後日談③ セラフィのペット
「こなたが、こーーんなに頼んでもだめか!?」
「だって、飼うとしたら色々面倒なんだよ? セラフィはちゃんと運動させれるの? 毎日運動させなきゃいけないし、ちゃんと三食餌をあげられる?」
「出来る!」
(なんでこんなに気にいっちゃったんだろうなぁ)
「まぁまぁ、ミヤジ様。セラフィ様もそう言っておりますし、よろしいのではないでしょうか。私も面倒を見ますし」
セツカは苦笑しながらダンジョンオークション画面を操作し、入札を行う。
今日はダンジョンネットワークを利用した大規模なオークションが行われていた。その中の1匹にセラフィが反応し、欲しいと躍起になっている所だ。
「おお! セツカは最高のメイドじゃぁ。今日ミヤジの布団の中に入ることを許可するぞ!」
君は僕の人権を無視してないかな? それにそんなことしたらセツカが嫌がるんじゃないか?
「まぁ♪ では全力でこの子を落としましょうか!」
「セツカぁぁぁあ?」
どうやらセツカは悪乗りしているようだ。僕はセツカの頭をぐりぐりと抑える。
「ミヤジ痛いです。もっと強く……いえ、何でもございませんわ」
「ったくもう。仕方ないなぁ。ちゃんと面倒見るんだよ?」
「おお、ミヤジ愛しておるぞ! 最高じゃあ!」
「では入札を続けますね?」
僕は大きくため息をつくと画面を見つめる。僕たちがオークションで落とそうとしているのはもちろん可愛らしい犬人族や猫人族や最近人気のある狐人族。
なんかではない。
僕たちが落とそうとしているのはレベル100をゆうに超えるファイアドレイクだ。それも前回戦ったダンジョンの遺品(になる予定、まだなっていない)でもある。
あのダンジョンはバトル後すぐに経営破綻し、ダンジョンコアは機能をロックした。そこをA&A商会が弱みに付け込んで、低価格でいろんなものを買い取った。
一つは奴隷たち。死にかけの奴隷から、僕たちにお茶を汲んでくれた奴隷まで。買い取った人員の幾つかは地上に帰り、幾つかはA&A商会に。
次に宝物類。ダンジョン相応の宝がダンジョンの至る所に設置されていたが、ほとんど買い取ったらしい。僕にとってめぼしいものは何も無かったから、ちゃんと見ていないけど。
最後にモンスター。彼はボスモンスターの半分以上売却したようで、ダンジョンランクを大きく下げたようだ。まぁいくら下がってももう構わないだろう。だってすぐに潰れるだろうし。
何故潰れるか。その理由は簡単だ。
彼のダンジョンはロックされたことにより、地上ではしばらく入場が出来なくなっていた。そして最近ようやくロックが解除され、冒険者たちは入場できるようになったが、急に異常が発生したダンジョンに冒険者たちが入りたいと思うだろうか?
しばらくは冒険者ギルドがダンジョン入場に規制をかけるだろう。そのうちにDPが尽きて2度目の経営破綻だ。今度は誰も助けない、もうめぼしいものは低価格で買い取ったしね。そのままダンジョンが崩壊して終了だ。A&A商会はフリーになったダンジョンコアを回収し、売りに出すんじゃないかな。
「……はい。落とせました。思ったよりも安く済みましたね?」
「相手が僕だったから、遠慮してくれたのかもしれないね」
ファイアドレイクを競っていたのは僕の知り合いのダンジョンマスターだ。直接仕えたわけではないが、ダンジョンバトルで共闘したことが有る。
「あとでメッセージでも送っておこうかな。それよりももうすぐファイアドレイクが送られてくるから、置く場所を用意しないと……とりあえず訓練場で良いかな?」
「ソレがよろしいかと……あ、今送られてきました。訓練場に転送します」
「よし、僕たちも訓練場に向かおう。ああ、セツカ。ユスティーナを訓練所に呼びだしてくれないかな? そしたらエディスの手伝いを頼む」
「はい……、今ダンジョンコア経由でユスティーナさんにメッセージを送りました」
「ありがとう。じゃぁ僕たちは訓練所に行こう。セラフィ?」
「おお、楽しみじゃのう!」
僕達が転位魔法陣で訓練場に行くと、そこには既にユスティーナは到着していた。彼女は僕の姿を見つけると嬉しそうに僕のそばへ寄ってくる。
「ミヤジ教官! 訓練でしょうか!」
彼女から教官呼ばわりされるようになったのはいつからだったか……。確か初めて戦闘訓練した時だったか。
「ゴメン、ちがうんだ。でもお願いを聞いてもらえれば、今日はいくらでも付き合うよ」
「本当ですか!? このユスティーナめにいくらでも命令してください! たとえエディス隊長のスカートの中を覗いてこいと言われようと、果たして見せます!」
いや無理だそれは死ぬ。
「違う違う、今日はね……あれ、ここにファイアドレイクが転位してこなかった?」
「ああ、そいつならあそこに」
彼女が指を差した方に目を向けると、ファイアドレイクが背中を地面に付け服従のポーズをとっていた。僕たちの何倍もある巨体が、そんな格好になっているのはちょっと壮観だ。
(それにしても、なにが有ったんだ……?)
彼女にしては珍しく俺の表情を読んだのか、困り顔で説明をしてくれた。
「私が睨みつけたらあそこでああなってしまいましたが……」
ファイアドレイクはユスティーナが喋り出すと、体をブルりと震わせる。
なるほど。レベルが数百違うから、威圧でやられたのだろう。またユスティーナが竜である事もファイアドレイクの恐怖の一因としてあるかもしれない。同族だとそう言ったの力の差を認識しやすいから。
セラフィはドレイクを見つけると、うれしそうな顔でドレイクに向かって駆けていく。
「そっか。実はあのファイアドレイクをウチで飼うことになったんだ。だから同じ竜族のユスティーナにちょって聞きたい事が有って呼び出したんだけど……」
厳密に言えば、ユスティーナの『ヴィーヴル』とこの『ドレイク』では違いが結構あるんだけどね。
「ファイアドレイクですか? そこまで詳しくは分からないので、力になれるかは分かりませんが」
「ああ、多分大丈夫。取り合えず、ドレイク種って人化できたかな?」
基本的には竜族は人化と言うスキルを持っている。これはその名の通り人になるためのスキルなのだが、これが有るのと無いので全然飼う為の面倒さが変わる。稀に持っていない種族がいるから困る。
人物鑑定スキルを使用してファイアドレイクのステータスを見た限りでは、LVが160で人化のスキルは無かった。もしLVが上がることでスキルを覚えられるなら、是非覚えさせたい。
「私の知り合いのアイスドレイクは人化していましたので、出来ると思うんですが……もう少しLVが必要かもしれません」
ならば適当なモンスターを召喚してLVを上げてしまうのも手だろう。
「しかし、何故人化を? このまま飼えば良いではありませんか?」
「あ、いや。結構でかいから場所を取っちゃうんだよね。だから人化して小さくなってもらいたいな……だなんて思ってみたり」
「なるほど。では私がこいつを鍛えましょう。追いそこのドレイク。名前は…………無いのか」
ユスティーナはドレイクに話しかけると、困り顔で僕を見る。竜族同士なので会話が通じるのだろう。僕は竜語を覚えていないけど、いずれ使う機会もあるかもしれないし覚えておこうかな。
「ミヤジ様。コイツ名前がないようなんだが、何かつけるか……ゴホン。つけますか? ドレイクは何でも良いと言ってますが」
「ふむ、セラフィ!」
先ほどから竜の腹で跳ねてるセラフィを呼ぶ。セラフィ、竜の腹はトランポリンじゃありません。
「……えとこいつはオスかな?」
「あ、いえ。メスのようです。それも年若いですね。人間に例えるなら10歳ぐらいでしょうか」
「セラフィ。10歳の女の子だってさ、名前は何が良い?」
「ほう、こなたは『どら美』が良いと思うがどうじゃ? ドラゴンのドラに女の子の意味を持たせて美。完璧じゃぁ!」
ブルりと冷たい何かが俺の背中をかける。
なんか某国民的アニメに出てくるキャラクターっぽいからやめよう。お腹にポケットが付いてそう。
「……他に何か無いかな?」
「ふむ、駄目か? ではドレイクの女の子で、『どれ美』。これなら文句はあるまい!」
今度は魔女に居そうな名前だね。まぁさっきのに比べれは良いや。安直過ぎる名前だけど、セラフィが良いと言っているのだし良いだろう。
「じゃぁどれ美で良いか。どれ美、今日からはこのダンジョン所属だ。よろしく頼むよ」
そう僕が言うと、どれ美は服従のポーズのままギャウと小さく鳴いた。
「じゃぁ早速だけど人化の訓練をお願いしても良い? それとも僕と軽く手合わせしてからにする?」
「どれ美を人化させましょう。ちょっと試してみたい事が有ります。もしかしたらすぐに人化できるかもしれません」
「分かった、お願いするよ。もし経験値の為にモンスターが必要なら言ってね。ダンジョンコアで召喚するよ」
「分かりました」
それから1週間後、僕の対戦したダンジョンは潰れた。また、どれ美はLVが上がって人化を使えるようになり、可愛らしい『ょぅι゛ょ』に変身できるようになった。初めて変身した時は色々波乱が有ったけど、今はそれを語るのは止めておこうか。いつかこのダンジョンにモンスターやメイドが増えたのち、お酒の席で話す事にしよう。
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■ヤガミダンジョン
□ダンジョン評価(DR、ダンジョンランク):G
◇ダンジョンレベル(DL):45
・フロアレベル:1
・トラップレベル:1
・モンスターレベル:1
・ボスモンスターレベル:180
◇ダンジョンコア能力(DC):E
・ダンジョンコア処理能力(DCPC):B
・ダンジョンコア容量(DCC):F
◇来場者量:G
・2名
◇ダンジョンポイント(DP):3148000DP
エディス購入必要金額(DP換算):12460000DP
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1章分が終了しました。
ついでにストック無くなりました。すこし書きためます。
次回更新日は来月を予定しています。誤字あれば報告して頂ければ幸いです。
また気が付いている人もいるかもしれませんが、著者別作品『異世界奇想曲』と世界を共有しています。いずれそっちのキャラも登場するので、更新を待つ間に読むのも良いかもしれません。
とはいえ、別に読まなくても問題ないように物語を書きます。無理に読む必要はありません。




