表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
境界線の上  作者: 神無 乃愛
境界線の上
49/74

四十九


「ヴェルツレン殿にお会いする」

 会談から戻ってくるなり、セシル殿下は告げた。

「私には手におえない。私は個人的にバークス公国かエルグス共和国が絡んでいると思っている」

了解(ラジャー)

 すぐにヴェルツレン家に向かい動く。

「……それはありえぬな」

 あっさりとヴェルツレン前侯爵は言う。

「わしも『個体チップ』には反対しておる。だが、あの阿呆な動きをする輩に力など貸したくもない」

「……そうですか」

「他とて同じであろうよ。『個体チップ』は三国のみに利益をもたらす。他は利益など何一つない」



 緊迫した空気は軍どころか国中に伝わっていた。

「国民の不安ぐらいは除きたいところではあるが」

「難しいでしょう。衛兵がどんなに頑張っても誰一人内容を知らない」

 セシル殿下とダレル大佐が呟いていた。

「今、『個体チップ』を埋め込まれていることが仇になっています。『どこに、誰が』いるか相手には伝わるわけですから」

「ダレル大佐、私も同感だ。今までこんな不安感じたことはなかった」

「孤児院からも繰り上がりの卒業者で兵士を増やすそうです」

 イーユン中佐から告げられる真実。戦争に突入しかねない恐ろしさである。

 この話を聞いているのかいないのか、マルドゥラは虚空をじっと見つめていた。

「どうした? マルドゥラ准尉」

「いえ……何でもありません」

 次の瞬間、メイナードが発砲した。

「……ぐぁ……」

「殿下!?」

「あなたは、セシル殿下ではない。本当のセシル殿下はどこですか? デイ少佐」

「!!」

「いかにも殿下がおっしゃりそうなことばかりでしたが、特殊メイク剥がれています。おそらく陛下の命令でセシル殿下を拘束、そしてあなたが変装してきたのでしょうね」

「いつ……」

「最初からです。特殊メイク如きを私が見破れないと思ったんでしょうか。色々見てみましたが、そこらじゅうに偵察兵がいるのでいい加減嫌になってきました。メイナードに伝えておけば、私の合図であっさり撃ってくれますから」

「私を撃てばいいのではありませんよ」

「でしょうね。すぐに私たちを拘束されるのでしょう?」

 冷たくマルドゥラが言い放った。

「ただ、私たち三人はともかく他の方々を拘束して他国に勝てますか?」

 悔しそうにするデイ少佐を黙ってみていた。

「トーマス、逃げて」

 マルドゥラが囁いた。

「ベティ中尉、お願いします(、、、、、、)!」

「分かったわ! 行くわよ!トーマス、メイナード!!」

 その言葉に全員が動いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ