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境界線の上  作者: 神無 乃愛
外伝

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賽は投げられた


 こちらの陣営も混乱していた。何せ「青」が奇襲を仕掛けてきたのだ。奇襲の指揮官はおそらくオスカーだろう。

「私のところにいた部下は、優秀だ」

 思わずダレルは呟いた。

 正直、ビルに関してだけ言えば、ツヴァイとの連携もあり何とか倒せた。他を倒せといわれても、二番煎じはきかないだろう。

 あと四半刻で模擬戦は終わる。それまでどれくらい残っているといえるのか。

 この調子であれば、残った機体数により「赤」の勝ちとなるだろう。そして、最下位が「黒」となるはずだ。

 あの男の指令が下手だったために起きた出来事だ。これを覆すのは、至難の業。

「どうする? シェム、ツヴァイ」

 自分だったら起こすであろう、動きは真似させたくは無い。


 こういう状況も悪くない、そんなことをダレルは思った。



 刻一刻と変わる状況。それに対応するには、シェムは若すぎた。だからこそ、「ツヴァイ」は補佐をかってでたそうだ。

 それをきいたのは、全てが終わってからだった。「自分の部下は対応してたよ」とダレルが言ったら、「それはお前の部下だからだ。普通はパニックを起こしてお仕舞いだ。今回の出来事でシェムが潰れてたらお前を恨んだぞ、阿呆」とツヴァイに罵られた。

 それくらい出来るように育てた……わけではなく、そういう状況に部下たちが陥ったのだが。

 自分は部下にかなり恵まれていたと今でも思う。こうして、ストレスが溜まれば、巨体(コア)へ誘ってくれるし、戦闘機の操縦に肉弾戦まで付き合ってくれる。だからこそ、あの時何としても負けたくなかったのだ。

 だから、「ツヴァイ」に頼まれるまま、そのあと指揮を執った。



『シェム、北方向へ五機連れて回れ! ツヴァイは東側に十機連れて待機!!』

 自らも銃を構えながら、指示していく。気がついたらオスカーは撤退して、アーロンとやりあっていた。

 あそこは互いの自滅を待てばいい。だとしたら残すは「赤」のみ。いや、「赤」は止めよう。最後だ。

『ツヴァイ、“赤”に陽動かけてくれ。残りは他色を包囲する!』

『おいっ!?』

『ツヴァイ、私はそこまで面倒なことは言っていない。“赤”くらいなら一分(いちぶ)抑えられるだろう?』

『おまっ……二分(にぶ)で終わらせる気か?』

『当然だ。負けたくないのでね』

 ここまできたら、ただの意地だ。


 少ない犠牲で、多くの機体を倒す。基本ともいえるが、同性能であればかなり難しいところではある。そして、互いに実力が分からなくては、なおの事。

 そういったものをずっと覆してきたからこそ、現在(いま)の自分がある。そして「半端者」と誇りをもって言えるのだ。

『殲滅作戦開始! 被弾はなるべく避けるように!!』

 指示はそれだけでいい。


 賽は投げられたのだ。


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