退屈しのぎ
ふぉぉぉ。ダレルさんの階級見事に間違えてましたOTZ
退屈だ、とダレルは思う。
何せ現在現場に立っていないのだ。書類ばかりを相手にしている。せめてテストでいい、巨体に乗せてくれと、本気でイライザに頼もうかと思っているほどにストレスが溜まっている。
仕方ない。今、ダレルがついている職務は「特殊部隊特別隊長」と「軍宰相補佐官」の二つ。もう、自分の部隊は無い。
「ダレル准将、失礼します」
「おや、マルドゥラ。どうした?」
「久しぶりに飛びませんか?」
軽くノックをして入ってきた、無愛想な部下の提案にダレルは驚いた。
「オスカー少佐も心配しております。ダレル准将から覇気が無くなっていくと」
「……困ったな」
「陛下をおちょくるとまた政務が滞るとアッカー中佐からも注意勧告が我が部隊に届きました」
兄はまだアレを根に持っているらしい。陛下に婚約者が決まったのだから、それで良いだろうと言いたいし、頼んだのはお前だろうと突っ込みを入れたい。
「本日は演習をします。ただしペイント弾で」
「ほう?」
「ダレル准将には標準型への搭乗をお願いします」
「演習方式は?」
「特殊部隊方式です」
それは面白い。すぐさま席をたった。
特殊部隊方式演習とは、時間制限内でどれくらいの巨体を倒せるかを競う演習である。勿論、味方に弾をあててしまえばそれだけで減点。いかに味方に打撃を与えず、敵巨体を倒すかに焦点を置いた演習である。そして、指揮官が存在しないのだ。誰が指揮をするか、それは戦いながら決める。演習の醍醐味ともいえた。
「私の名前を出さずに、参加させてもらいたいものだ」
「そのつもりです。今回は五部隊くらいに分けてのロワイヤル方式です。特化型は今回使いません」
その言葉に驚いた。
「今回は陛下の御前試合であると同時に、各国からも要職についている方が集まりますので」
「特化型を出し渋ったのはイライザ義姉さんか」
「お分かりいただけて、光栄です。ダレル准将」
特化型は帝国内の「重要機密」に近い。それだけの御前試合となれば、出さなくて当たり前といえる。
「問題は、他国で軍事力をもっているところもロワイヤルに混ざってくるかもしれないという、情報が……」
「それは困ったものだ。ということは、トーマスとベティも来るのか?」
トーマスは現在バークス公国のヴェルツレン侯爵として、ベティはその妻として動いている。
「どうでしょう? 私も聞いていません。メイナード准尉は国境警備のため不参加ですが」
「オスカー、アーロン、ビルの三人は?」
「三人とも別部隊に配置になります。私もですが」
「ということは、五人共に別々に動くということか」
尚更面白い。ダレルは思わず笑みを浮かべた。
「聞いたか? ダレル准将たちも混ざるんだってよ」
「えぇぇぇ!? あの人、腕なまってるんじゃね? 俺らの部隊に来ないで欲しいよなぁ」
「思う、思う。部下が優秀だと、上司がある程度無能でも気付かれないんだな」
ひそひそと囁きあう、下士官の声。
「准将、こてんぱんに叩きのめして差し上げてください。少なくとも私たち、『第二特別特殊部隊』のメンバーはあなたの腕が、あれしきの書類で鈍るとは思っていませんから」
「……その言葉のほうが酷いと思わないか? マルドゥラ准尉」
「思いませんね」
相変わらずの毒舌っぷりである。
「ただ、私もかなり鈍っていると自覚している」
「手加減しませんから。准将の機体だと分かった瞬間に撃ち落させていただきます」
「……オスカー少佐。いきなり後ろから入って来ないでくれ」
まったく、いつの間に後ろにいたのか。
機体の色は、赤、青、黄、緑、黒の五色。そして、ペイント弾の色も同じだ。
五箇所のドッグ入り口より、ランダムに色が配置され出て来る。そして、誰が呼ばれるか分からないのだ。
「さて、久しぶりの搭乗だ」
じっくり楽しませてもらおうか。




