三十一
規格外の部隊だ、トーマスはまず思った。
軍宰相直属の部隊、それだけでも異常性があるというのに、部隊の人数は一桁。佐官二人に尉官七人。バランスが悪すぎる。しかも宿舎も別。一体何のためだ?
「トーマス准尉、君の記憶の話は一切していない。だから、そこは気にしなくていい」
こちらの考えを読んだかのように、ダレル大佐が言ってきた。
「おそらくは罪滅ぼしというのもあるのだろう。あとはあえて我々を別部隊にするということで特殊部隊の嫌がらせをこちらに向けさせる。簡単に言えば、そんな事だ」
だが、こちらも好都合として利用させてもらう、あっさり大佐は言い切った。
「軍宰相直属ともなれば、書庫に入り放題、もしかすると諸国や辺境にもついて行ける、これを見逃すとチャンスはない」
「!」
「おそらく、オスカー大尉以下全員の成績が軍宰相に回っているだろうね。とするなら、トーマス曹長の座学成績は軍宰相としても欲しいだろうし、あの面白いレーダーの見方も欲しいと思われる。そして、メイナードの射撃の正確性、それからマルドゥラの瞳。そして何よりも、すぐに取れる連携だろう。他五人は言わずとも分かるだろう?」
有名な五人だ。そこまで言われれば納得がいく。
「とりあえず、トーマス准尉、座学の知識を伸ばすと言う理由で書庫にでも行こうか」
「はい!」
おそらくは記憶に眠る知識をどう見るかだろう。拒否する理由はない。
「決まりだ。あとは、マルドゥラ准尉は速く身体を治すこと。それからリハビリも忘れずに。他は、イーユン中佐に従いなさい」
「了解!」
こうして、規格外にして、カーン帝国初の少人数過ぎる第二特別特殊部隊が発足した。




