卒業①
祭りを逃げ出した二人は、金属の鎖でできたブランコの上にいた。
ギー…ギー…
立っている美琴は、膝を使って身体を大きく揺らしている。
…ギッ…ギッ…
座っている僕は、板の上でうなだれたままだった。
僕達がいるのは、離れた場所に見える道の街灯に照らされ、
明るい月の光が差し込む真っ暗な小学校。
二人っきりで揺れている姿は、
都会でもがく彼女と、もう諦めてしまった僕の抜け殻のようだった。
「たっくん。そんなに幻滅しタァ~?」「…」
彼女の告白は、僕には衝撃的すぎて、
どう慰めてあげればいいのか、どう寄り添えばいいのか、
それとも見捨ててしまうべきか…それさえも判断できなかった。
美琴の告白は重く、それでも生きる彼女は大きくて、僕はただの子供。
それを聞いた僕は、何をすべきか、これからどうすればいいのか、
何をしてあげたらいいのかもわからない。
もし、誰かに話せたなら。
何でも話せる友だちがいれば。真剣に聞いてくれる知り合いがいれば。
育ててくれたあの二人が生きていてくれたら。
心は少しでも軽くなったのだろうか。彼女を救えたのだろうか。
でも僕は、「言えば嫌われる」「繋がれば傷つける」「恥ずかしい」
そんなふうに思い込んで、誰にも話さずに全て閉じ込めていたと思う。
「あんまり、考えなくていいんじゃない?
たっくんはオスで、私はメスってだけよ。ドオ?綺麗?」
ブランコで揺れている彼女を見上げる。
浴衣はすでに帯だけでかろうじて留まり、
胸元も、太もものもっと上までも、露わになっていた。
――やっぱり…下着、着けてないんだ。
揺れている美琴を見上げてしまえば、僕はそんな事を思ってしまう。
でも、誰もいなくなった校庭では、誰かを救う光さえも乏しく、
彼女の日に焼けた脚が、かえって白く浮かんで見えていた。
「この身体だって、いろいろお金……かかってるのよ。よ~~っし」
ガチャーン。
「おッと…できたぁあ。たっくん見てた? ねぇ、見てた? できたよ」
僕は、美しい彼女をただ見上げていた。
――もしかして、彼女の方が前から、僕を見ていたんじゃないか。
そう思っていると、ブランコから飛び降りた美琴が、
すぐ目の前にしゃがみ込んで、今度は僕を見上げてきた。
大きい…
テレビやネットで見た大人の身体とは、まるで違っていた。
もちろん、スマホの中で応援してくれていた妄想の彼女よりも、
ずっと大きく、ずっと魅力的で、そして…僕は子供だった。
「いいんじゃない? それで」
「……そっか……触っていいんだ」「好きにしてイイよ」
「触るよ…」「…」
「ふうん…これが胸、暖かくて柔らかいな……」
「喜んでくれた?もちろんエステで磨いてるから、肌触りもいいでしょ?」
僕の手が、自然と彼女の胸元へと伸びていた。
でも、美琴は何も言わないし、嫌がって拒みもしない。
ただ黙って、僕の好きに触らせていた。
「何人くらい…触ったの?」
「うーん……100人以上かな。
二桁までは数えてたけど、それ以降はもう、気にしてない」
「そっか…」「いたっ…たっくん、ちょっと強いよ…」
「そっか……そう、だよな……」「チョット、たっくん」
「そういえば、下は?」
「ああ、そっちね。そろそろ脱毛しようと思ってたんだけど、
“あった方がいい”っていう人も多くてさぁ。
たっくんはどう? 有り派? それとも無し?」
美琴の胸は柔らかくて、手を包み込むように心地良い。
いろんな男が触ってきたんだと言われても、現実味がなかったし、
たくさん抱かれてきたと聞いても、信じたくなかった。
卒業①




