四十八
最初の一撃はバークス公国のエメラダ王女と神聖シャン・グリロ帝国皇太子殿下の子との結婚だった。
「伝令です! バークス公国内に『カメレオン』が!!」
「シャン・グリロ帝国へも『カメレオン』が!!」
カーン帝国は窮地に立たされていく。「襲撃を受けていないということは『カメレオン』の後ろ盾になっているのでは?」と巷で囁かれるようになっていた。
それを潔白するために現在、主要国のトップがエルド・ラド国へ集まっていた。
「朕は身に覚えなどない。それに以前の会議の際、朕は狙われた」
「それがパフォーマンスだと言っているのだ!」
シャン・グリロ帝国の皇帝がカーン帝国の王へ突っかかっていた。
「落ち着きましょう。全ての国が『カメレオン』に襲撃されている事実があります」
ユグドラ共和国大統領が冷静に言う。
「どこの国が糸を引いているかなど、誰にも分かりません。なぜなら『個体チップ』用のレーダーに引っかからない」
すぐさま疑われるのはエルド・ラド国であった。
「我々はきちんと製造し、卸している! 難民が問題なのはないか!?」
「それに関してわが国としてもずっとあなた方に申し上げていたことがあるはずです」
エルド・ラド国元首にユグドラの大統領がきつく返した。
「『個体チップ』を埋め込む以前の子供が行方不明になると。おそらくその子供たちと難民をかき集めた集団ではないかと、何度も申し上げていたはずだ。
それに対して、あなた方は『個体チップ』を持たぬ人間を国内に入れない措置を取ってくれないではないか」
「そう簡単に出来上がるものではない!今開発中である」
「そうでしたか……では、なるべく早い完成を望みます」
このままではまた世界大戦が起きないとも限らない。それくらい緊迫した空気だった。
「エメラダ王女のご容態は?」
静かにセシルは口を開いた。
「意識は未だ戻っておらぬ。婚儀すら行えぬ」
茶番を、その言葉は何とか飲み込めた。
セシル自身『カメレオン』はバークス公国の私兵、もしくはエルグス共和国の私兵だと思っている。それを思わせるそぶりなど今までどれくらい出てきたと思っているのか。ただ、それを言ってしまえば全ての国から非難される。どの国でも後ろ暗いところはある。そして、「カメレオン」の思想に共感する人間などどこの国にもはいて捨てるほどいるのだ。
「今、大きな戦を起こしてしまえば二度と大地に住めぬ。まずは『カメレオン』の行方を突き止めることが大事だと思われる」
シャン・グリロ皇帝がもっともらしいことを言っていた。
その日の会談で、「カメレオン」排除のために全ての国が動くことが承認された。




