条件
丁寧に一機ずつ仕留めていく黒の巨体。あの黒の巨体は間違いなくダレル准将が乗っている巨体だとマルドゥラは分かった。
「あと、『青』にオスカーね」
オスカーの操縦は開始直後にすぐ分かった。
マルドゥラもだが、第二特別特殊部隊のメンバーは誰一人指揮を執っていない。ダレルが今回指揮を執らないのは、おそらく指揮官探しのためだろう。だが、あの黒の指揮官はあまりにも愚か過ぎる。
「私のところのは優秀すぎるわ」
マルドゥラのことが分かっている男ではない。実際、マルドゥラは名乗っていない。流石指揮官として優秀だと噂されているだけはある。
「『青』もそこそこ。『黄』はいまいちね」
己のいる「赤」とあとは「緑」。指揮官に恵まれたのはその二箇所だけのようである。この演習で見出される指揮官も多いと聞く。実際、今「赤」を指揮しているのは、このロワイヤルで注目された男だ。
注目される以上に、駄目になる方が多いということに上昇志向の高い者たちは気付きもしない。
「ま、勝てれば問題ないわ」
本日、オスカーと賭けをしている。自分たちの属する部隊のどちらが勝つか。負けた部隊に所属していた方が一ヶ月間、料理と住まいの掃除をするのだ。二人ともそういった生活能力はすさまじい勢いで欠けている。
『“黒”は自滅しそうだから放っておけと。“青”と“黄”は共倒れを狙えとさ。残り、“緑”が問題だろって』
『どう、動くつもりなのですか?』
指示を伝えにきた巨体の番号だけ見ておくR-38。
『さてね。俺としちゃ“黒”の一撃必殺のやつが怖い。他ん所にも数機怖いのがいやがる。それを隊長に伝えようと思っているが』
どこからとも無く入ってきた声に、R-38に乗った男が当たり前のように答えていた。
『怖いやつらはこれから報告に行くさ。ここのやつらはもう少し待機して……いや、数機後ろからきやがる!! 迎え撃て!』
副官として有能そうな男だな、ダレル准将にあとで報告しておくかと刻んでおく。
第二特別特殊部隊にいて分かったのは、指揮官には向き不向きがあるということだ。勿論副官にも同じことが言える。そういう意味ではダレル准将は素晴らしい指揮官だった。そして副官として相応しかったのはイーユン大佐と退官したベティだった。
自分たちの世代はどちらかといえば「無責任に暴れる」ことに非常に向いていた。それ故指揮官や副官としてはかなり不向きといえた。トーマスは無意識下で帝王教育がなされていたため、トップに立つに相応しくなってはいたが。オスカーたちは……ダレル准将を目指しているようで、もどかしさが見られた。
そう思っているのは、マルドゥラだけとは知らず。
遠くにいる「緑」の機体にぎょっとした。アレはおそらく指揮官、もしくは副官だ。
『“緑”に関してはその後ろのほうに指揮をしていると思われる機体あり』
マルドゥラは己の近くにいたR-38に乗る男に通信を入れた。
『マジか!? みえねぇぞ!』
『いるの。撃ちに行ってもいいかしら?』
『止めとけ。それよりも周囲の巨体を何とか……』
『分かったわ。相手をひきつけるから、あなたは戻って』
他のメンバーよりも目立つ位置に立つ。
『おい!!』
『囮作戦なら、私は慣れてるから。ここは温存すべき場所でしょ?』
『……確かにな。名前教えてくれ』
『ドゥラ』
マルドゥラを現在「ドゥラ」と呼ぶのはオスカーだけである。あまり愛称で呼ばれたくは無いが、仕方無い。現状として傍にいるメンバーにも「第二特別特殊部隊」にいた人間だとばれたくは無い。
『じゃ、頼んだぜ!』
R-38に乗った男はその場から去った。そして他のメンバーは攻撃に見えた退却を始めた。ただ、一人、マルドゥラは単身「緑」に向かっていく。




