的に資料室に行く。
もちろん手掛かりを探すためだ。
資料室は樹林総合第一病院内。
幸運だったのは人目のつかない上に正面玄関から行きやすい位置にあったということだ。
ただ頻繁に通う必要がある為、注意を払う。
結果的に資料室にある材料はどうも核心に迫る事由が少なく大した成果はあげられなかった。
(やはり、もっと別の場所か。中には管理者権限が必要になる可能性も大だな。)
僕の情報収集は暗礁に乗り上げようとしていた。
(まだ、あいつはこないのだろうか。)
「あっ!ここにいらっしゃったんですね。少し探しましたよ。」
待望の彼女のお迎えだ。
レスポンスが遅くて正直参っていた頃だった。
「見てくださいよぉー。この名札。手書きでの修正しとけって言われて・・変ですよね!お客様からも私自身で作成して間違えたと思われて会う人会う人抜けているなんて言われる始末ですよ。もうプンプン!」
(全く、、やれやれだな。これだから感情的な女性は。)
僕は久しぶりに会って数分で次から次へと愚痴を零した白雪に少々脱力した。
なんだか、自宅にいるような気がする。
誰かさんはきっと今頃くしゃみをしているだろう。
「いくら病院側の手違いだなんて言ったところで言い訳にしかならないからね。仕方がない。前向きに考えるならばそのお陰で部署の誰よりも親しみやすく声をかけてくれるし、接客することができるってことじゃないのかな。白雪さんは不本意な経緯だろうけど。」
僕はフォローした。
白雪は少々目を潤ませて話を聞いている。
「当摩さん、なんか、すみません。ありがとうございます。」
(一件落着というところかな、、)
紆余曲折したが本題に戻す。
これからが大変なのだから。
「・・。さて、それじゃあ修正、確認してみようか。」
僕は医師一人一人に配給されている自分専用のパソコンを開く。
「はい、お願いします。」
白雪はメモを用意しながら答えた。
僕は初日、白雪と出会って話をした時にある約束をしていた。
それは白雪の個人情報修正の手伝いなど。
造作もないただのパソコン処理なのだがIDとPWがまだ白雪に連絡されていなかった上、一様病院独自の基幹システムへの入力なので一般的な処理方法が異なる。
僕はとある情報欲しさにその点をつき僕に繋がるよう誘導した。
結果白雪は手伝いを頼んできたのだ。
白雪の部署は医事課つまり頂点は気になっている例の男。
詳細は見れなくとも何か手掛かりがあるだろうと踏んだのだ。
早速ログインしてみる。
白雪 麻白 医事課
(なるほど。これじゃああんまりだな。白雪の性が台無しだ。)
「じゃあ修正するから見ていてね。」
僕は白雪にそう伝えると白雪は頷いて顔を近づけてくる。
(うっ、、ちょっと近い気がする、、)
白雪の顔が僕の顔のすぐ横に来る。
少々躊躇したがすぐに気持ちを切り替え淡々と処理を行う。
説明する僕の言葉に白雪は軽くうなずいたりメモに書いたりして学んでいる。
真面目な性格なのだろう。
なんとなく真面目過ぎて周りが見えなくなるタイプではないだろうか。
僕は注意するよう啓発しようとも思ったが、あまりに真剣なので中止する。
「わかりました!ありがとうございます!少しまとめるので清書する時間良いですか?」
白雪はすぐに走り書きのメモの内容を自分なりに分かりやすく清書する。
(丁度良い、それではもう少し情報を見させていただこう。)
白雪が作業している間僕は第一病院の医事課の閲覧可能な情報を確認する。
最上部からスクロールしてみる。
{空条 伊吹 樹林総合第一病院所属 内科総合部長 医療検査管理室所長 医事課副部長 45歳}
(挨拶はなかったな。あの会場にはいたのだろうか。まぁ、いずれは会うだろう。他には、、)
{鳴海 京介 樹林総合第一病院所属 外科部長 薬品等管理課 医事課 34歳}
鳴海京介。
(外科部長。父さんの元ポスト。しかし、上部も様々な部署を兼任しているものだな。次は、、いた)
{東海林 烈火 樹林総合第一病院所属 医事長 副院長補佐 40歳}
(まだ若いな、、勘違いではなかったようだ。肩書もえらい豪華な気がする。ん!?)
旧姓 石火矢 烈火
(石火矢、、烈火。石火矢!?石火矢院長と同じ姓!?これは偶然じゃないな、、なるほどな。想定していた通りだ。ようやく尻尾が見えてきた気がする。)
巨大で底の知れない闇がいよいよその姿を見せようとしているような気がする。
そして僕の中で様々な仮説が次へのステップを踏み始める。
僕は自然と笑みが零れた。
「お待たせしました!ありがとうございます!」
清書をし終わった白雪が僕を見る。
「ああ、どういたしまして。」
(お礼を言いたいのはむしろ僕の方だ。)
僕は笑顔で答えた。




